表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

僕は泣きました

作者:




 僕は泣きました。


 とても幸せな、とある女の子の物語。時折訪れる苦難にも、周りの人々に支えられながら乗り越えていく、そんな姿が眩しくて 羨ましくて 見ているだけで幸せで そう思うことがまた苦しくて。


 ただ、涙が溢れました。



 僕は泣きました。


 かつて犯した消えない罪を今更のように後悔し、懺悔をする相手はもういなくて。話せる人間もいない。

 話すことは逃げだとわかっている でも、少しでも救いを欲している自分にヘドが出る。同時にその機会が与えられないであろうことがつらくて、でも申し訳なくて 混ざりあった感情が涙を溢れさせました。



 僕は泣きました。


 自分が他人と違うことに恐ろしさと悲しみと恥ずかしさを感じて、それを隠そうと必死に否定することに疲れて。知り合い達のこころと呼ばれる不確かなものが全然わからなくて 心友と言ってくれたあの人のこころがわからないことに不安と心細さが膨らんで。


 どうすればいいのかわからない悔しさと、形の見えない繋がりへの不安に、涙は止まることを忘れてしまったようです。



 僕は泣いています。


 生きることを止めないために まだ他人と同じくこころや表情を失いたくないから 沢山の理由をつけながら涙が流れ落ちるのをどうでも良いことと自分に言い聞かせて、そうしてまた涙を流すのです。



 僕は泣いていました。


 頭がぼんやりするくらいに沢山たくさん涙を流しました。


 そうして気付いたのです。




 僕は泣いていました。


 その涙は悲しみや苦しみ、ましてや喜びなんかでもなく ただ、涙を流すという『行為』に成り下がっていたのです。



 僕は泣けません。


 ただ流すだけの(それ)には、『泣く』という意味は与えられないのです。




 僕は望みました。


 ただの行為ではなく、人として泣くという意味のある行為をしたいと 強く願いました。



 でも、僕は知っているのです。


 今の僕に、その願いが叶えられないことを わかってしまっているのです。



 僕は

 僕には 今 希望なんてありません。


 それでも暇潰しでも八つ当たりでも課題の手伝いのためにでも、そんなことでも必要とされることで それを生きる理由にして、卑怯に僕は生きています。



 死にたいと強く思うとき、僕は全てを遠くに追いやります。


 感情も、腕の力も足の力も視力も聴力も 全て他人のものと思い込ませるのです。


 遠くで誰かが騒いでいても、大した衝撃は僕には及ばないでしょう?

 死にたいと騒ぐ別の僕を、僕は無気力に見つめるのです。


 でなければ、気持ちや衝動に負けてしまうかもしれないという、底の見えない不安にまた消えたいと願ってしまうのです。





 僕はあなたに問いたい。




 あなたにとって僕はなんですか?



 僕は、人としてこの世に在ってもいいのでしょうか 僕は、ぼくは 幸せになることを望んでも許されますか?


 ぼくにとっての幸せは、なんなのでしょう?



 ぼくは 何をすればいいのですか?


 ぼくのことを、理解した上で 受け入れてくれる人など ぼくの罪や過ち全てを受け入れてくれる人など、いるわけない ですよね



 あなたに問います。


 人の価値は、なにを基準に決められているのですか?






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  詩のような体裁が、上手に読み手のこころを絡み取っていますね。読んでいるうちに、なんだか胸に込みあがってくるものがありました。こういう作品に出会えるのは滅多にないことで、今は不思議な読後感…
[良い点]  自分の行為と感情の入れ違いが、出ていて自分もどう行動しているか、考えさせられました。 [一言]  今日源石です。  上記の通りですね。押しが強くも弱くないところも入り込みやすかったです。…
2012/04/27 21:45 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ