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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 王国の食指
125/256

96話

 土埃の消えたセルジオの畑を埋め尽くす2万の兵。

 多くの兵士達がマスゲームの如く整然と並び、ダンジョンへの突入命令を待つ。

 日は随分陰り始め、後方では賄いを準備する焚火の火が細い白煙を上げ始めていた。


 ダンジョン入り口正面の土がセルジオの仕業で剥ぎとられ、本来の地面だったのか石敷きの床が土の合間から顔を出している。

 石棺に向かう、その石敷きの道を遮るような数mの高さにうず高く盛り上がった土山があり、その上に人工物と思われる石が、侵略者を見下ろす様に斜めに突き刺さっている。


 小隊毎にダンジョン入り口に向かい、突入を試みるが、中から吹き出す瘴気と腐臭に充てられ次々地面に手を突き空の胃袋から胃液を吐き出す。

 そんな地面を這う兵達が呻き声をあげてのた打ち回るっている姿を眺めていたフードの男も、先ほどより悲鳴を上げては他の兵士以上に苦しんでいた。


・・・・


 ダンジョンの中では石戸を抜け、止まったゴーレムの傍を通り過ぎ、天井の崩れた回廊の付近、瓦礫の袂に腰を下ろし、弁当を広げるセルジオ達の姿があった。


 「まずは腹ごしらえしましょう」

 セルジオがクディとアレクセイに荷物を渡し、強烈に強い酒と、簡単に食べられる食糧をカンテラで照らされた薄いマットに並べる。

 「セルジオちゃん、えらく準備がいいじゃない?」

 クディが少し体調が戻ったのか、いつもの様に軽い口調で尋ねる。

 「えぇ、もしもの時ダンジョンに籠れるように色々持ち込んでました」

 セルジオはそう言うと、カンテラで近くの麻袋の束を照らして見せる。

 そこには、薪の束が数個、予備のカンテラ、干し肉や干しブドウなどの保存食に藁を基にした簡素なマットとタオルケット。

 どこから拾って来たのか、簡素な水瓶に水まで張ってある。


 「・・・・よくもまぁ、レイクウッド(元村長)に気が付かれずに良くこれだけ・・・・」

 クディが感心する傍ら、アレクセイは落ち着きがなく辺りをキョロキョロ見回している。

 「セ、セルジオさん、なんか空耳だと思うのですが、大勢の人の泣き声・・・・

 わぁ! 叫び声が聞こえて来ないですか?・・・・ひゃ!」


 「ん? あぁ、これですか? やっぱり聞こえるのですね」

 「やっぱりって・・・・クディさんも聞こえてるのですか?」

 「死霊の漂うダンジョンだから、当たり前じゃない?」

 開いた口が塞がらないアレクセイ。 


  ズン、ズンズン ゴリリリリ!!!


 「入って来たのかしら、あれってゴーレムの動く音でしょ?」

 クディーが体を起こし、音の方に目を凝らす。

 石戸までかなりあるので、闇の中に紛れその様子を窺うことはできないが、回廊に響き渡る音が戦闘の始まりを告げていた。


 ・・・・


 フードの男の杖が、鈍い輝きを放ち、ダンジョンの入り口を照らす。

 

 先ほどまで嘔吐していた兵達が、精気のない濁った眼を充血させ、次々と入り口に消えていく。


 「い、行け、下は宝の山だ!、い、いくらでも褒美は取らせる。

 お前たちの代わりは幾らでも居る。 い 行け、行け、行け!!」


 絶え間なくダンジョンに流れ込む兵士達。

 ・・・・その流れが、止まる。

 ダンジョンの奥から悲鳴が聞こえてくる。 


 バチッ! 何処かでスパーク音が聞こえた。


 「な、な、何んだ? ダンジョンで、何が起きている?!」

 フード男が、ダンジョンを覗き込み耳を澄ます。


 ドドドドドドドドド・・・・

 そんな、兵士たちの足元、地面の土砂が、流れるように動き始めた。

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