輝かしい一歩
西暦2045年。人類の歴史が塗り替えられる瞬間がやってきた。
全地球が見守る中、特使の佐藤は、銀河連邦の使節団が待つ白亜の宇宙ステーションへと降り立った。
「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが……」
往年の名セリフをなぞり、佐藤は誇らしげに胸を張った。目の前には、光り輝く半透明の生命体たちが並んでいる。ついに、他者との邂逅。知性の共鳴。平和への扉。
だが、握手を交わそうと手を伸ばした瞬間だった。
突発的拘束
「そこまでだ、地球人。動くな!」
突如、空間が歪み、機械的なアームが佐藤の両腕を羽交い締めに封じた。
「えっ……? な、何事ですか!?」
佐藤は硬直した。驚きと困惑が、全身の毛穴から冷や汗となって噴き出す。
背後から現れたのは、銀河警察の腕章を巻いた多脚型の宇宙人だった。
「佐藤特使! 何か手違いでは……!?」
後方の随行員たちが焦り、叫ぶ。しかし、警官の声は冷徹に響いた。
「手違いではない。我々は銀河法典第1024条に基づき、現時刻をもって地球人類を現行犯逮捕する」
告げられた屈辱的な容疑
佐藤の心臓は早鐘を打っていた。宣戦布告か? それとも、大気汚染の責任を問われているのか?
彼は震える声で尋ねた。
「容疑を……容疑を教えてくれ。我々が何をしたというんだ」
警官は無機質なセンサーを佐藤に向け、吐き捨てるように言った。
「容疑は『広域のぞき』、および『無断撮影』だ」
「は……?」
被害者の告白
その時、法廷のようなホログラムが展開され、一人の「少女」が映し出された。
いや、それは少女の形を模してはいるが、身体からは凄まじい熱量と光を放っている。彼女は泣いていた。
「……ひどいわ。ずっと、ずっと見てたんでしょ」
彼女は、地球から4光年ほど離れた場所に位置する恒星の意識体だった。
「あなたがた地球人は、何百年も前から高性能な望遠鏡を私に向けて……。私の熱放射も、表面のフレアも、黒点の位置まで……。恥ずかしいところを全部、記録して、論文にして、ネットに放流して!」
「いや、それは天体観測であって……」
「言い訳は見苦しいわ! 私が着替えている(超新星爆発の予兆を見せている)時だって、世界中の天文学者が『美しい』なんて言いながらニヤニヤ眺めて……。挙句の果てには、私のプライベートなスペクトル分析までして……うっ、ううっ」
彼女は激しく明滅し、光の涙を流した。
「全銀河の女性恒星たちが怯えているわ。いつ地球人に『観測』されるかって。あんたたち、ただの変態集団じゃない!」
静まり返る会合の場。
佐藤は、全地球が見守るカメラの前で、顔を真っ赤にしてうなだれるしかなかった。
人類の「偉大なる一歩」は、銀河系最大の不審者リストへの登録という形で、その歴史を刻むことになった。




