72話
引っ越し後、おかげさまで、ハイファンタジー日間10位になりました!
死体の動きが急にとまった。
セルジオの荒い息と、心臓がドドドドと早鐘のように打つ音が耳腔に響く。
死体が倒れた折、腕の位置の座りが悪かったのか、ずるりと床に転がった。
・・・・
セルジオは一瞬逃げようか? それとも動いた遺体を回収しようか? と迷う。
ドサ・・・・ドザ、ガササササ・・・ザザササササ
動いていた死体の更に奥から、いくつもの音源が残響音と共に回廊に木霊する。
「わ、わぁ、わあぁぁ!! 拙いって!!!!」
セルジオは叫び自分を鼓舞し、来た道を全力で駆け出す。
踵を返す間際に、彼の目に映ったのは、10体以上の床を這う死体だった。
しかもその這うスピードがハンパなく早い。
一瞬しか見なかったから何とも言えないが、頭の無い死体から上半身だけのもの、そのいずれもが床を蛇のように体や腕をくねらせて、迫ってくるのだ。
「わぁああぁぁあぁ!!!!」
カンテラの灯が激しく揺れる。
死臭が立ち込め、臭いだけで吐き気をもよおす暗闇の中、疾走するセルジオの体が空気を求める。
心臓が口から出てきそうな程鼓動し、蟀谷がビチビチと脈打うつのが判る。
緊張のためか、口の中は切れてもないのに血の味がしてくる。
全力で走っているのに、後ろを這う音が間近に聞こえる。
ハァハァハァハァハァハァ・・・・
壁際に置いていた遺体回収袋が、遠目に見えてくる。
『あと少し、あと少しで石戸の場所だ! 脚! もっと動け! 動いてくれ!!』
心の中で何かに祈る。
セルジオは反射的に遺体袋を石鋤に引っかけた。
なんだか少し体が楽になった気がする。
手と足を上げよく振り、荷を持つ前よりも更に速く駆け抜ける。
それでも後ろから音が追ってくる。
隠れられる場所がない長い回廊に、セルジオの荒い息と、何かの這い迫る音が木霊していた。
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この続きは本日18:00 ナイトメアなクリスマスですw




