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それぞれの澪

澪という存在。

みんな目線から紐解きます。

いつものようにみんなで待ち合わせる。

私もムギを連れていつものように待ち合わせ場所に向かう。特に何をやるでもない。ただ会って話す。その時に朔が何か言い出してその日の予定が急遽決まる。何もない日だって楽しく過ごせるからこの5人でいたら飽きない。


いつもの場所に向かう途中、街路樹も色付いている。紅葉の季節か。少し肌寒く感じてくるこの季節。紅葉のように色付くのも綺麗だし秋の味覚も素敵。


「(今日も穏やかな日だね。蓮、いつもより楽しそう)」

「ふふ、そうかな?いつもと変わらないんだけどね」

「(うん、いつもより周囲を見回してるよね。僕はあまり目はよくないけど蓮が嬉しいんだなってくらいは分かるよ。そして蓮が嬉しいと僕も嬉しい)」

「ね。私もムギが嬉しいなら嬉しいよ。ムギみたいな彼氏が居たら、私はより幸せだろうな」

「(あの2人は?)」


何気なくほぼ反射的にムギはそう返した。蓮は足を止めてムギの頭を固定して笑顔で


「ムギ?あの2人がそんなイケメンに映る?」


と詰め寄る。

「(………。)」

「何考えてるか分かんないけどその沈黙が答えじゃない?尻尾まで止まっちゃってるし笑」

「(いいところを見つけようと思ったんだけどね。)」

「いいところなかった笑」

「(ほら、蓮と2人は全力でぶつかりすぎててお互いを思いやるというか、信頼関係はあるんだろうけど優しい間柄って感じじゃないよね?)」

「うん?」

「(眼鏡の彼は蓮が笑うよう紙広げて、すごく悪いことしてる笑顔だったんでしょ?あの時の蓮、呼吸できてなくてどこからか泣いてたし。あのままもう1分くらいされてたら呼吸不全で失神して漏らして救急車だっただろうね。あの日から1週間お腹が筋肉痛でおかしいって言ってたし。遊園地の時は蓮が逃げないようにおもちゃの手錠を持ってきてたって言ってたし。大事な女の子ってよりはどうやったら面白いかで考えてる、着飾ったりしない男友達のような接し方のように思うんだ。相手も蓮に魅力は感じてるだろうけど『異性としてはまったく見られてない』だろうね。もう1人の元気な彼とは本当にお互い全力だよね。大事に思ってるっていうのとはちょっと違う。お互い親の仇かな?くらい無茶してるのにお互いそれで成り立ってる。仮に彼が『蓮が嬉しいなら俺も嬉しい』って言ったら……言ったら……、ごめん。言わないね、うん。あれ?蓮?)」

「うん、急に喋るね」

「(すごく穏やかな日だもんね。ついお喋りもしたくなるかな)」

「うん、私もムギの話したくなるところ押しちゃったからかな。でもちょっと傷つくし、そろそろ止まろうか」

「(まだいつもの場所まではあるよね。元気な彼はさ、誕生日の日の料理をよりにもよってあの2人に任せてたよね。蓮に頼んだら少なくとも美味しいご飯が食べれたのにさ!ちょっとそこが納得いかなくて、蓮はなんであの時何も言わなかったの?)」

「あの2人を指名した恐ろしさを肌で知ってもらうにはとてもいい機会でしょ?私が出ていったらいけないと」

「(その分僕は不安と恐怖の時間だったよ。)」

「それはごめんね」

「(蓮もお互いが『愛おしい関係を築こうとしてない』から恋仲になっていくのは難しいよね。もともと恋仲になろうと思ってないしこれからも思ってないんだろうけど、蓮は可愛いのにもったいないよね。)」

「いきなり口説いてくるのなんなの?笑。ムギ、そういえば今日は外で食べるって言ってたよね?」

「(…へ?)」


いつもの集合場所に着いた。灯と澪が先に到着していて朔と透はまだ来ていない。


……あれ?


いつも澪を見つけたら隣に行くムギが澪の隣に行かない。私の足元にずっといる。

「どうしたの?」

「(匂いがなんかぼやけてる感じがする。薄い膜を貼っているような感じ。澪はそこにいるよね?)」

「うん。」


最初は気にしなかった。秋は植物が色づく季節で、いろんな匂いが混じる。そういうものかと思っていた。

さらについさっき晩御飯抜きを言い渡されたところ。穏やかな時の嗅覚とは違っているのかもしれない。うん、そういうことにしておこう。


でもムギはこう言った。「(蓮や灯ちゃんは変わらないのに、変だなぁ……)」


澪だけ。


今日もムギの声が少し聞き取りづらい時があった気がする。母音や子音がたまに欠けるけど前後の文脈で補えるからなんか変だった気がする程度の違和感。話してる分には気づかないくらい微かなものだった。


ムギは澪の存在を確かめるように澪の体に体を押し当てたり匂いをかいだりしている。そしてやっといつもみたいに腰を下ろして休み始めた。


◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇



それから少し意識的にムギと話してみた。

「(oうしたの?aんかuずかiい顔してuよ?)」

意識してなかったらなんでもない、普通に「どうしたの?なんか難しい顔してるよ?」と言っている。分かる。意識を集中するからこそ分かる程度の違和感だった。


もしかしたらゲーム後半に入って能力が弱まっているのかもしれない、と思った。

このまま最終日までちょっとずつムギと話せる量が減っていってゲーム最終日を迎えるんだろうか?こんなイケメンなのに。はあ、ムギが人間だったら胸に飛び込んでいきたい。犬だから毎日のようにワシャワシャできるんだけどね。


いつもの待ち合わせ場所、今日は澪が最初についたみたい。私が2番。灯が居ないのが珍しい。

「あれ?今日は1人?」

「うん、いつもは待ち合わせしてなくても偶然出会うんだけどね。今日はそのままここまで1人だった」

「そうなんだ」


足元に視線を下ろす。私の足元にムギがいる。しゃがみ込んで小声で聞いてみた。

「今日は澪1人だけど行かないの?」

「(澪もう着いてる?)」

え?

「目の前にいるよ?私が話してたでしょ?」

「(うん、誰かと話してるのは分かったけど、誰?匂いがぼやけてよくわからなくて)」


あれ?前も同じことを言っていた。匂いがぼやけてよく分からない。薄い膜を張ったような感じでわかりにくい。

私も意識してわかったことはムギの言うことがよく分からなくなっているってこと。澪の匂いがぼやけているのは……なぜ?


「今日はムギは蓮の方がいいのかな?」

澪は笑っている。

「そうみたい汗」


そうは言うけどムギの反応が明らかにいつもより薄い。まるで存在自体を認識できていないみたいだった。

「ムギはなんか言ってる?」

「え?」


これは何と答えたらいいんだろう。そのまま聞いたことを答えたらいいのかな?だとしたら、能力が少しずつ弱まってるから仕方ないのかもって納得できるのかな?匂いがぼやけてるってことは、ムギの反応が目に見えて弱くなってるってことは、能力が弱まっているから。


あれ……?


能力が弱まって澪の存在が薄くなってる?なんで?


ドクンッ


澪を見る。

不思議そうな顔で首を傾げてこちらを見ている。いつもの見慣れている澪だ。

能力で存在が弱まるということは誰かが作り出した存在であるということ。誰が?


ドクンドクンドクンッ


鼓動が早くなっていくのを感じる。

それが可能な『可能性』があるのは1人しかいない。

「蓮?」

「ひゃい!?」

「うわ!そんな驚く!?ムギはなんか言ってる?」

「あ……なんか匂いがぼやけてる感じがするんだって。何でかは分からないんだけど」

「匂いがぼやけてる?」


澪は腕や脇の辺りを嗅ぎながら

「自分じゃよく分からないや」

と言って笑っている。


私の仮説が正しいとしたら、目の前の普通に動いてる澪は……誰?いや、澪は澪なんだろうけど、もしそうだとしたら。灯の能力って何だったっけ!?


ドクンドクンドクンドクンドクンドクン


頭や胸から血の気が引いていくのを感じる。見えているのは澪のはずなのに澪で合っているんだろうか?仮説がもし正しいとしたら今話しているのは?

ガクガクガクガク。

足が笑う。表情がこわばる。何で今日は灯と一緒じゃないの?灯に何かあったの?


「ねえ、蓮?」

「んんん!?」

「変な声出してどうしたの?」

「いいや、にぁんd……何でもないよ?」

「今日の蓮、何か変だよ?どうしたの?」


澪が近づいてくる。距離を詰めようとする分後退りしようとするが体が思ったように動かない。少し後退りするが澪がもう目の前にいる。


「蓮?何かあったの?」


澪が私の両肩を掴んで見下ろす。目が合った。春先に澪と灯を射抜いた鋭い眼光だった。澪の目から目を離せない。両膝も恐怖でガクガクしているのに伸びすぎてロックしているようにまったく動かない。


「ムギ最近おかしいし、今日は蓮も変。私に何か隠してる?」


違う。隠してるわけじゃない。疑心があって確信がないだけ。疑心でも怖い、確信になってしまったら、考えたくもない。今日は穏やかな日なのに。


首を左右に動かそうとするが澪の目から目を離せない。体がガクガク震えている。


「わ……わた……。私も、最近ムギの声が聞き取りづらくなって……何でかは分からないけど……」


やっと言えた言葉。蓮の両肩を拘束していた澪の手が緩まる。


「ムギの声聞き取りにくくなってる?そんなこともあるんだね。秋だからかな?」


澪がムギの方を向きながら言う。

あれ?反応はいつもの澪?

じゃあさっきの目は?


「蓮?」

ビクッ!

あの目だった。

「隠しごと、してないよね?」


動けない。


「してないよね?嘘や隠し事。」

「………うん。ごめん。」

「何で謝ってんの?」


「あれ!?今日は澪の方が早かった?」


灯の声が聞こえてきた。澪の視線が灯の方を向く。私はロックしていた膝が砕けて力なく地面にへたり込んだ。ムギが体を支えてくれた。手が震えている。


澪、あなたは……。


◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇

「透、ちょっと聴きたいんだけど」

「うん?」

「澪のこと。」

「ほう」

「透の方で何か予知してること、ない?」

「いつか分からなかったけど、蓮がそのこと言いに来た。くらいかな?」

「そう」

「で?何を聴きたい?」

「いや、私がおかしいのかな?確信が持てなくて。誰かに聞いてほしい、なんかそんな感じだったの」

「うむ。それで大体合ってると思うけど。」

「まだ何も言ってないよ?」

「『ムギの様子が変。澪に反応しない。澪の存在自体が消えかかっているんじゃないか?なぜ?澪は誰かの能力で生かされている可能性。確信が持てないから話を聞いてほしい』違う?」

「話が早い。やっぱ予知してたんじゃん!」

「ついさっきね」

「で、私はそう思ってるんだけど、透はどう思う?」

「まず、蓮とは考え方がちょっと違うけど行き着いた先は一緒。澪は誰かの能力で生かされている。可能性があるのは灯だけどお前と一緒で俺も確信が持てない。」

「いつから?」

「夏の終わりごろに知った。大晦日にみんなの前で澪は消えていく。」

「そんな前から知ってたんだ」

「知れば対策が打てると思ってた。今までも対策してこれたからな。こればかりは対策のしょうがない。そしてこちらも確証はない。仮説として、灯の能力は『去年亡くなった私の大事な人に会いたい』だと思う。これなら爺さんと澪とが出てきてもおかしくないし、2人に効いているというので能力が弱まるのが早いっていうのもこじつけられる。」

「『おじいさんに会いたい』って言ってたと思うけど?」

「言うことと想うことは別だよ。『おじいさんに会いたい。』と願ったとしていつ亡くなったんだっけ?」

「去年の冬」

「灯が去年の冬をイメージして『大事な人』にもう一度会いたいって願ったとする。」

「うん」

「『大事な人』って言った時に灯の頭に澪の顔が浮かばないと思うか?」

「…無理ね」

「ゲーム自体がどこまで性能がいいのかは分からない。けど『去年(の冬)亡くなった私の大事なおじいちゃんにもう一度会いたい!』と願ったとしよう。灯の言葉ではおじいさんだけかもしれないが、ゲームが灯の思うように捉えたかは別の話。困ったことに灯が願った言葉通りに能力が適応されたのかから分からないし、そもそもどう願ったのかが分からない」

「じゃあ、」

「灯になんて聞く?聴き方失敗したら殺されかねんぞ?」

「普通になんて願ったんだっけ?でよくない?」

「『おじいちゃんに会いたい』だよ?って返ってきたら?それ以上のことは聞けないぞ?」

「そっか」

「と言っても、ゲーム自体のバグの可能性すらある。さっきのは『可能性』に過ぎんから。能力の歪みもバグの可能性あるからそっちだといいなとすがってる感じかな」

「そうなんだ」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ゲームが始まって一番最初の夜。夢を見た。


みんなの前で澪が何かを言っている。神妙な面持ちで、みんなが耳を傾けていた。内容は聞き取れなかった。何の夢だ? そう思って忘れた。


そこから春の暖かな日にみんな待ち合わせもしてないのに集まって話していたり、蓮の家が火事になりかけたり、透が紙を広げて蓮が笑いこけて死にかけていたり、晩御飯が炒飯だったり特筆することなく日常が入れ替わり立ち替わり映し出された。

なぜかハッキリと覚えているものは必ず現実で起こった。見たものは現実に起こる。まさに正夢だ!


秋になって、同じような夢が続くようになった。


澪が前に立っていてみんなが聴いている。何を言っているんだろう? 興味本位でメモに残してみることにした。


『朔』『ありがとう』『大好きだよ』


そんなことわざわざみんなの前で言うなよ、照れるじゃねぇか。


翌日も似たような夢を見た。状況はほぼ同じ。澪が前に立ってみんなが聴いている。


『みんな、ありがとう』


感謝を聴く機会が多くなってきた。そんな感謝されても、悪い気はしねえけどさ。なんか痒くなってくるよな。


『料理』『大丈夫だから!』


大丈夫じゃなかったぞ!


夢と会話する機会が増えてきた。


今日も同じ夢。同じ環境で澪の言葉だけちょっと違う。


『消える』『怖い』


おいおい、今日のはなんか穏やかじゃねぇな。なんだこの夢? そういや透も何か未来予知してるかもしんねぇな。ちょっと聞いてみるか。


「透は澪のことで何か最近予知した?」

「は?なんで?」


そりゃそうか。いきなりそんな言われてもそういう反応になるよな。


「いや、最近澪の夢を見る機会が多くてな」

「ふーん、どんな夢?」

「お?流さないで聞いてくるとは!透も気になってーー」

「どんな夢?」

「いや、澪がみんなの前に立って何か言ってんだよ。表情とかよく分からんかったけど『朔』『大好きだよ』って」

「随分おめでたい夢だな」


ふーっとため息混じりで言う。


「ただ今日の朝は『消える』『怖い』って聴こえてきてな」


透の動きが止まる。そしてまた大きなため息が漏れる。


「そっか、で?」

「透の方は何か予知したことあるかなって思ってよ」

「あるよ」

「やっぱり透も予知していたか。しかし透に澪が俺に告白してるところ先に知られるのはなんだか痒く……」

「お前はおめでたいな」

「ん?ひがんでる?」

「それでいいよ、別に。」

「透はどんなふうに予知したんだ?それが聴きたくてな」

「お前に言ってもな……」

「大丈夫だって!」

「こっちは考えたくなかったんだ」

「勿体ぶるなよ」

「澪は消えるぞ、俺たちの目の前で」

「は?」

「言葉通りだ。澪は消えるぞ。俺たちの目の前で。」

「なんで?」

「知るかよ!馬鹿!ただ考えたくないが、澪はランダムで選ばれたNPCじゃない可能性がある。」

「は?」

「ランダムで選ばれた奴は別にいて、澪は別の存在ってことだ」

「どういうことだ?」

「お前は澪の能力が何か知ってるか?」

「いや?」

「俺も知らん。そして最初の説明にあっただろ?『能力は重複しない』って」

「はあ……」

「だから澪は誰かの能力で作り出された可能性があるってことだ」

「ふーん?誰よ、俺とお前は違うだろ?蓮も犬と話せるって言ってたし」

「そこまで言って惚けてるのはわざとか?」

「いや、大真面目だが?」

「やっぱお前はおめでたいな。灯しかいないだろうが」

「あいつ?あいつ田舎の爺さんとこ行っただけじゃん」

「忘れたのか?去年の冬に亡くなってんだよ、あいつの爺さん。」

「うん、だから生き返ってお別れを言いに行ったんだろ?それがなによ?」

「あいつの能力で生き返ったからな。」

「だよな」

「でも生き返ったのって爺さんだけか?」

「だけだろ?」

「そうだったら俺はもっと今を穏やかに生きてるよ!」

「何が言いたい?」

「あくまで仮説だがな、灯は『おじいさんにもう一度会いたい』と願ったのか?俺は違うと思う。たぶん、『去年亡くなった大切な人にもう一度会いたい』みたいに願ったんじゃないか」

「と言うと?」

「お前、ランダムで選んでいいよって言われた時の灯を覚えてるか?」

「めちゃくちゃ澪を推してたよな。だから澪が選ばれてあんなに泣いて喜んだんだろ?」

「最初に戻るけどな、あの時すでに灯の能力が適応されていたとしたら?」

「うん?」

「『灯にとって大切で去年亡くなった人』がすでに復活していたとしたら、あの段階で目の前に現れても不思議じゃないだろ?」

「んー、それどう確かめるの?」

「知らねーよ。だからずっと悩んでんだろうが。これも最初の質問だがな、澪の能力、お前知らないだろ?」

「うん、知らね」

「『能力は重複しない』んだよ。灯の能力で復活してるなら、澪は当然能力を持つことができない」

「何か能力持ってたら?」

「俺の仮説が外れたことになる。俺はそれを願っていたよ」

「過去形?」

「あぁ……」

「なんで?」


プツンッ


「お前が見たからだろッ!」

「いやいや、見たって何をさ。澪が俺に告白するところか?」

「お前はそれ分かって言ってんのか馬鹿野郎!断片的に繋いだ作文ゲームで浸ってんじゃねえ!最後に見たって言う『消える』『怖い』これがすべてだ!」

「そんな声を荒げるなって。俺が解決する夢を見たらいいんだろ?」

「見れるのか?見れねえよ!」

「なんでそう言い切れるんだ?」

「お前が見たからだろうが!夢を!俺の予知は行動で変えることがある程度できたけどな、お前が見たものは確実に起こるだろうが!」


………。


「え?じゃあマジなやつ?」

「ああ。やっと事の重要性がわかったか。俺は消える未来を夏に知った。澪の能力何かないか探ってみようともした。だが成果はなし。灯に聞いても根拠もなく神経を逆撫でするだけで終わるから聞けなかった。消える可能性を能力以外から、ゲームのバグという事で納得しようとしてた。」


………。


「未来が分かっていても変えられないことってあるんだな」


透が天を仰ぐ。


「俺らは何もできないのか?」

「現状できることはないな。どうやっても消える未来を救うことができない。そして灯の能力だと言うことは現実の澪も……」

「いや、何かはできるだろ!」

「何ができる?」

「それはお前が考えろよ。俺も考えるけどお前の方が現実的だろ?」

「結局状況が何も変わらねぇじゃねぇか!」


ふー。透がため息をつく。


「澪が消えることを止めることは不可能だということが分かってしまった。正直分かりたくなかった」

「まさかメモからこんなこと聴くとは思わなかった」

「まったくだーー」

「透?」

「シッ!」


「お前ゲーム入る前に『体験をメモして自慢する』とか言ってたよな?」

「言ったような言ってないような」

「いいか!現実世界へ直接情報を持って行けるのはお前だけだ!これから夢見た内容、耳に残ったこと全部メモに残せ!」

「それって夢見たら全部書けってことか?」

「そう言ってる!澪の言葉を現実に持っていけ!それができるのはお前だけだ!」

「持っていってどうする?」

「分からん!分からんが、澪の体はもう救えない可能性がある。だからせめて言葉を持って澪の『心』を救うんだよ!それができるのが朔!お前だけなんだ!」

「おぉ!?おおおおおおおおおおお!!!」


◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇


「蓮、ちょっといいか?」

「あんたからって珍しいね、どしたの?」

「朔が夢を見た。」

「うん?」

「大晦日に澪が消えることは確定した。」

「確定?じゃあ透の仮説は……」

「当たってた可能性が高いな。」

「ということは……」

「今、あのバカに夢見たこと全部メモさせてる。澪の言葉を現実に持っていくぞ。」

「澪……。灯はこのこと知ってるの?」

「いや、言いに行ってない」

「言わないと、ダメかな?」

「俺は言った方がいいと思う。」

「言わなかったら灯を守れる」

「本当にそうか?このままゲームが終わったら灯はどうすると思う?」

「今までと変わらず毎日病院にお見舞いに」

「目を覚まさないのに?」

「………。」

「蓮、灯には残酷だが、これからの灯の未来を守るには言うべき。お互い傷つかない保身を選ぶなら隠すべき。お前は、どっちだ?」

読んでいただきありがとうございます。

次回、「対立」もよければご覧ください

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