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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 王国の食指
122/256

93話

再び、あけまして、おめでとうございます!

今年も良い年でありますように!


 村の方角に幾つかの火の手が上がる。

 侵攻による焼き討ちの様だ。


 レシアが屋敷の窓から心配そうに村の方を眺めている。


 「セルジオ、今回はどうするつもりだ?」

 「ダンジョン明け渡すのではダメですか?」

 「ダメだろうのぉ・・・・」


 「・・・・追い払うのは難しそうですよね、あの規模は・・・・

 ジード、屋敷はどれくらい保つ?」


 「そりゃ、一刻いっときとか二刻ふたときとかなら保つだろうが・・・・それ以上は無理だぞ」

 ジードが、バリバリ頭を掻きながら、そんなこと聞くなと言わんばかりに答える。


 「じゃ、ダンジョンなら耐えれるかな?」

 セルジオが悩みながら訊ねる。


 「それはお主が一番判っておるだろぉ?」

 元村長がいぶかしげに、セルジオを見た。


 「それじゃ・・・・・」


 ・・・・


 ・・・



 その頃、村の広場でクディとアレクセイは隣国の兵士に取り囲まれていた。

 

 「あぁ!!もぉ、セルジオ家の者です!!!

 痛ぁぃ!! 弓の先に白いの付けてるの見えてるんでしょ?

 痛いって! 槍でつつかないの!」

 

 クディは、弓の先に白い布を付け、頭上高く掲げ天に円を描くように振っている。

 「私は中央教会の司祭、アレクセイと申す! 和議と調停の使者である! 上官への取り継ぎを望む者なり!・・・・痛い! あ痛! だから、服に穴が開くから!」


 「お、お、お前ら、ひぐぅ、や、や、止めろ!」

 フードを被った男が、右足を引きずり、ひどく体を傾けながらクディ達の元を訪れる。

 兵士たちが怖れ慄き、蜘蛛の子の様に散っていく。

 フードの男が瘴気をまとったスタッフを左手で振り、兵士を払いのける。


 「み、み、みない顔だ、ほ、本当に、セ、セルジオの家の者か?」 

 フードを、クディに寄せて目を覗き込む。

 男の顔がクディにだけハッキリと見える。


 顔の右半分が溶け、頬と顎の骨が剥き出しになっている。

 瞼のない眼球は、緑色に変色し今にも頭蓋から腐り落ちる寸前といった状態だが、彼の右手の指輪がキラリと光り、周辺の肉がグニュリと蠢き盛り上がり元に戻ろうとする。


 「ギャァァァアアァァァアァ!!!!」

 フードを被った男が絶叫しながららうずくまる。

 神経が再生され痛覚が息を吹き返し、また腐る。

 盛り上がった肉が、目の前で赤茶や緑といった人の肉の色では無いものに変わり腐臭を漂わせてボトリと落ちる。

 「はぁはぁはぁ・・・・く、く、くそぉ下民風情のくせに、くそセルジオめ、こんなもの埋めやがって・・・・」

 フードの男が毒突く。

 「あら? セルジオちゃんを知ってるの?」

 クディが腐った顔にも動じず、能天気な声で話しかける。


 まだ正常な瞳をギロリとクディに向けた。

 「セ、セ、セルジオに合わせろ! い、今すぐだ!」

 クディに掴み掛る、その右手もまた腐肉が辛うじて残る死者の手であった。

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