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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 王国の食指
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97話

 兵士が地下でゴーレムと対峙したのと同時刻。

 地上のダンジョン入り口付近でも、異変が起きた。


 セルジオの運び出したゴーレムの頭に青白いスパークが走り、目の様な位置に見える鉱石に赤黒い光がともる。


 ゴーレムの頭の突き刺さった土砂が、石の重さに耐えきれず雪崩の様に崩れ、頭がゴロリと地面を転がった。


 周囲の魔力と瘴気が頭に集まる。

 次第に強さを増す、ゴーレムの目が鮮血のような赤に染まるのにそれほど掛らなかった。


 ドドドドドドドドド・・・・

 地響きが兵士達を包み込む。

 畑の土が脈打つ様にうねり、鼓動の度にゴーレムの頭が周りの土を吸い寄せる。


 ドゴン ドゴン ドゴン・・・・


 ・・・・


 「何んだ、あれ?」

 墓所の影から、ダンジョンの様子を見るジードが眼下の出来事に思わず声をだす。


 「あれはゴーレムだな・・・・たぶんマッドゴーレムだぞ、しかもデカイ」

 レシアも草叢くさむらを掻き分け、入り口付近を覗いている。


 墓所から見下ろすダンジョンの入り口付近に、夕日を遮る大きな影がゆっくりと立ち上がる。

 ゴーレムはセルジオの段々畑の土で上半身の形を作り出す。

 影は、土は頭を支えきれず首の無い人型。

 肩に頭がめり込み、異様なバランスの上半身から左右に二本の腕が生える。


 兵士達がゴーレムに攻撃を仕掛けた。

 いくつもの矢が四方からゴーレムに飛び交うのが見える。

 しかし、ゴーレムには全く効いていない。


 「おぉ! 凄いのぉ・・・・」

 元村長がゴーレムの動きをみて感嘆の声を上げる。 


 ゴオォオオオオオオオバァン!!


 ゴーレムが腕を地面を水平に薙ぎ払う。

 幅1m以上もある腕が隣国の兵を纏めて弾き飛ばし、地面に赤い花を咲かせる。


 「おいおい、何の冗談なのだ? 今の一振りで4~50人は消えたぞ?」

 レシアが震えているのが判る。


 ゴーレムの体が腰まで出来上がる。

 ゴーレムの体を作る土に囚われた兵士が、土の体が動く毎にブチブチ潰れるのが見える。

 「古代文明に、これほどの力の差があるとはのぉ」

 元村長も震えている。


 ゴーレムの体は三階建てのセルジオ屋敷の高さを越えている。

 それでも、まだまだ土を集め、体を大きくしていく。


 ドゴン ドゴン ドゴン・・・・


 勇敢な兵士がゴーレムに切りかかっている。

 いくら土の体に刃を突き立てられても、ゴーレムは全く気にしていない。

 前線は突然の敵襲に混乱し、周辺の後衛の矢が彼等がいるにも関わらずの雨の様に土の巨人に降り注ぐ。

 ゴーレムは歯牙にもかけず、只、兵士たちは同士討ちをしている。


 ゴーレムが土の中の頭を落とさない様に、ユックリと体の向きを変えた。


 胸の直ぐ上までめり込んだ頭から、静電気のような青白い光が走り、空中に細い静電気のスパークが敵兵の集まる方陣を舐める。


 次の瞬間。


 ッパ、ドゴォオオオオオオオオンン!!!!


 ゴーレムの頭、目の正面辺りの空気が破裂するような音を立てた瞬間。

 凄まじく太い雷が、敵兵の控える方陣を丸ごと焼き払う。

 地面には逃がしきれない、雷の名残が周辺の兵士を舐めながら地に逃れていく。


 ッパ、ドゴォオオオオオオオオンン!!!!

 一度の輝きで、敵兵が千単位で焼かれる。

 直撃を受けた場所は、地面から湯気を立て、そこに居たはずの兵士は跡形もなく蒸発している。


 ッパッパ、ドドゴォオオオオオオオオンン!!!!

 ッパ、ドゴォオオオオオオオオンン!!!!


 「な、何であんな化け物がこの地におるのだ!?!

 そもそも、どうやれば、あれが倒せる??!」

 王女の近衛隊隊長ファビウスも小刻みに震えながら様子を見ている。


 パリリィ

 ッパッパ、ドドドゴォオオオオオオオオンン!!!!


 既にダンジョン周辺の敵はパニック状態だ。

 意識のある兵士は蜘蛛の子を散らす様に逃げまどい。

 フード男の洗脳された部隊は、ゴーレムに狙い撃ちされ跡形もなく蒸発する。


 僅か半刻にも満たない時間で、2万の兵の半数以下になっていた。


 ・・・・


 ダンジョンの入り口から死角になる墓所予定地に隠れる、2300人程の村人と王国兵は声を殺して雷撃の音に身を強張らせていた。

 日の暮れ始めた黄昏時の空を、雷撃の白い光が雲を白く焼く。

 何も知らない住民も、あの光の度に人が死んでゆくのが判るのか、誰も口を開かない。


 王女は侍女らに囲まれ、商人のマルコも異常な戦に現実味の無い空気だけを感じていた。


 ・・・・


 パリリィ

 ッパッパ、ドドドゴォオオオオオオオオンン!!!!

 ッパ、ドゴォオオオオオオオオンン!!!!


 ゴーレムの体を作る土が、雷撃の熱を吸収できず、赤く燃え溶け始めている。

 その土で出来た体は、内部からガスが噴き出し、それが自然発火して コオォォォと音を立て炎を吹き出している。


 ゴーレムは視線を変える為、体ごと振り向く。

 その度に赤く融解した土の体から、ボタボタと飛沫を上げて地面に落ちていく。


 外の様子を知らず、中のゴーレムを恐れた兵士が、ダンジョンの入り口から次々と飛び出している。

 しかし、ゴーレムから降り注ぐ融解した土の飛沫を浴び悲鳴を上げ、ある者は立ったまま燃やされていく。


 戦線は既に崩壊。

 たった一体の燃える異形の巨人が、襲撃者を蹂躙する風景を人々は目に焼き付けた。

 




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