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いつもダンジョンに居ます  作者: ねむねむぴよ
第二部 王国の食指
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88話

 黒く酷い臭いの煙がセルジオ達と一緒に、ダンジョンの中から出口に向かって上がっていく。

 意識をとり戻したアレクセイは、火を掛けたところから意識が曖昧で良く覚えていないと言うが、歩けるのならチャッチャと歩けと、クディに肩を貸すセルジオに石鋤で追われながら先を歩く。


 次第に外の明かりが近くなり、流れ込んできた新鮮な空気が肺の中を満たす。


 「はぁ・・・・戻って来れた・・・・」

 セルジオはクディを外に押し出すと、外のざわめきが聞こえてくる。


 オオオオオオオ!!!!


 入り口を遠巻きに取り囲む多くの人々が歓声を上げる。

 警護兵や教会関係者、貴族の遺族に男衆が、セルジオ達に駆け寄ってくる。

 腐臭と煤けた酷い臭いが染みついているにも関わらず、彼らは一同の背中を叩き、良く戻った声を掛け喜んでいた。


 王国軍突入後、複数でダンジョンに潜り、錯乱せずに無事生還できた王国関係者は初めてだったからだ。


 「クーリンディアド!!」

 ケレブレシアが凄い形相で駆けてくる。


 「あらぁレシアどうしたのぉ? そんなに血相変えて走って いい女台無しじゃない?」

 レシアは打撲の痛みを微塵も見せないクディに飛びつき、きつく抱きしめる。


 「心配したんだぞ!! なんだその言いぐさは!」

 「・・・・いっ、今はそんな事より、帰って打ち合わせよ!」

 さすがに青痣&痛めたあばら(たぶん骨折)を万力の様に締め付けられ、次第に死相が滲み出てくるクディ。

 「アレクセイ様ぁ!!!!」

 遅れてニーニャとジードが駆けてくる。


 シュバッ!


 「少し苦いプリンだけど、簡単には渡さないわよ!」

 クディは、ここぞというタイミングでレシアの腕から逃れ、アレクの後ろに回り込み彼をキープする。


 「独り占めなんて許さないんだから!!!」

 ニーニャがアレクに取り付こうと、熊の様に両手を挙げてクディに挑む。

 「見苦しいわねぇ、強欲商人! 彼と私は戦友なの! 深い絆で繋がってるのよぉ! しっし!」

 アレクを抱き寄せ、足で「しっし!」とニーニャを追い払うクディ。

 アレクセイは微かでも記憶があるのか、苦虫を噛み潰したような表情で引きつった笑顔を見せていた。


 「セルジオ、お前も大変だな・・・・」

 ジードがセルジオの元にきてねぎらう。


 「クディさんにも色々あるんだよ、あれでも」

 セルジオが感慨深げにつぶやく。

 ジードもクディは交渉事で大変なのは知ってさと、勘違いして頷く。


 「で、あの司祭、まだ居るのかな・・・・」

 「こっちに、教会建てろって言ってきてるらしいよ。 そこの司祭に成るんだと・・・・」

 「ほんとか? それは助かる!」

 「何が、助かるんだ?」

 「俺が、クディから解放されるだろう?」

 「そうなのか? アレクセイはデザートで、お前はパンだとか言ってだぞ?」

 「俺、パンなのか? 主食じゃないか? それって・・・・」


 地面に手を突いて俯くジードと並び、クディとニーニャを眺めているセルジオだった。


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