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麗しのプリーティア  作者: aー
第二章
84/203

警備体制見直してくださいよ

 オステンの神殿長は王都で審議にかけられることとなった。

 代理は王都からやってきたプリーストが務めるようで、しばらくは落ち着かないだろうということだった。

 同時期、病にかかる街人がぴたりと止まった。

「なんらかの薬物を服用していたのでしょうね。フェルディたちの証言もあるし、まず間違いなくアファナーシー・ニキータという人物が関わっているのでしょう」

「その人物については私も調べてみましょう。祖国の者が何か知っているかもしれません」

 日が暮れる前に、百合たちはレオーネの館に戻った。バッカスも一緒だ。

「・・・いいえ。あなたがそこまでする必要はないわ。報酬もかねてヨシュカ・ハーンに調べさせましょう」

 ギョッとしたのはコラードとフラジールだ。どこの世界に王都の神殿長を顎で使う女がいるのか。

「謎の男の正体も分かるかもしれないし」

 海賊の存在が明らかになった今、捜査も進展してきている。情報を整理するまでには多少の時間がかかるため、この日はここで休むことに決めた。

「バッカス。今宵はどこで休まれますか、よければ私が借りている部屋を・・・」

「ユーリと一緒に寝るからいい」

 バッカスはフラジールの申し出を瞬時に断って百合に抱きついた。

「ね、いいでしょ?」

「もちろんよ」

 嬉しげに抱き着く姿は、どこか母親に甘える子どものようだった。これにはゼノンやフラジールも文句は言えない。

「足の具合は大丈夫なようですが、問題はこの世界に対する知識の乏しさでしょう。明日からは私の部下が講義しましょう」

 コラードは興味がなさそうなそぶりで言うが、その実バッカスが気になって仕方がなかった。

 彼が、というよりは彼の持つ異世界の知識だ。

「それには及ばないわ。フラジール、面倒を見て頂戴」

「承知しました。私にお任せください」

 フラジールが胸に手を当てて仰々しく腰を折った。それを見てバッカスがかっこいいと騒ぎ出した。

「バッカスにも教えてあげますよ。綺麗に出来ると女性たちが喜びます」

「僕もかっこよくなれる!?」

「もちろん」

 診療所で子どもに慣れているフラジールは、少年の心をつかむ方法を心得ていた。その様子にコラードが悔しげな顔を見せる。

「バッカス。そろそろ休みましょうか」

「うん。ねえ子守唄うたって」

「いいわよ」

 百合とバッカスは手を繋いで出て行った。誰もがその後ろ姿に癒された。

「まるで家族みたいですね」

「似たようなものでしょう」

 同じ世界からやってきた人間が二人。仲良くなるのは当然に思われた。

 その夜。百合は部屋にバッカスを招き入れ、彼のためだけに子守唄を歌った。




「海賊はやめて山賊に転職してみては如何です」

 荒野のような庭をぼうっと眺めていたフェルディは、ゼノンの刺々しい声を聞いて我に返った。

 自主的に見回りをしていたゼノンが見つけた形だが、警備不足に溜息が出そうだ。

「海が好きなんだよ。だから山賊にはならないかな」

「では他人の屋敷に侵入するのはやめなさい」

 夜のとばりが下り、草木も眠る頃。フェルディはレオーネ・ヴィンツェンツィオの屋敷の庭に侵入していた。

「そうだよね」

 うん、ごめん。と頷く男に、ゼノンの眉間の皺が深く刻まれる。

「でも君に会いたかったんだ」

「・・・彼女ではなく、ですか」

 獣が唸るような低い声には疑心があった。

「彼女が居たら君の話が出来ないだろう?」

「男に興味はありません」

「・・・そういう意味ではない」

 フェルディも嫌そうに眉をひそめた。

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