表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第三話「鳴鳳大学三面拳」

三月末の夜だった。

白石城内の公園で、鳴鳳大学生たちが、城のライトアップの反射光を浴びながら麻雀を打っていた。

今年の春は、いつもより早く桜が咲いた。

だから花見の客もそれなりにいた。

麻雀を打っているメンツの三人が、目つきとガラが悪かったので、花見客からは空気として扱われた。

「夜桜を麻雀を打ちながら楽しんでいる。俺たちはいったい何をやっているんだろう・・・」恭次郎が静かに言った。

恭次郎が感傷に浸るのはいつものことなので、メンツは聞き流していた。

ピシッ、タン。

ピシッ、タン。

麻雀マットが音を適当に吸収してくれた。


麻雀中の一輝に、小沢からラインが届いた。

「『一人、入部決定!』だそうです」一輝が告げると、メンツが歓喜した。

「誰? 女の子?」

「どんな奴?」

「うほー」

「どれどれ・・・男だな・・・」と言って、ライン内容を確認した。

「馬鹿だな・・・。お前らの仲間入りだ! わっはっは」一輝が笑った。

「何が可笑しいど?」吉太郎が聞いた。

「すいません、先輩。コイツは可能性のある馬鹿です」

「どんな奴だど?」

「忍の胸だと騙されて、肉まんを触って興奮していたそうです。豪快に鼻血を出しています。いつもの作戦です」

「どっわっはっは!」

「ばかだどー」

「おもしれー。鼻血を出すのは天才だー」

「これで、三面拳も四天王に昇格ですね。パワーアップです!」一輝が言った。

「俺も三面拳だか?」吉太郎が聞いた。

「あなたは、リーダーです。1年生に時の単位が4しか取れていない。これは伝説です!」

「そっから頑張ったど! 今年は卒論だけだど」

「みんなで、先輩の単位の取得をサポートしまくりましたから」

「随分、奢ったど」

「正当な報酬です」

一輝は吉太郎のレポート作成の補助をした。資料を集め、使えるデータを揃え「あとはまとめるだけ」の状態を幾つも作り上げた。

テスト対策の勉強の補助もした。何人もの先輩方を訪ね、試験範囲を予想して、対策問題を作り上げた。吉太郎の読めない字だらけのノートを綺麗に書き直したりもした。一輝は吉太郎の単位取得のために働いた。吉太郎が卒業出来るのは、ほとんど一輝の手柄だった。一方で、吉太郎の麻雀の打ち内筋は、信じられぬほど放銃率が低かった。奇跡の分析力の持ち主だった。しかし、国語科の教員志望だった。

「お前には、世話になったど」

「お礼はだいぶ頂きました。ご馳走様です」


「俺も三面拳か?」

「キミは、特攻隊長だ」恭次郎は、ギャンブル狂いだった。パチンコ・麻雀・競馬が好きで、バイト代のほとんどをつぎ込んでいたので、一輝が麻雀一本に絞らせた。一輝が恭次郎に対して、絶望的な勝ち方を何度もした。そのお陰で、恭次郎の負けず嫌いが麻雀に集中するようになった。一輝は、恭次郎が快楽的な勝ち方を出来るように卓内のゲームを何度か操作していた。『圧倒的な独り勝ち』を何度も味わわせることによって、『手の付けられない攻撃的麻雀モンスター』を育てあげてしまった。数学科教員志望だった。


「師匠、私もですか?」

「キミは、荒らし屋だ」龍之介は、的の絞れない不思議な和了を繰り返した。対子系の和了が多く、打ち筋の説明が難しい和了ばかりをした。卓内の力関係が乱れ、「荒れ場」になることが多かった。不思議な「他人を狂わすリズム」を持っていた。逆転トップを取ることが多かった。社会科教員志望だった。


「小沢が加われば『四天王』なのにな」と恭次郎が残念がった。

「アイツは理屈が多すぎるど」吉太郎が言った。

「だいたい、『索子が三枚続いた次の自摸牌の確率』とか云々言っている時点でメンドクサイですよ」龍之介が言った。

「和了牌で字牌が二回続いたら、次は萬子が和了牌になるらしい」一輝が言った。

「典型的な『流れオタク』だ。小沢(おたく)流麗だけに」恭次郎が言った。

「それ湯桶(ゆとう)読みだど」吉太郎が言った。


「しかし、忍さんの狙いは分からないです。なんでこのサークルにいるのでしょう?」龍之介が言った。

「一輝狙いじゃねーの?」恭次郎が言った。

「それは違うよ」一輝が否定した。

「ただ、麻雀が好きなだけとか?」龍之介が言った。

「きっと、男に囲まれてるのが好きなだけだど」吉太郎が言った。

「男に囲まれてチヤホヤされるのが好きなだけだ。自分が本命だと思わせて、みなに優しくさせる作戦だど。入れ込んではダメだど。女の(さが)を責めてもダメだど」

「その線が濃いですね。さすが先輩です。的確な分析です」一輝が言った。

「兄貴よ~。何故そんなに的確な分析ができるのに、単位が取れなかったんだ?」

「メンド臭かったど」

「それでは、ダメですな」龍之介が言った。

「新入りが、何か新しい風を吹かせてくれるかもな」恭次郎が言った。


「しかし、『三面拳』ってどうにかなんねぇだか? アレだべ? あのマンガだべ?」吉太郎が言った。

「そうですね。三銃士は古いし、三バカトリオは、先輩に対して失礼です。三羽ガラスってのもいまいちです。取り敢えず、三面拳で行きましょう。新入りが加われば変わるかも知れません」

「ソイツは強いのかな?」恭次郎が疑問に思った。

「強ければ居座るし、弱ければ逃げていくさ。弱い奴は必要ない」一輝は言い放った。

「我々の目標は、『日本一』です」龍之介が言った。


世が明けると同時に、一輝が「国士無双」を和了した。

夜明けとともに、次の城「上山城」(山形県)に移動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ