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麗しのプリーティア  作者: aー
第一章
35/203

許されない恋だそうです。


 百合がフェルディと再び見えたはその二日後の事だった。

 護衛役を務めるエドアルド・ジャコモと馬で遠出をしていたら、前から統率のとれた一団が歩いてきたのだ。先頭にはフェルディ・イグナーツがおり、その隣には派手なピンクの髪の巨漢が居た。何故かフリルのレースたっぷりの服を着ている。

「こんにちは、フェルディ」

 百合がフードを取ると、フェルディが気付いて優しく目を細めた。

「こんにちは、プリーティア。副長殿も」

 フェルディがエドアルドに軽く手を上げると、彼はわずかに頷いた。

「あらぁん、エドアルド・ジャコモ。あなたの素敵なお頭さんは、今日は居ないのかしらん?」

 エドアルドがピンクの髪のガルテリオ・ダリを見たが、それは一瞬だった。まるで何も聞いていないという風に完全に無視する。

「ちょっと! 無視すんじゃないわよ!」

 エドアルドに怒鳴りつけるガルテリオに、フェルディが呆れたようにため息をついた。

「こんにちは、初めまして。あなたも海賊さん?」

 百合が笑みを浮かべて挨拶すると、ガルテリオが今気付いたとばかりに目を輝かせた。

「まあ! なんて可愛い子。あなたお名前は? あたしはガルテリオ・ダリ。マーレ号の副船長をしているのよ」

 うふんと笑って腰をくねらせた巨漢に、百合は楽しげに笑った。

「わたくしは西のエメランティス神殿から参りました、ユーリです。ガルテリオとお呼びしてもよろしいかしら?」

 ガルテリオは一瞬目をカッと大きく見開いた。隣に居たフェルディが驚いて肩を震わせる。しかし次の瞬間には感動したように笑った。

 素早い動きで百合の前まで来てその白い手を握ると、驚く程無駄のない動きで彼女を己の腕の中へと引きずり込んだ。

 これにはエドアルドも驚いて取り戻そうとしたが、彼が手を伸ばした時にはすでにフェルディの隣に戻っていた。

「フェルディ、この子うちで飼っていい!? ちゃんとお世話するから!」

「え? は!? いやダメだろう!」

 百合は状況についていけず呆然とガルテリオに担がれていた。

 とりあえず思ったことは、

「凄いわ、力持ちね。それに足も速いのね」

 ということだった。

「プリーティアも簡単に相手を信用しないで! わかっていますか、これは海賊です!」

「あら、これだなんて失礼しちゃうわ」

「そうでした。海賊さん、そろそろお腹が痛いので降ろしてくださいな」

 のんびりした二人に追いついたエドアルドが、珍しくムッとした顔で百合に手を伸ばした。フェルディがその顔に驚いて百合をガルテリオから奪い取る。あと一歩の所でフェルディに邪魔されたがエドアルドは、怪訝そうな顔で口を開いた。

「何の真似です」

「いや、なんだか怖い顔をしているので・・・つい」

 つい、ではない。

「海賊風情が触れて良い存在ではありません」

「そうなんですけど・・・あなたの顔も十分海賊になれそうですよ」

 フェルディも言いつつ混乱していた。

 二日ぶりに触れた百合は、相変わらず細くてか弱い。それに何だか良い香りがして女性を意識してしまう。

「フェルディ。そろそろ離して欲しいのだけど」

「すみません、プリーティア。しかしプリーティアが簡単に名乗ったり担がれたりするのは如何かと」

「ガルテリオは素早いのね、驚きました」

「いえ、だからそこではなくて・・・」

 フェルディがため息をつきつつ、まるで庇う様に己の後ろに百合を隠した。その様子にエドアルドが眉をひそめる。

「マーレ号船長。我々を敵に回すおつもりか」

「いえ・・・ああ、そうだ副長殿。少し良いだろうか、アファナーシー・ニキータの件で話がある」

「・・・今は困ります。プリーティアを騎士団に戻してからです」

 あら、とガルテリオが驚いたように口を開いた。

「神殿じゃなくて騎士団なのね」

 エドアルドが表情を消した。

「・・・プリーティア、こちらへ」

「わたくし、もっとガルテリオとお話ししたいわ」

 百合がそう言えば、エドアルドが反射的に言った。

「駄目です」

 まるで反論を許さないと言う意志があった。百合の瞳がスッと細められる。しばらくエドアルドを見つめ、静かな声で言った。

「・・・ねえ副長さん。わたくし、あなたの部下ではないわ」

「あなたの護衛を命じられています」

「わたくしは、あなたに守られたいわけではないわ。プリーティアという存在は神々によって守られる。人間ごときがわたくしを傷つけることは出来ない」

 どちらも譲らない姿勢に、ガルテリオが慌てた様に言う。

「じゃあ、騎士団でお話ししましょうよ! お頭さんも一緒なら皆安心でしょ?」

「何故海賊風情をそう何度も招かなければならないのです。それに、お前の目的は団長だろう。この変質者が」

「まあ! 失礼しちゃうわ!」

 変質者? と百合が首を傾げると、フェルディが小声で教えてくれた。

「ガルテリオはアンドレア・カルロに惚れているのです」

「・・・あら・・・まあ・・・大変」

 一瞬、誰が誰に惚れているのか理解できなかったが、思わず呟いた。

「そうなの! 許されない恋なの!」

「そうねえ、敵同士の恋なんて・・・なんだか物語みたいだわ。どうかしら、どうせならお頭さんを強奪して海に逃げると言うのは」

「それはもうやったわ。でも彼・・・あたしより強いのよね」

 目が死んでいたと、のちに百合が語った。



いつもありがとうございます。更新不定期で申し訳ありません。

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