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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 王国の食指
123/256

94話

あけまして、おめでとうこざいます!(3回目!)

 フードの男は、スタッフを振り何やらブツブツと詠唱を始める。


 彼のそばにいるアレクセイの瞳から光が消え、突然、傀儡くぐつの様にふらふらとフードの男の方へ引き寄せられるように立ち上が・・・・


 ビシッ!


 クディの手刀が眉間にクリティカルヒットする。

 「痛い! 何するんですか!!?」

 「あなたねぇ、そう度々意識を他の人に乗っ取られない!!

 もっと自分をしっかり持ちなさい!」

 「えぇ?! 何ですかそれ?」

 目を白黒させるアレクセイ。


 再びスタッフを振り、詠唱を試みるフードの男。

 「はいはい、セルジオの所に案内するから、変な術掛けないでくれてぇ?」

 クディはハエでも払う様に、魔法を無効化する。

 (手を振った本人は違和感を覚えたが、指輪が魔力を吸い込み無効化したのに、気付く者はいない)


 「き、き、貴様、何故? い、古の魔法が効かない?」

 「そんなの知らないわよ! それが中古だからじゃない? 新品買いなさいよ!新品!」

 クディが話を混ぜ返す。

 「も、も、もういい! そいつを、先に歩かせろ!」

 「いたぁい! オカマには、もっと優しくしなさい!!

 アレクも何か言いなさいよ!」

 「・・・・クディ殿が凄すぎるので」

 敵兵に追われるように先を急がせられるクディに付いてゆく事しか出来ないアレクセイだった。



 ・・・・


 村から溢れる程の軍勢は隊列を組み直し、村からセルジオ館に向かう道幅を埋め尽くし進軍する。

 先頭にはクディとアレクセイが紐で繋がれ槍で急き立てられていた。


 『拙いな・・・・』

 セルジオは家の前で宝石がはみ出す小箱を小脇に、軍の先頭の様子を見ていた。

 彼の足もとには、いくつものわだちと重い物が引きずられた跡が、ダンジョンへと続いている。


 次第に迫り来る敵軍。

 セルジオ館の前で方陣に形を整え約2万の兵がセルジオと対峙するように集結しようとしていた。

 『もう良いかな・・・・』

 墓所の方角から、キラキラと何かが輝く。


 『よし! けど怖えぇ・・・・』

 セルジオは宝箱を小脇に、大軍に先頭、クディの居る所に向かい歩き出した。


 ・・・・


 「セルジオちゃん、それは無謀だって、こういうときは逃げなきゃ・・・・」

 まっすぐこちらに向かってくるセルジオに思わずつぶやくクディ。


 「えぇっと、みなさん何か御用ですか?」

 素っとぼけるセルジオが、今気が付いたように驚いて見せる。

 「あっ! クディとアレク? 捕まっちゃって、何やらかしたの?」

 セルジオが歩み寄ると、兵士が槍を構える。

 困った顔をして見せるセルジオ。


 そんな中、軍の後方からフードの男が、数人の騎兵を引き連れ現れた。

 「セ、セ、セルジオ、ひ、ひ、久しぶりだな・・・」

 フードの男が馬から降り、足を引きづりながら前に出ようとする。

 突然彼の指輪が光る。


 「ひっ! い・・・いがぁあああぁぁあぁああああ!!!!」

 自分の顔を掻き毟りのたうつフードの男。


 「ん?! もしかして今がいい感じ? よっこらせ・・・とりゃ!!」

 セルジオが小脇に抱えた小箱を空中に放り投げる。


 金銀銅貨、小ぶりな宝石がバラケて空に舞う。

 「「「「「 おぉ?! おぉおおおおおお!!!!! 」」」」」

 前方の兵士たちの隊列が崩れ地面に落ちた金貨や宝石に意識向く。


 「クディ!」

 セルジオが短剣を投げ渡すと、クディが縛られた手で器用に受け取り、素早く自分とアレクの縄を切る。

 そして、ちゃっかり弓まで回収して、さらに槍で嗾けられた駄賃と言わんばかりにフード男に蹴りまで入れるのを忘れない。


 「急いで!」セルジオが叫ぶ。

 「セルジオちゃん、無理し過ぎだって!!」

 「セルジオ殿!!さすがです!!」クディとアレクを先導しダンジョンに向かう。

 「俺たちは、しばらくダンジョンに籠ります。 そのつもりで!!」

 「判ったわ」「承知しました!」


 必死に走る3人。


 後方でフードの男が立ち上がり何やら指図している。

 号令とラッパが鳴らされ、セルジオ達を兵士たちを騎兵が追ってくる。


 クディが違和感を覚える。

 「・・・・誰も居ない?」

 「墓所に避難させてます」

 「へぇ、周到ねぇ」

 「行き当たりばったりです! 急いで! 騎兵が来てる!」

 クディが脂汗をかいている。数日では骨折は治るはずはない。


 何とかダンジョン入り口に辿り着くが、騎兵が槍を投げようとしている。

 「先に中へ!!」


 セルジオが石鋤で騎兵と対峙する。

 「セルジオちゃん、無理はダメ!!」

 「わかってる!」

 苦しそうなクディを見守る。


 二人がダンジョンに駆け込んでいく。

 振り向くと槍は放たれていた。


 空中をしなりながら、まっすぐセルジオに向かい飛んでくる。

 セルジオは咄嗟に地面を石鋤で掻いた。


 ゴバアアアァ!!


 セルジオの足もとから、信じられない程の土が舞い上がった。 

続きは2日!

ご祝儀・感想・評価など おまちしてます。

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