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「美味しいサラダが食べたいのです! おじさん!」
「何だ?いきなり。それとお兄さんな」
ギルドでおじさんに合った瞬間聞こうと思っていたことを思い出し即座に実行してしまいました。
それとおじさんはおじさんなのです。
「最近買い食いやスライム料理で盛り上がってましたが、よく考えればお肉ばっかりだったんです。
美容と健康のためにサラダを!」
「おーい誰か通訳してくれや」
通訳も何もそのままの意味なんですけど。
「多分脂ののったお肉を食べ過ぎてお腹周りが気になりだしたんじゃない?
私も覚えあるし」
「今度は野菜祭りか」
「今からの季節だとキノコもありだな」
「もう秋だもんな」
「七輪で焼いて酒のつまみだな」
「つーわけで」
「「「「「教えて、おじさん」」」」」
「てめえらまでおじさんかよ……つーかそこ!俺より年上じゃねーか!!」
「そんな事よりほれ、お嬢ちゃんに教えてやらんか」
ギルドのあちこちから声が上がりお祭り騒ぎになります。
「ったく。こっちはこれから清算だってのに。
とりあえず野菜はマンドラゴラ、キノコはマタンゴ狙っとけ」
マンドラゴラですかイメージ的に食べれそうにないのですが。マタンゴも。
「疑ってやがるな。
よし!特別講座だ。そっちの初心者や若いのも聞いとけ。
まずマンドラゴラ。こいつは『歩く植物』もしくは『歩く根っこ』って意味でな。
固そうな根っこをイメージしてる奴が多いと思うが、それはごく一部だな」
そうなるとトレントもマンドラゴラってことになりそうなのですが、違うのでしょうか。
「あー学者連中が何を持ってその辺を分けてるか知らんが冒険者的にはこう覚えとけ、『食えるか食えないか』だ」
根拠はないのに凄く説得力のある説明です。
あ、別の冒険者が質問してますね。
「それって毒が有る奴も食用の範囲内なんですか?」
「基本毒ってのは種類にもよるが薬にもなる。もちろん薄めての事だけどな。
それに毒と言っても特定の種族のみに効く物もあるしな。例えば虫下しとか」
あぁなるほどお腹にいる寄生虫を殺す毒と言うわけですか。もちろん人体には影響ないように薄めてるんでしょうけど。
「で、話を戻してだ。
マンドラゴラってのは突然変異でな野菜から生まれることもある。
俺が見たことあるのはニンジン、ダイコン、ゴボウとかの根菜類が多い。あと珍しいのがほうれん草だな。
キャベツやハクサイは見たことねーがいると聞いたし、逆に芋類や豆類では居ないそうだ」
「マタンゴもほぼ同じで元がキノコってだけだな。ただしこっちは毒の有り無しの見分けが難しく、元が無毒な種類でもマタンゴになった後に食べた物によっては毒化するから注意が必要だな。
なんで普通のキノコ取りにいけ酒飲みども」
彼方此方から「えーっ」と声が上がります。
そんなにマタンゴが食べたかったのでしょうか。
「マンドラゴラは抜くと叫ぶと言われているが、コレは主に根菜系の物に多い。
声を出す器官を作る場所が葉物野菜には無いからと言われている。
あと聴くと死ぬとか言われているが、まず死なないな経験上」
は? 経験上? 何度も聴いたんですか、このおじさん。無茶しますね。
「一番酷くて仮死状態、軽くて気絶だな。叫び声を媒体とした呪いみたいなもんだ。
だからその辺の耐性付いた魔道具を装備しとけばまず大丈夫だが……即死の新種がいたら諦めろ」
後は色々工夫しなーと精算のためにカウンターに向かいます。
因みに仮死状態で魔物に襲われるのがマンドラゴラでの死因の第一位だそうです。
「カウンター周りではあまり騒がしくしないでください! おじさん」
「俺は悪くねーよ。つーかこっちでもかよ!」




