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ちゃんと生きてますよ。冬眠もしてません。
ただ、仕事が忙しい……
「いぃぃぃやぁぁぁ」
みなさんこんにちわわたしはいまおいかけられています、ってまたこっち向いたぁ!?
何でこんな目に遭うんでしょうかぁ?焦って魔法もうまく発動できませんし、なにより一時も目を離せない状況です。
脱初心者用のクエストとして数人の初心者冒険者と一緒に来てますが監視の人が本当に見てるだけで何もしてくれません。
「この街の冒険者はみんな通った道だ、洗礼だと思って頑張れー」って、こんな洗礼なんて受けたくないにっ!きまってるじゃないですかっ!
おわ?!かすった! ちょっとかすった!
「きゃぁぁぁーーー」
あぁっ最後の一人が飲み込まれて……最後の一人? ってことは残ってるのわたしだけじゃないですか!?
ヤバい、よく見れば残った魔物が近寄って来てる。
シュルシュルシュル。
はっ?! 後ろからだと?! さっき見たときは何もいなかったはずなのに。
いつもの装備じゃなく胴長と呼ばれている上半身まである長靴を着ているから動きにくいのはもちろんの事、なによりここが沼地なのが一番きつい。泥の臭いが酷く、動くにしても足を取られるし所々に生えてる草が魔物を隠して見つけにくいしで……あぁそうか草だけじゃなく泥に潜って近寄って来るのか。
とっさに使った魔法は微妙な効果を発揮して丸呑みにされる事はないが逃げ出すこともできない状況に陥ってしまった。
どんな状況かって? 大きなカエルの舌がお腹のあたりに巻きついた状態で、檻の魔法を自分が内側になるように使ってしまって、さすがに檻ごとは飲み込めないが舌を外して諦めることもしないでズリズリ引きずり回されてる状態ですよ。
「あぁあ?ぁあ?!ドロに潜ろうとすんなー! 誰かー助けてーー!!」
かぽーん
酷い目に遭いました。あの後胸のあたりまで沈んでからようやく助けださえました。
そんなわけで今はお風呂です。なんとあの依頼専用のお風呂なんです。と、言うかそれだけ沼地の臭いが酷いだけなんですけどね。ご丁寧に街に臭いを持ち込まないように防壁の外に作ってあるんですから、やっぱりこの領地儲かってるなー。
「しかしすごいですね~マリーさんは、私ら農家出の冒険者と違って最後まで呑まれなかったんですから」
一緒にお風呂に入っているセレナさんはわたしより年上で同じ講習を受けていた一人です。
ご兄弟が多く長女だった彼女が早々に家を出て手にした仕事が冒険者とは……もっと他に仕事はなかったのですかね?
まぁ薬草等の採取ばかりしてられるのでランクや報酬額は上がってないそうですが普通に暮らしていけるだけは稼いでいるそうです。
「そんな事ないのですよ。結局助けてもらいましたし。
それよりもお金を貯めて王都を目指すそうですが、仕事内容的にこちらの辺境伯領の方がいろんな面で優秀ですよ?」
「それはマリーさんが王都からいらしたからそう思えるんですよ。私ら平民の憧れでもありますし一度は行ってみたいものです」
おぉう、セレナさん大きな胸が浮いてらっしゃる。あやかりたいものです。
わたしは年の割に小さな方ですし、何を食べたらあそこまで大きくなるんでしょうか。揉んでみたい……
おっと、思考が危ない方向に向かってますね、気持ちを切り替えて周りを見回します。
あ、あれは石鹸ですね。この領地では石鹸も特産品らしいですがどうやって作ってるんでしょうか。
「どうしました?あぁあのスライム石鹸ですか。そういえばあれも今回のカエルも領主様のお嬢様が見つけた物らしいですね」
この後色々教えてもらっていたらのぼせそうになりました。
さてギルドの食堂にきています。
カエル退治の依頼を受けた方は全員そろってますね
なんと今回のカエル退治の依頼は高級食材の料理がついているのです!
基本、新人のみの依頼ですが人数が足りなければ受けれる依頼なので毎週チェックしないといけませんね。
あ、でもお風呂がついてる依頼なので競争率高いかも。安い宿ならお湯のみで体を拭く程度か公衆浴場はお金かかりますしね。
たまーに凄く臭い冒険者がいますけど、聞いたところによると、どうも獣避けらしいんですよね。少し臭う程度なら鼻の良い魔物に襲われますが、臭すぎて逆に逃げられるとか。
ほとんど街の外で暮らしていて、たまに街で必要なものを買ったり依頼の処理をしたりするそうですが、この人も外のお風呂を使ってからでないと街に入れてもらえないとか。
え?そんな事より料理の方が気になるって?
とっても美味しかったのですが原料があのカエルってどんな罰ゲームですか?
もちろんコッチは養殖で臭いもなく美味しいんですが、見た目や飲み込まれそうになったときの息の臭さを思い出すとあんまり嬉しくないですねこの依頼。
あぁでも美味しい。
え?セレナさん食べないんですか?もったいないですよ?
一応高級食材使った料理なんですから、一回分の食費が浮くって喜んでたじゃないですか。
それに養殖と天然の見た目が大分違うんですから別物と思って食べればいけますって。
養殖は真っ白なツルツル肌のカエルで天然は泥に染まってデコボコの肌、全く別物ですし問題ないと思います……と、言うか思いましょう!!
戻ってからの研修でデコボコなのは傷を直す際に皮膚が盛り上がるとか、内臓も泥に染まって真っ黒だとか、実は可食部(主に筋肉)は逆に真っ白で綺麗だとか、どーでもいい知識は食べるときは封印して今は食べましょう!
え? 解体場思い出したからもういらない? 残ってる分わたしにくれると?
そんなもったいないですよ一応コレ高級食材ですよ? 普通に食べると高いんですよ?
わたしはまぁ一応貴族ですし食べる機会は今後もあると思いますが皆さん冒険者でしょう? 上級者とは言いませんが中級位までランク上げてお金貯めないと今後食べれるか分かりませんよ?
なにより高級食材取り扱ってるお店ならドレスコードとかうるさい決まりや有名人じゃないと入店できないとか……あぁ皆さん食欲が戻ったようで何よりです。やけ食いとか聞こえますがお腹いっぱい食べて明日からも頑張りましょう!
翌日以降わたしの二つ名に「鬼畜」が加わったのは納得いきません。
スライム石鹸開発秘話
この開発はお嬢様のイタズラから始まった……
簡単に説明するとタライに張った水に油を垂らす
光を反射して綺麗
何を思ったのか川に油を持っていき流す
油が光を反射しながら川を流れていくのが楽しく持っていた油壷の半分を使う
近くにいたスライムにもかけて見る、想像ではスライムの中を小さな油の玉がたくさん浮いた状態で綺麗になると思ったとのこと
実際にかけると白く濁りながら固まってしまった
どうもスライムの体液がアルカリ性だったため油と反応して固まったのではないかと
驚いて油を洗い流そうと川に持って行き洗うとコアを残して全部流れていった
泣きながら家に帰り事情を説明するが勝手に持ち出した油のことで怒られる
説明しなくても外で遊んだのに綺麗になっている手とハーブの香りから問いつめられたと思われる(なお香りはスライムが草食系だった為と思われる)
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と、こんな感じになります。
子供って何考えてるのか偶に分からない時ありますよね、どう考えたらそう言う発想に至ったのかとか。
ちなみにカエルは天然では「大沼カエル」養殖は「腹黒白カエル」と呼ばれてます、名前が違うだけで同じ種類です。
金属アレルギー持ちのカエルで専用装備を付けていれば飲み込まれてもアレルギー反応で動けなくなります、その隙に逃げれれば大丈夫なので初心者にも安心な高レベル魔物だったりします。
念のため見張り役の冒険者が付くのは気絶したときの対策のためですね。
さて次は王都に戻る送別会になります。
学園編までようやくたどり着きました。




