フォンダンショコラ
紅桜です。
この話は私が主になって書きました。
僕は多分世間一般でいう冷たい、とか冷めた人間だと思う。
学校を卒業するのに、寂しいなんて思ったりしないし、告白をことわるのに罪悪感なんてない。
でも、まぁ、そんな僕でも初恋の相手に恋人ができたとなれば、まぁ、悲しくもあるわけで、学校帰りの電車の中で 泣いていてもおかしくはないと思うんだ。
「……っ」
「ね、君。ここ座りなよ。」
ふと正面から声をかけられて顔をあげてみると、目の前のイケメンさんが微笑んで僕を見てた。
「あ、いえっ……。そ、んな、あのっ、ぼくは、大丈夫です。」
「いいよいいよ、ほら、座りな。泣いてる女の子に優しくするのは当たり前でしょ?」
……僕は女の子じゃないんだけど……。立ち上がったイケメンさんに押されて僕は席に座った。
ふわっ
頭の上に何かが置かれたような感じがして、目線をあげてみると、イケメンさんが僕の頭を撫でていた。一定のリズムでそうっと撫でれ続けて、少しずつ落ち着いていく。涙もいつの間にか止まっていた。
「あ、あの、ありがとうございました」
僕がそういうとイケメンさんはまた微笑んで、
「今から時間、ある?」
そう聞いた。そして、僕はそれに頷いた。
「ここ……」
「ん?ケーキ屋さんだよ。ほら、入って入って」
「あ、僕お金持ってなーー」
「フォンダンショコラ2つ、下さい」
「畏まりました。お席までお持ち致しますので、お座りになってお待ち下さい」
僕はイケメンさんに引っ張られて席についた。多分1人で2つは食べないだろうから、1つは僕の分だろう。お金持ってないのに……
「あのっ……」
「ん?フォンダンショコラ嫌いだった?」
「あ、いえ、フォンダンショコラ、好きです。っていやそうじゃなくて、僕、今、お金持ってないです。」
「大丈夫だよ、2つとも私が払うから。っていうか、連れてきたの私なのに君に払わせるわけないでしょ?」
「っでも、そんな申し訳ないです……。電車で迷惑かけてしまったのも僕なのに」
そういった僕にイケメンさんは少し考えるそぶりをすると、クスッと笑って
「ま、ナンパされたとでも思ってよ。ね?」
「ナ、ナンパって……」
「それでも、ご不満なら話し相手にでもなってくれると嬉しいな?いい?」
「もっもちろんです。」
フォンダンショコラがくるまでそんなに時間はなかったけど、イケメンさんの弟の話をした。僕と同じ高校1年生だという。あ、あとイケメンさんは玲さん、というらしい。
フォンダンショコラは美味しかったし玲さんの話を聞いているのは楽しくて、僕は失恋したことなんてすっかり忘れてしまっていた。別れ際、メールアドレスを交換して、可愛い子と過ごせて楽しかったよ」と微笑んだ玲さんにそういえば、と思って言った。
「僕、女の子じゃないですよ」
てっきり、がっかりされちゃうと思っていたのだが、玲さんは
「ん、知ってる」
と随分あっさりとした返事をくれた。……というか知ってたのか。じゃあ、なんで、
「なんで、僕に優しくしてくれたんですか?男、なのに」
「可愛かったから、だよ」
またまた、随分とあっさりした答えに僕は顔が熱くなるのを感じた。っていうか、え?玲さん、男だよ?な、え?
クスクス笑って去っていった玲さんを頭の中が混乱しまくっている僕は呆然とみていた。
玲さんが女性だったとしったのはそれから、しばらくしてからだった。