表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麗しのプリーティア  作者: aー
第二章
63/203

行く先々でトラブルに巻き込まれる




「うぅ・・・き、気持ちが悪い・・・」

「いったい何しに付いて来たんですかあなたは」

 幼少より高所恐怖症だったフラジールは、目的地に着くころには目を回していた。口元を両手で押さえ蹲っている。

「ぜ、ゼノン・・・水を・・・」

「持っていませんよ」

 即答したゼノンの代わりに、コラードが水筒を差し出した。

「言い忘れましたが、街では奇妙な噂がありましてね。決まった店以外で飲み水を買ってはいけないという話です。病が流行りだす少し前の事ですよ。現在では噂は終息していますが、騎士団では飲み水を全て一度熱処理してから使用しています。あなた方もあまり外の水を飲まないように」

「・・・水が豊富なはずなのに、水を飲むなというのは不思議ですな」

 フラジールが悔しそうな顔で水筒を開けた。一口飲んでコラードに返す。

「こちらにも色々あるのですよ」

「そんなことよりも、ここはどこかしら?」

「この街の住人は診療所に大事な身内を預けることはありません。本日お会いして頂くのは軽症の者です。名前はエステラ。年は22。宿屋で働いていましたが数日前から症状が出ました」

 住居は地上3メートルの位置にあり、そう高い印象はない。

「わたくしをその人のもとへ運んで。ゼノン、フラジールを頼みますよ」

「まさか! お一人で行かれるなど危険です!」

 これにはさすがにゼノンも反対した。

「このコラード・エステがついているのだから大丈夫ですよ、心配性なプリーストですね」

 行く先々でトラブルに巻き込まれる百合を心配してのことだが、事情を知らないコラードが呆れたように言った。

「上へ」

「はいはい、捕まってくださいよ」

 適当な返事をしながら、しかしコラードはとても優しく百合を抱え込んだ。

「私はこれでも紳士ですので」

「お黙りなさい。今は患者が優先です」

「・・・」

 コラードはしばらく口をつぐんだ。



 二人がエステラの部屋に入るのを見届けたフラジールが深いため息をついた。周りにはコラードの部下たちもいる。

 ゼノンは声を潜めて尋ねた。

「あのコラードという男、信用はできるのですか」

「仕事に関しては手を抜かない男だ。だが信頼は出来ない。この街には最近あまり良くない噂が多くてね。うちの団長も心配している」

「仲が悪いのでは?」

 今日はよく喋るなと思いつつ、フラジールは素直に教えてくれた。

「本人たちは別に嫌い合っていないよ。だがまわりが勝手に騒いでしまう。どこまでも対照的だからな」

「対照的ですか。そうは思いませんでしたが」

「家柄、立場、得意分野。様々な面で対照的とは言える。だが周りが思っているほど彼らは暇ではないのだよ」

 それでも今回わざわざフラジールが付いてきたのは、一重に危険があると判断されたからだ。

「・・・ところで。この街のどこが、危険なのですか」

「先ほど武器を取られそうになっただろう。私も今は短剣しか持たせてもらえていない」

 騎士の命ともいえる剣を没収され、街中を自由に歩かせない状況は異常だ。

「それに、この街では危険な薬物が流行っているらしい。王都や他の街には流通していないが、それを服用すると別人のようになるそうだ」

「薬ですか。本当にセスを呼ぶことは出来ないのですか?」

 フラジールはしばらく考えて、そっと頷いた。

「・・・私の方で何とかしてみよう。だが、難しいことは変わらない」

 そんな会話をしていると、二人の前に音もなくコラードが降り立った。

「アサシンに向いているのでは」

「あなた本当にプリーストですか? ・・・プリーティアは患者を調べるために部屋に残りました。ああ、そんな物騒な顔で見ないでください。男に見つめられても嬉しくありませんよ」

 茶化したような言い方だが、どうやら頑としてゼノンを部屋に上げるつもりはないようだ。しばらく二人が睨み合う。

 フラジールや他の部下たちがこっそりため息をついた瞬間、それは現れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ