感動の再会的なsomething
そんなよくある話
「心配したんだからっ!!」
そう言って彼女は彼を強く、強く抱きしめた。彼女の両腕は彼の肋骨をギリギリと締めあげる。
――待て、離せ。そう叫ぼうとする彼だが器官を潰され声を出すことが出来ない。
周りの仲間は彼女に遠慮をしているのか、近くには来ず、目を細め涙を滲ませている。
ポキ、と、小気味のいい音が辺りに響く。だがその音は、彼女の嗚咽にかき消され、空へととけていった。彼の肋骨は折れた。
彼は痛みに身をよじろうとするが、彼女の腕はそれを許さず、有り得ない程の強い力で彼を締めあげる。
彼の肋骨は両肺に突き刺さった。彼は呼吸ができなかった。
肺には血が溜まった。彼は呼吸ができなかった。
彼女は手を首に回した。彼のことは涙で見えなかった。彼は絶望した。
彼は喉を潰された。彼は呼吸ができなかった。
そのまま長い、長い時間が過ぎた。実際にはたった十分足らずだったが、彼にとっては永遠に等しかった。
「でも、本当に良かった、生きてて」
そう呟き、彼女は泣き腫らした眼を拭った。周りの仲間もそれに伴い涙を拭う。
そして、手を離し、彼を見た。
彼はやっと解放された。
生から。
誰も悪くないんだ!