3話 竜霊因子
扉が開いた。
その扉の奥にはフィールドが広がっていた。
そこには、2人先客がいた。
「ん?やっとかよ」
「ほんとやっとだよ」
「お前らは…」
緯幻は、驚嘆した。
なぜ、こいつらがここにいるのか?と。
そこにいたのは2人の男だった。
「よぉ、久しぶりだな御影」
「エルド兄弟…」
「知り合いなのか緯幻?」
「あぁ、昔な…」
エルド兄弟。
兄、ギーン・エルド。
弟、ゲーン・エルド。
この二人のことを呼称してエルド兄弟と皆は呼んでいる。
「なんだぁ?御影、てめぇもガルドに選ばれたということかぁ?」
この口の悪くガタイのいい方が兄のギーン。
「久しぶり御影。相変わらずだね。」
この少し大人しい口調なのは弟のゲーン。
「あぁ、俺も選ばれたみたいだ」
「御影、お前が選ばれても意味がないぞ、俺達エルド兄弟がお前の上に行くからな」
「さすが兄さん!」
ゲーンが一言いれた。
ビーン!
そのとき、急に映像が現れた。
「また会いましたね皆さん。ミュイールです、最後は心です。心は簡単にいうと2対2の戦いです」
このとき、エルド兄弟VS孝一&緯幻ということはこの場にいる全員がわかっていた。
「来い、凶斧」
「ギーン!」
ギーンの出した武器、斧で一閃。
緯幻はギリギリ躱す。
「ギーン、お前」
「凶斧、久々に見ただろう?それに、俺自身も強くなってるんだよ!」
ギーンは、緯幻に勝負を挑んでいる。
「行くぞ、御影!」
「いいぜ、こいよ!」
「緯幻!」
そのとき、後ろから殺気が。
間一髪孝一は躱す。
「なんのつもりだ、ゲーン・エルド」
「邪魔はさせないよ、兄さんと御影の」
「そうか、なら俺はお前を倒そう。」
複製の剣。
出したのは一つの長剣。
出す技、それは。
剣豪信征流 始型 三神楽。
だが、ゲーンに躱される。
対するゲーンの使う武器は、薙刀。
薙刀は、暗殺には相反している。
だが、今は戦い、必要なものである。
「剣豪信征流 始型 威羅九利」
斬撃と突きを連続で交互に行う剣術である。
だが、ゲーン薙刀を使い対等に渡り合う。
「まだだ!剣豪信征流 始型 突五部!」
「攻撃をやめるのか?!」
「違うさ」
そのとき、孝一の手を見ていたゲーンは見落としていた。
すでに、孝一の手には剣がないことを…
足元にあることを…
剣豪信征流 始型 突五部は、攻撃の最中に剣を足元に落とし、それを蹴って攻撃する剣術である。
「蹴りだと…?!」
「てりゃ!」
ゲーンは、その剣を直撃でくらった。
「がはっ!」
「そこで寝ていろ」
と一言。
孝一は、その場を離れた。
「ま…て…」
そして、ゲーンの意識が途絶えた。
孝一は、緯幻と探した。
銃を緯幻は構えた。
「喰らえ、影弾」
「効かねぇよ!」
斧で弾く。
「影よ俺の元へ!」
緯幻の影が手に持った銃へと集まる。
「させねぇよ!御影!」
「喰らえ、シャドウバレット!」
シャドウバレット。
自らの影を集め、それを放つ銃撃魔法。
威力は強烈であり、緯幻の腕であれば外すはずがない。
「凶斧の剛煉ァァァ!」
ギーンの必殺魔法、凶斧の剛煉。
振り上げた斧を地面へ叩きつけ地響きを起こし、衝撃を与える魔法。
ギーンの必殺魔法と緯幻の銃撃魔法がぶつかり合う。
威力は同等。
「まだだ!来い!陰の影」
緯幻の足元から全長30センチも満たない生物が出てきた。
妖精。
陰の影、影を操る妖精である。
全長は、約30センチ程であった。
「やっとか、お前の妖精!待ってたぞォ!」
「重ねるぞ陰の影!シャドウブラスト!」
「これが俺の最大の技!凶斧の爆嵐陣」
シャドウブラスト。
シャドウバレットを越えた威力を放つことのできる技。
凶斧の爆嵐陣。
凶斧の剛煉は地響きを起こした力だったが凶斧の爆嵐陣は衝撃波を与える力魔法。
威力はシャドウブラストと同等、またはそれ以上である。
「喰らえぇぇぇぇぇ」
と緯幻が叫ぶ。
「うぉぉぉぉぉ」
とギーンが叫びだす。
両方の力がぶつかる。
ギーンが、緯幻がその力をぶつける。
そして、シャドウブラストの威力がギーンの力を押し返す。
「俺が負けるだとぉ?」
「はぁぁぁぁぁ」
「なにぃ?負ける?俺が?」
「うぉぉぉぉぉ」
「クソがぁぁぁぁぁ」
凶斧が砕かれる。
勝ったのは緯幻だった。
「はぁ、はぁ、ギーン、俺の勝ちだ。」
「認めてやるよ、お前が勝者だ。」
ビーン!
と鳴り響いた。
スクリーンが現れた。
映っていたのは先ほどの男、ミュイール・イスナだった。
「これで終了です、お疲れ様でした。勝ったのは剣豪孝一、御影緯幻ペア。」
スクリーンを見ていたのはギーン、そして緯幻だった。
そのとき、後ろから。
「緯幻!」
「孝一か!」
「勝ったんだな俺達」
「あぁ、勝ったんだ」
スクリーンのイスナが衝撃の言葉を言った。
「やっと終わったな。」
この言葉を言ったのはイスナだった。
「御影緯幻、剣豪孝一。まだ終わりではない。終わったのは心の試練だ」
「どーいうことだ?!」
と孝一が叫ぶ。
「試練は終わったが私の作ったシナリオはまだ終わらない。」
「シナリオだと?」
「そう、貴様らはガルドの試練は終えたが私の試練は終えていないのさ」
ミュイール・イスナは笑みを浮かべていた。
「おい、イスナ。俺はどうなる」
「敗者などは知らない、その後ろのやつに殺されればいい。そいつは剣豪孝一、御影緯幻の相手でもあるがな」
「なに」
グサッ。
「な…に…、がはっ!」
ギーンが倒れた。
ギーンの身体は、胸の位置が剣によって貫かれていた。
「お前は…」
孝一が一言。
スクリーンのイスナが高笑いした。
「ハハハハハ、そうだそいつが相手だよ、竜の力を埋め込まれ、変わり果てたゲーン・エルドがな!」
「ゲーン・エルド!」
「ァ、ァ、ァ」
ゲーン・エルドの姿は変わっていた。
口には牙、背中には翼、体の表面は鱗になっており、右手はもはや剣になっていた。
「君たちにはこのゲーンを倒して貰おう、まあ、倒さなければここから出られないけどね」
「なぜ、竜のような姿になっているんだ」
緯幻がそう言った。
「私が持つ竜霊因子を使えば簡単なんですよ」
「まさかあの禁じ手の竜霊因子なのか!」
緯幻が驚きを隠せずにいた。
竜霊因子。
かつて、まだ魔法の存在が証明されなかった頃、戦争に必要な兵を強化させるために作られた薬。
この薬を使ったものはこの世界に生きる竜霊の力を得ることができる。
だが、力が強大すぎ使用中、そして使用後に自我を無くすため禁じ手とされた。
竜霊とは、この世界にいる竜のことである。
がしかし、竜の力を使う人間もいる。
だが、これは魔法の証明がされる前の話である。
今は違う。
「なぜ、そんなものを持っている?!」
「フフフ、知りたいですか?教えませんよ、その前にまずちゃんと倒してくださいね?」
「ミュイール・イスナ!出てこい!」
孝一が怒り、叫んだ。
孝一は、ゲーンがこんなになったことが許せなかった。
「あなたがたがこちらに来るのですよ」
とイスナは笑った。
そのとき、ゲーンが孝一に剣を向けた。
「ァ、ァ」
「ゲーン今助けるぞ」
「ゲーン、行くぞ助ける!」
孝一、緯幻の順に言った。
孝一は、まず長剣を生成。
「最初から本気で行く、陰の影!」
緯幻の影から陰の影が出た。
妖精融合である。
右半身を妖精に付かせ、その分を力を使う技である。
人にもよるが半身に付かせただけでもその妖精に体を乗っ取られるときがある。
だが、緯幻は違う。
完璧にコントロールしている。
「喰らえ、影塊の蓮華!」
影を薙ぎ払ったような攻撃がゲーンに襲う。
が、ゲーン無傷。
「緯幻の攻撃が…」
「まだだ!」
右手から伸びた影が爪となり、大きくなる。
緯幻の技、影染の鉤爪である。
「影染の鉤爪!」
「ァァ!」
ゲーンの右手、いや剣がそれを止める。
「はぁぁぁぁぁ!」
緯幻が叫ぶ。
そのとき、ゲーンの背後には孝一。
「今度は、俺だ!」
複製の剣が孝一の頭の上に浮かぶように生成された。
その剣の数およそ10本。
それがゲーンに襲いかかる。
「これでもくらえ!」
「ガァ!ガァ!」
緯幻を吹っ飛ばして、孝一の剣もはじき飛ばす。
「なに?!」
「ウガァァァ」
ゲーンが吠える。
「クソが…」
緯幻が壁に衝突した。
ゲーンが標的を緯幻に変えた。
「ガァァァ、ァァ」
「クソこっちに来るのかよ 」
「させねぇ!」
孝一が緯幻の方へと走る。
速攻で孝一はゲーンへと追いつく。
長剣を生成。
薙ぎ払う!
「おおおおお」
グサッ。
剣が刺さったのは孝一だった。
ゲーンは、見ていた孝一を。
故に、反撃され、刺された。
「がはっ、くそ…」
孝一は、意識が朦朧としていた。
ゲーンが雄叫びを上げた。
「ガァァァァァ!」
「孝一!孝一!」
最後に聞こえたのは自分の名を呼んでいる緯幻だった。
そこで意識が途切れた。
孝一の意識はいま暗いところへ留まっていた。
(ここは…)
『目が覚めたか、主よ』
どこからかそのたくましい声が響いた。
(俺は死んだのか)
『違う。ここは貴様の中だ。』
(俺の?)
『そうだ、と言ってもここには今我と貴様しかいないがな』
孝一の姿ははっきりとしていたが、その声の主は姿を現さない。
(俺の中にいるお前はなんなんだ?)
『我か、我は貴様の中に眠る妖精だ!』
(俺の妖精?)
『そうだ、貴様の覚醒が遅くはなったがこうやっていま力を貸しに来たのだ。』
(力…。そうだ、例え何を犠牲にしてもいい。俺にゲーンを倒す。いや、助ける力をくれ!)
『元からそのつもりだ、貴様が我の名を呼べば力を貸そう。』
『我の名は………』
そこで、孝一の意識は戻った。
緯幻が見る限りでは数分のことであった。
「孝一…?」
「あぁ、緯幻」
「戻ったのか…意識が」
「あぁ、ゲーンを助けるぞ!」
孝一の目が先ほどとは違っていた。
「先ほどとなにが変わったのだ剣豪孝一ぃ!」
ミュイール・イスナは、監視室でそう呟いていた。
孝一は、そのとき剣を生成。
「助ける、ゲーンを!」
「すまない、孝一動けそうもない…」
「大丈夫だ、俺には力がある。」
そのとき、孝一の右腕が輝き始めた。
「輝き示せ、汝の力を。燃え上がれ、火炎の翼圧!」
それは、妖精。
それは、どの妖精とも被らない。
それは、不死鳥のような姿。
「あれは…」
イスナは、驚いた
「あれは妖精王の…」
妖精王。
かのものは、強大で巨大な妖精を限りなく持つと言われた伝説の力の持ち主。
それが、いまここに。
(ガルド様は、ここまで見越していたのか…)
「そうか、ハハ、ハハハハハ。この力をガルドのものに…。このイスナ、やっと分かりました。」
イスナはそう言い、笑っていた。
「あれが孝一の妖精なのか…?」
緯幻は、その巨大な妖精を見てそう言った。
本来、妖精とは生物で例える鳥と同等の大きさなのだ。
だが、孝一のはそれを遥かに超えている。
もはや、孝一には特別な力があるのかもしれない。
「行くぞ、火炎の翼圧。」
妖精には、3つの使い方がある。
1つ目は、そのまま妖精として援護する攻撃を放ったりする。
2つ目は、武器に宿らせ、武器強化、そしてその妖精の属性の力を武器に纏わせることができる。
最後に3つ目は、自身に宿らせる方法である。これは、危険が伴う。全身にしたとき妖精に乗っ取られる確率が高くなる。また、半身でもギリギリ数分の使用なのである。
これが妖精の使い方。
孝一は、1つ目の使い方を参考にし、戦う。
「火炎の翼圧。助けられるか?」
『我に問うか。』
「あぁ、でどうだ?」
『主の頼み、心得た。武具に我を纏え、奴の意識だけは戻そうぞ。』
「それで充分だ。」
妖精吸収。
これは、武器に纏わせることである。
『主、我の力は浄化。全てを業火の炎で戻そう。』
「行くぞ、火炎の翼圧。行くぞ、ゲーン!」
「ァァァァァ」
ゲーンはそう叫び続けていた。
「おおおおお」
キンッ
ゲーンと孝一の剣がぶつかり合う。
孝一が一度距離を取る。
「妖精剣技レイグル・トランス」
この技は、炎を纏った剣戟を1回、2回と放つ技。
「ガァァァァァ」
その剣戟をゲーンははじき返す。
だが、妖精剣技は、2回の炎の剣戟で終わりではなかった。
その炎を纏った剣で突撃する。
ゲーンが一瞬遅れる。
孝一は、それを見逃さない。
「喰らえ、おおおおお」
孝一の剣は、ゲーンを貫いた。
「やれ、火炎の翼圧!」
『良かろう、使え我が浄化の炎を』
孝一の剣から炎が流れ、ゲーンの身体を駆け巡る。
「ァァァァァァァァァァ」
「流れろ流れろ流れろぉぉぉ!」
孝一は、残り全ての力を使った。
「あああああ」
「ァァァァァ」
「孝一ぃぃぃ!!!」
緯幻が叫んだ。
「あとは、頼む緯幻…」
その後、孝一の意識は深い眠りについた。
「ギァァァァ」
そのとき、ゲーンの身体が徐々に変わり出した。
鱗が無くなり、左の爪、背中にあった翼、そして牙、最後には特徴的であった右の剣までもが無くなった。
これは、火炎の翼圧の浄化の力だったのだ。
ゲーンも、やっと意識を取り戻した。
「あれ…」
「思い出したか!ゲーン!」
「御影か…、俺は…」
「お前は…」
そのとき、風が吹いた。
それは、先程まで監視室にいたミュイール・イスナ。
その者の魔法である。
「戻ってこれただと…?私は、こんなことを望んではいない。」
「なにを…するつもりだ!」
緯幻が問う。
「なに簡単だ、処分だよ。使えなくなったのはそうなる運命だ。」
「巫山戯るな、イスナぁ!」
緯幻は、力を込め銃を持ち、打つ。
それは、影弾と呼ばれた緯幻の魔法。
だが、その弾丸はイスナに当たる前に撃ち落とされた。
いや、切られたといえば正確だろう。
「私の魔法を知らなかったな君たちは」
イスナは風の魔法を使う。
名を風鎧。
そして、その風を飛ばす風刀。
「私の風は、誰にも見えんし、防ぐことも無駄だ。」
イスナは、右手を高く上げた。
「やめろ、やめろー!」
「私をがっかりさせたゲーン・エルド。今兄の元へと行かせてやる。」
「そうか…、兄さんはもう…」
「死ね」
風刀によりゲーンの首ははねられた。
「ゲーン…!、イスナお前!」
「さて、最後は、君たちの記憶だな。面倒だ、私の好きなように変えようか」
「なに?!」
イスナは、風魔法と記憶改ざん魔法と転移魔法を使う。
「君たちの最後の記憶は、ギーン、ゲーンに危なかったが勝ったというのにしよう」
「巫山戯るな!」
「口答えはしても変わらない」
そして、緯幻は、記憶を無理矢理変えられた。
緯幻は、その時意識までもそこで失った。
「彼もか…」
イスナは孝一を、見てそう言った。
そして、孝一も変えられた。
仕事を終えたイスナは、部下にゲーン、ギーンの始末を頼み。
緯幻、孝一を別室へと運んだ。
孝一たちの死闘は終わりを告げた。
その頃、別の会場では…
「ふぅ〜、疲れた。これで俺らもガルドか。」
黒髪の少年はそう言った。
肩には、武器の槍と思われるものを持っていた。
「そうね、このあとどうなるのかしら」
肩まである青髪の少女はそう言い、少年の言葉に賛同した。
ガルドの子は出揃った。
だが、ガルドの子たちはこの後に起こることは分かりもしなかった。




