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麗しのプリーティア  作者: aー
第一章
29/203

同性同士のセクハラが一番怖い

 南のエメランティス神殿には他にはない特徴がある。それは神殿に仕える者が、武器を扱うことだ。

 西のエメランティス神殿には外部から身を守るための結界があるが、南にはそれがない。そのためか、南のエメランティス神殿では全員が武器を扱えるよう日頃から稽古を惜しまなかった。もちろん、武器も大量に保管されている。

 しかし、金銭的にも人数的にも限度はある。

基本的に武器を扱うのは緊急事態のみと定められており、武器の保管・使用には厳しい管理が付くはずだった。

 そして昼間。ゼノンは一人で行動した結果あまりにもずさんな管理に我が目を疑った。

 神殿内の詳しい様子はイーズの証言により把握していたとはいえ、武器庫には必要以上

のものが揃っていた。ゼノンが現役時代、使用することすら躊躇う暗器まで各種揃っていたのだ。まるで武器の見本市のような場所で、明らかに素人が揃えたものには見えないのに、その保管方法は適当だった。

 武器庫には武器の一覧表などはないが、ここ数か月分の納品書が乱雑に置かれていた。

 ゼノンは数枚拝借して持ち帰った羊皮紙を百合に見せた。

「わたくしが直接確認に行くのは良くないわね。ゼノン、この納品書、出来るだけ複写して頂戴。紙はセスから貰って。明日以降よろしくね。定期的にセスを通して中央に送るわ。それから、いつでも逃げられるだけの準備はしておいて」

「はっ」

「でもこれだけの武器を買うにはお金が必要でしょう、いったいどこから・・・」

 金銭については、流石にイーズも口を開かないだろうということになった。

「わたくしも調査してみるわ。でもわたくしがするのは外から。あなたは引き続き中を調査してちょうだい。これが終わったらたんまり報酬を頂いて、西に帰るわよ」

 ゼノンが口元に大きく笑みを浮かべて頷いた。

 顔の作りが頑丈のせいか、そうすると余計悪人顔になって少し怖かった。



 翌日、日が高く上りきった頃。百合は一人で崖に来ていた。

 ゼノンが一人で神殿を抜け出し、決死の覚悟で騎士団を訪れた。半裸集団に笑顔で出迎えられた彼は速攻でセスの部屋に逃げ込んだ。場所は百合から聞いていたので迷いのない足で駆けた。

「あいつの足、いいよな」

「あの尻もいい。無駄な肉なんてなかったぜ」

「いや、あの腕を見たか。あれは戦場を知っていやがる」

「プリーストにしておくには惜しいぜ」

「あの筋肉!」

 などという恐ろしい会話が聞こえたが全て幻聴だと思い込んだ。

 そして屍のように眠るセスを叩き起こして紙を貰い、その場で羊皮紙を書き写して全速力で神殿に戻った。

 その時のゼノンはまるで人を殺してきた後のような恐ろしい顔をしていた為、偶然すれ違ったプリーストが悲鳴を上げた。

「ごめんなさいね、ゼノンは朝がとても苦手なの。もう毎朝大変なのよ」

 という百合の優しい笑顔と声に救われたが、心が少しだけもやっとした。

 そして今。ゼノンは悲鳴を上げられたことと、騎士団でのセクハラまがいの発言から非常にショックを受けており、百合の子守唄を有り難く頂戴した後、絶賛引きこもっている。

 ゼノンが引きこもったため、百合はやはり一人で行動することとなった。

 黄色い草は手当たり次第に抜かれ、昨日と変わらず空と海の青に感動する。その時、一陣の風が吹いた。

「きゃっ」

 ローブがふわりと揺れ、フードが取れたため慌てて髪を抑える。

「驚いたな。この街には本物のローレライがいたのか」

 少し離れた場所から呟かれた言葉に、百合は内心面倒だと思った。フードをかぶり直して振り向く。

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