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麗しのプリーティア  作者: aー
第一章
26/203

半裸集団に囲まれると威圧感すごい

「その通りです」

「ではそっちも来ればいいだろう」

「お断りします。私はあのような頭のおかしい集団と行動を共にするのはごめんです」

 全裸集団に体を弄られたのはよほどショックだったようだ。

「・・・どうして一人じゃダメなんだ」

「わたくしのような美しい女が街を歩いたら皆が驚いてしまうわ」

「その自信はどこからくるんだ」

 恨めしそうにセスが呟いた。

「でも本当の事よ。それに、この街においては良い意味ではない。昨日のローレライの件は覚えているでしょう?」

「ローレライとはなんだ」

「・・・とりあえず化け物のことみたいね」

 この世界でも、とは言わなかった。

「とにかく、一人で行かせるのは反対です」

「一人じゃない。俺もいる」

「あなたがあの変態集団に勝てるのですか」

 ふざけるなよ、このチビ! という副音声が聞こえた気がしたが、百合はあくまでも気のせいということにした。

「ねえセス。わたくしの美しい肌が焼けるのは嫌だわ」

「美容と日焼けに効果のある薬を作ってやる」

 どうしても引き下がらないセスに、百合もゼノンも溜息を隠さなかった。

「しようのない子ね」

 セスが初めてホッとしたような笑顔を見せたので、百合は彼を騎士団に置いて行ったことを初めて後悔した。

 一晩のうちにいったい何があったのだろうか。しかし好奇心は猫も殺すので聞かないことにした。




「この植物はだいたい、こういう海に面した崖に生えるらしい。素手では触るな」

 海風が下から吹き上げる崖。足場も心もとないが、それよりも空の青と海の青に驚いた。

 海はその深さを表すように濃い緑がかった青で、空は吸い込まれそうなコバルトブルー。足元には調査対象の黄色い草。赤色の斑点が浮かんでいて、見るからに怪しげだ。

「わかっているわ」

 セスは自前の分厚い手袋をつけて慎重に草を観察していく。時折ノートにイラストを描いたり一言書き足したりと忙しい。

 二人は騎士の案内で来ているので、振り向けばそこに半裸の集団が十名程居た。明らかに多すぎる人数だ。

「あんたたちはこっちに来るな」

「そうは言ってもよう、ボン」

 ボン? 百合が首を傾げると、セスが顔を赤くして怒鳴った。

「だからボンじゃない!」

 ボンとは男の子供を指す言葉だ。

「へへ、見て見ろよ、ボンが怒ったぜ。可愛いよな」

「やっぱチビだよな。俺たちが鍛えてやんねーとな!」

 どうやら嫌な意味で可愛がられているようだ。嫌われていないだけマシかと百合は納得した。それにしても半裸の男たちがにやにやと嬉しそうに笑って美少年を見ているのは、どこか犯罪的だ。

「早く帰りたい!」

 セスの悲痛な叫びが聞こえた。

「うおっ、なんじゃこりゃ!」

 ふいに、野太い声が響いた。

 半裸騎士の一人の右わき腹あたりが、いつの間にか赤くただれている。本人が引っ掻いたのかわずかに細長い赤い線もできていた。

「痒っ! かいぃぞ!」

「あ。ばか! 頭に、草には触んなって言われただろうが!」

 痒みが酷いのか、力の限り引っ掻いてしまうのでどんどん傷口が広がり血がにじんできた。

「傷口を洗うから水を持ってきて。セス、塗り薬は?」

「ある」

 淡々と返事をすると、手袋を脱いで胸元から塗り薬の瓶を取り出した。

「いって! かっゆ! あああああっ、くっそ!」

「お、おい、落ち着けよ!」

 半裸だったのか悪かったのか、よく見ると背中も酷いただれだ。

 あまりにも酷いそれに、騎士仲間は近づくこともできずおろおろしている。

「お退き! わたくしの道をふさがないで。そこの赤い布の男、さっさと水を持ってきなさい。大量によ。隣のあなたも手伝いなさい! そっちは氷か何か、冷やすものを!」

 大きな声で指示を出すと、ハッとしたように全員が言われたままに動き出した。

「的確な判断だ。流石最恐」

「セス。後でお仕置きよ」

「・・・ただの冗談だ」

 セスへの仕置きを考えながら、要領よく手当てしていく。いつの間にか周りを半裸集団が囲んでいて尊敬の眼差しで見ていた。

 暑苦しい視線にさらされながら、今後の調査に同行する人間には服を着るよう要請することを決意した。

「しばらく休めば大丈夫だ。それから、こいつに触った奴もしっかり手を消毒することだな」

 セスは処置が終わると植物をハンカチーフに包み、採取用の袋に入れて立ち上がった。

「あとあんたら、頼むから服を着ろ。俺の仕事を増やすな」

 苦虫を噛み潰したような顔で言った。

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