第1章『初心者カモネギ編』第一話「俺の名は、引来剛志!」
第一話「俺の名は、引来剛志!」
大学のサークル勧誘で、俺の人生は変わった。
正確に言えば、忍の勧誘で俺の人生は変わった。
入学式が終わり体育館を出て、いくつかのサークルを見学しに行った。
必死に勉強して入った第一志望の鳴鳳大学だった。
「(え? 偏差値? 何それ。人生を数値で測るのは止めよう)」
テニスもいいなぁ、サッカーでもいい。文化系は面白ければ掛け持ちしよう。
先輩方は、あちこちで、あの手この手でサークル勧誘をしていた。
女子大生は、悉く魅力的に見えた。
チラチラよそ見しながら歩いていると、突然後ろから声をかけられた。
「パイを触ってみませんか?」
巨乳でスカートの丈が短めの女子だった。香水の匂いが芳しかった。
「何ですか? パイって? (パイっておっぱいだよな!)」平静を装った。
「ただ今、サークルのメンバーを募集しているんです。体験してみませんか?」犬歯がやたらと色っぽかった。
「ちょっとだけ、なら時間が、あるので挑戦、してみます」と震えながら言って、ノコノコついて行った。
「(触れる!)」脳髄は歓喜していた。半年間禁欲をして勉強に励んだご褒美だ!
「(大学初日から、童貞と卒業だ! 溢れ出ろ! 脳汁、我慢汁!)」
桜のチラチラ舞い散る午後のひと時、サークル棟の一番はじの部屋に連れて行かれた。
「少しだけ、目を閉じていてください」
目隠しされて、テーブル席に座らされた。ふっくら暖かい空気が、鼻の穴に入って来た。
「人差し指を貸してください。そう、そのまま人差し指だけ伸ばしてください・・・」胸の高さに持ち上げられ、人差し指が柔らかいのもに触れた。
「! (コイツは、俺の女だ!)」と、同時に鼻血が出た。
「おっ、鼻血を出しやがった。大丈夫か? コイツ」男の声がした。
「(ヤバイ! 美人局か? しかし、金はない。助かった!)」
「あっら~、出ちゃったの。仕方ないね」女は色っぽく、鼻のまわりを拭いてくれた。目に前に体格のいい男が立っていた。
「お前、大丈夫か?」悪意はない。着飾っているが、チャラくもなかった。戸惑いながら、質問した。
「これは、何のサークルですか?」
「俺たちは、古典研究部だ。いろいろやるよ。麻雀がメインだが。入る?」軽い口調の勧誘だった。
「入らないの?」脅しのきいた口調だった。
「体験入部で、一週間だけ入ります」
「そう、じゃ~これ書いてね~」
「入部届に名前だけ書かされた」
「退部は自由だ。活動時間は、サークル員の集まり次第だ」
「緩い部ですね」
「しかし、目標は全国制覇だ」
「目標が高いですね」
「うちは東北地区代表で去年全国二位だ。今年は全国制覇するぜ!」
「全国一位はどこですか?」
「関東地区代表の龍諦大学だ。三位は、北海道代表の玄武大学だった」
「サークル員は何名ほどいますか?」
「ユーレイ部員が多いからな~。十人くらいだ」
「結構いますね」
「俺は部長の小澤流麗だ。こっちは、副部長の五丈原忍だ」
「よろしくね~」
「お前の、名前は何て読むんだ?」
「引来剛志です」
「勧誘初日から、縁起がいいね~。期待してるぜ~」
「頑張ります!」こうして、何の部か分からないままに、俺の大学生活は始まった。鼻血で汚れた肉まんの鼻血の部分を削り取って、紅茶とともに頂いた。サークルでは、時々麻雀をして遊ぶという。緩い部で良かった。
「お前、この五枚から一枚引いてみろ」
目の前に、伏せられた麻雀牌が五枚並んでいた。右から二番目を捲ってみた。
「? 何これ? ハズレですか?」
「! お~。花牌だ。ど当たりだよ」
「へ~、そうなんですか。麻雀牌にこんなのありましたっけ?」
「特別ルール用の牌だ」
部長は花牌を伏せ、かき混ぜながら言った。
「もう一度、引いてみろ」
「! 花牌ですね~。また当たりですか?」
「ん~、天才だ! 今度は本気で行くぞ!」
「! 花牌です。全部花牌なんですか?」
「・・・お前、スゴイな・・・」
「・・・」忍も黙っていた。
「本格的な活動は、来週からだ。夕方にここのサークル室に来てくれ」
「はい!」気をよくした俺は、嬉々として帰った。
「いつも通り、全部花牌何でしょ?」忍が部長に聞いた。
「・・・仕込み忘れた。花牌は一枚だけだ」小澤は、冷静に答えた。
「あの人、本当に1/5を三回連続で引いたの?」忍は驚きながら、聞き返した。
「本当だ。偶然かな?」
「しかし、この手はよく効くな~」
「おっぱいと肉まんを間違えていたよ、あの人」
「最後に、食わされているんだから気付かないもんかね~」
「あの人、強いかな?」
「弱い奴はすぐにやめて行くさ。弱い奴には興味がない」
「それもそうね~」
第二話「役満行脚」




