95話
セルジオは地面の砂を掃き取り目つぶしを狙った動作が、異様な状況を作り出す。
ゴゴゴゴゴゴバァ!!!!
地面が石鋤の見えない磁力で引き寄せられるように、鋤を振りぬく軌道に沿って地面の土が付いてくる。
大きく抉れ、いつも腰かける石を巻き込み天を突く土柱が立つ。
放たれた槍が土に絡め取られ、空に舞い上げられていく。
呆然と立ち尽くす、セルジオと騎兵達。
数秒上昇する土がゆっくりと動きを止め、重力に逆らえず次第に地面に向きを変えた。
上がった物は、当然落ちてくる。
ド ドド ドドドドドバババアァ・・・・ヒュルル・・・ズン!!
本物の土が降る土砂降りで、周りの土を舞い上あげ、その土煙が更に視界を遮る。
止めに、空気を裂きながら落下するゴーレムの頭が騎兵の進路を遮るように地面に突き刺さった。
目の前で起きる異常時に、馬脚が乱れ怯む軍馬を抑えきれない騎兵を放置し、セルジオもダンジョンに飛び込んだ。
・・・・
「セルジオ殿、ケガなどありませんか?」
アレクセイが聞いてくる。
クディは骨折の痛みを堪え、猛ダッシュした為かグッタリと壁に寄りかかり、荒い息をしている。
「えっと、俺、もう一仕事あるからそこの荷を持って、坂の下まで降りててくれないか?
できれば、クディの治療も任せていいかな?」
そう言うと、セルジオは入り口付近に置いてあった革袋の中から、金貨を取り出しパラパラと周囲に撒き始める。
「あぁ、下で待ってる!」
アレクセイはクディに肩を貸して、嫌な思い出しかないダンジョンに降りて行った。
チャリン チャリリン
セルジオが金貨を撒く。
入り口の坂を転げ落ちる金貨の音が、ダンジョンの中に響き渡った。
・・・・
フードの男がナワナワと震えながら、この軍の上級士官と思われる男を、魔法の杖で打ち据えている。
「に、に、逃げられてどうする!! あぁ?! 」
上級士官の瞳は全て虚ろで、無感情にただ直立不動で立ち竦むみ、彼らに反応はない。
伝令役にしてはやけに身なりの良い男が飛び込んできた。
「魔導師様、村にも屋敷にも人の姿はありません。
また、屋敷からダンジョンの入り口に向かい、大量の荷物が運ばれた跡があります。
さらに、ダンジョンの入り口が開いております!
周りには金貨が散乱しております!」
「・・・・む、む、村人共は、ダ、ダンジョンの中か?
・・・・た、宝をダンジョンに逃がすのは、そ、想像に難しくないが」
「そ、それで、ダ、ダンジョンの中に索敵を放ったか?」
「・・・・申し訳ありません、当初のご指示を遂行しようとしましたが、ダンジョン入り口で変調を来す兵士が続出しております。
一度、魔導師様に見聞いただきたく、参じました」
程なくして、伝令ではあるが隊長クラスと思われる兵士がフードの男を連れ、ダンジョンを遠巻きに見据える位置に陣取るのだった。
感想・評価など お待ちしております。




