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麗しのプリーティア  作者: aー
第二章
78/203

つれても困る

 四日前、百合はたった一人で神殿に乗り込んだ。

 その後数時間もしないうちに神殿が慌ただしくなり、街中に潜んでいたほぼ全てのプリーストや神殿関係者が姿を消した。

 今頃彼女がどうなっているのかと考えると、フラジールは吐き気と眩暈で死にそうだ。

 神殿はプリーティアを傷付けない。それは絶対のはずだった。だが現在、かの場所は迷い人を捕えているときく。もしプリーティアとしてではなく、異界からやってきた女として扱われたら、彼女は一生外に出られないかもしれないのだ。

「フラジール殿。何をさぼっているのですか」

「ゼノン。見てわからないか、私は今とても苦しい」

「気合で何とかしてください」

 こいつ本当にプリーストかと、フラジールは悲しくなる。

「プリーティアは無事だろうか」

「・・・この場合、むしろ心配するのは他のプリーストたちかもしれませんが、彼女は大丈夫です」

 やけに自信があるゼノンに、思わず胡乱な視線をやる。

「どうしてわかるんだ」

「ご存じありませんでしたか」

「うん?」

「我々神殿に属するものは、互いを攻撃できないよう特殊な術をかけられています。例えば・・・私が彼女に不埒な真似をすることもできません」

 ゼノンはさらっとのたまった。

「だが王都の元神殿長は不埒な真似をしたんだろう? というか、鞭で攻撃した本人が何を言っているんだ」

「神殿長には様々な特権が与えられています。あれは例外中の例外です。ところであの鞭の使い心地は良かったですね。良い品でした」

 そこは褒めなくてもいいと思いながら、フラジールは考える。

「この街の神殿長にもその特権はあるんじゃないのか?」

「いえ、それも難しいでしょう」

 何故か断言したゼノンに首を傾げた。

「ゼノン? まさかまだ隠し事があるわけじゃないだろうな」

「私にはありません」

 含みを持たせた言い方だった。




 百合が神殿へ赴き八日が過ぎた朝に朗報は舞い込んだ。

 王都からの応援が到着したのだ。

 およそ四十名の屈強なプリースト達が騎士団に詰めかけた。

「プリーストがあんなに強そうで良いんですか」

「緊急事態ですから、戦闘向きのプリーストが来たみたいですね」

 コラードがうんざりしたような顔で呟くと、ゼノンが何でもないことのように答えた。

「神殿は何を目指しているんです」

「ご安心ください。我々は自衛のためにのみ力を振るいます」

 にやりと笑ったゼノンの顔は、絶対に言葉と表情が一致していない。

「・・・胡散臭いと言われたことはありませんか」

「あなたには言われたくない」

 二人は無言でしばらく睨み合った。


 同じころ、フェルディたちも街に入り込んでいた。目立たないよう地味な旅人姿だ。まだ明るい時間帯だが、他の旅人に紛れて酒場でエールをあおる。

「やはり情報は本当だったみたいだな」

「神殿には近づくこともできなかったわ」

 普段はピンクの髪をレースのリボンで飾る部下も、今は髪を茶色に染め下で一つに縛っていた。

「ガルテリオ、今彼女は神殿にいるんだろう?」

「ええ。街の人が奇妙なことを言っていたわ。また檻に囚われてしまったようだって」

「檻・・・監禁されているのか?」

「それがどうも違うみたいなの。檻にはね、出入り口がないのよ。しかも神殿の連中もどうやって中の人を出せばいいのか分からないんですって。前にも囚われた子がいたって」

「その子はどうなったんだ?」

「わからないわ」

 姿は大きな男だが、その口調から近くを通る店員がギョッとした顔で見る。

 ガルテリオは相手にウインクして手を振った。店員は見てはいけないものを見たという顔で慌てて店の奥に引っ込んでしまった。

「つれないわね」

「つれても困るよ。そんなことより、この街の情報はどうだ?」

「今は聞き放題よ。前に来た時は神殿の連中や騎士団が目を光らせていたから難しかったけど、今はむしろどっちの目もなくて楽ね。騎士団の方は奇病の件で調べに忙しいみたいだし、てゆーか、この街こんなんでいいのかしら」

 警備自体は相変わらずという様子だが、どこかそわそわと落ち着かない雰囲気が街中に漂っている。

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