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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第一部 一章 墓守始めました
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9.3話

・・・・補完回 まだまだ続きそうです。


 セルジオの住まう村には、知る人ぞ知る有名人が居る。


 花屋のターニャ婆さん。


 細身で力がなさそうに見える、

 なのに、気が付くと売り物の花満載の荷馬車を村の広場に持ち込んでおり、僅かな時間であちらこちらに花を届けてゆく。


 しかも話好きで、いつまでもうんうんと頷きながら話を聞いてくれる。

 その合いの手が素晴らしく、仕事の愚痴、恋人の癖から、軍人の機密情報の触りまで、口を滑られてしまう者が後を絶たない。

 更に、彼女を知る年配の者は、ターニャの若かりし頃こぞって(村長も)求愛し撃墜した経験を持つ。

 とは言え、彼女は既婚者である。

 彼女のハートを射止めた人物は居たらしい。


 若かりし頃、彼女は大陸中を飛び回る冒険者であったらしいのだが、彼女にとっては黒歴史らしくその話になると顔を赤く染め、昔の事だと口を閉ざす。

 そして彼女を嗅ぎまわる不埒な輩は、人知れず姿を消すか、いつの間にか彼女の花屋の従業員に成っていたりする。


 そんな凄い彼女からの文が村長に届けられて、数週間が過ぎようとする頃、村に最初の疫病患者が出た。



 ・・・・


 夜半、使いの物がレイクウッド医師を訪れ、急患だと、バルザード家へと案内するという。


 馬車を使う程の距離ではない。

 寛いでいた医師夫妻は、急ぎ支度を整え自宅を飛び出していった。


 「・・・・患者はどこに居られますか?」

 屋敷に付いた医師が外套を侍女に預け、彼の妻が持っているカバンから、白衣と聴診棒を受け取ると患者の居ると言う部屋へと急いだ。


 燭台の灯が、ベットの周りをぼんやりと浮かび上がらせている。

 流行り病の恐れがある為、看病する人気のない部屋に患者は寝かされ、魘されていた。


 噂に聞く流行り病の症状と酷似している。

 高い熱と嘔吐、体中に紫の斑点が浮き出し、下痢を伴う。

 医師は診断する、噂に聞く流行り病だと・・・・

 最初に罹患したのは、バルザード家の長男だった。


 ・・・・


 村で最初の患者が出て数日が過ぎた。


 医師は往診で忙しく成り始めていたが、事前に準備していた各種の薬の数々が功を奏していた。


 小康状態を維持する者が多く、流行り病の流行を押し留める事が出来るかもしれないと淡い期待が湧きはじめた頃、最初の死亡者が出た。


 もとより体力がない老人や幼い子供が嘔吐と下痢で、僅か数日で体力の限界を迎えたのだ。


 村長は、手元の報告をみて表情を険しくする。

 患者の出た家の場所、罹患したらしい順番をそれとなく結んでゆくと町の外周を反時計回りで取り囲む。


 「・・・・これは流行り病ではないのではないか?!」

 何者かによりこの村が攻撃されている。 それは、病魔と言う見えない魔の手であった。


 ミオールの背を冷たい物が走る。

 血の気が引いてゆく。


 対応策は・・・・

 こんな小さな村で太刀打ちできるのか?・・・・

 何人の死人がでる?! この村は全滅するのか?!


 幾つもの負のイメージが通り過ぎる。

 しかし、まだ諦めてはいない。


 「・・・・敵は独りなのか? 病魔を使役している?

 まてまて、魔法をまき散らす者は病魔に掛っては意味がない。

 その者を取り押さえれば、何らかの病魔の回避方法を知っているはずだ・・・・」


 執務室を飛び出した村長は、オッドとマルタを巻き込み、人集めに奔走するのだった。

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