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麗しのプリーティア  作者: aー
第四章
152/203

強引な優しさ


「フェルディから届いた報告書によると、二人は現在怪しい神とやらを追って移動しているみたいね」

「もう少し情報を早く入手できれば、もっと動きが取れるのですが。流石に大陸に乗り込むのは危険ですからね」

「そうよね。さすがに大陸は遠いわ」

「これからどうします。彼に連絡を取ろうにも距離が離れすぎています。かといって大陸は危険です」

 繰り返し危険を強調するゼノンに、百合は淡々と頷く。

「そうねえ」

アンドレアは部屋を埋め尽くすほどの羊皮紙の山に、何度もため息をついた。

「お前たち、何故俺の部屋でやる」

「応接室はわたくしのベッドルームだもの。わたくし、寝る場所に仕事を持ち込むような無粋な真似はできないの」

「俺の部屋ならいいのか!?」

「いいわ」

 アンドレアがそっと両手で顔を隠したのを確認すると、ゼノンが小さく息を吐き出した。そのベッドルームはゼノンも使用している。毎夜百合がソファで眠り、セスは床で眠っている。時折ソファから百合が落ちるので、この女はこんなにも寝相が悪かったのかと困るほどだ。

「ところでゼノン、お前少し訓練に付き合ってくれないか。雪に慣れていない連中をなんとか鍛えねばならんのだ」

「・・・わかりました」

 そう言ってアンドレアはゼノンを部屋から連れ出した。百合は何も言わなかった。

 部屋を出て数分。訓練場には多くの騎士が居たが、誰も剣を持たず雪かきをしていた。誰もが暗い顔をしている。寒さに弱い男たちの精神はすでに限界を超えているのだ。

「なあゼノン」

「・・・はい」

「おまえ、もうプリーストじゃないんだろう、ならなんで彼女の隣にいるんだ? やっぱり惚れてんのか?」

 二人は騎士たちの前で立ち止まり、眩しい程の雪を眺めた。

「・・・わからないので、現在確認中です」

「わからんのか」

「よく言うではありませんか」

 自分のことほど分からぬと。ゼノンは静かな声で言った。

 だがその瞳はとても優しい色をしている。初めてアンドレアたちと出会った時よりもずっと人間くさい瞳だ。とくに百合を見つめる時の色は、盲信ではなく、むしろ・・・と考えてアンドレアは首を横に振った。

 きっとゼノンは気付きたくないだけなのだ。だから今は言うまい。

「そうか」

 それだけ言って、アンドレアはふっと笑みを浮かべた。

「じゃあ、稽古を頼むぞ」

「この雪はどうするんですか」

「ああ? もちろん雪かきも頼むからな」

「・・・なぜ俺が」

「身体を動かせば、少しは気も晴れるだろう」

 にやりと笑ったアンドレアを、ゼノンがムッとして睨みつけたのだった。



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