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出会い


四限終了のチャイムが鳴り、教室のあちこちで楽しそうな話し声が聞こえる。もちろん僕、白銀翔にそんな相手はいない。

僕は目立つのが嫌いだ。

この顔のせいで中学のころも……

 だから僕は前髪で顔を隠すようにした。

 青春の1ページと語られるようなこんなにも煌びやかな時間を苦手とする人はこのクラスにはいないだろう。もちろん、僕を除いて。

 入学からはや2ヶ月、極力目立たないようにしていたら、高校デビューに失敗して友達の1人もできないまま夏を迎えようとしている。

仕舞いにはインキャといじられる始末である。

 だんだんと騒がしくなっていく今日室をそそくさと出て自慢の1人飯スポットに向かった。


その日の五限は体育館でバレーボールだった。

地球温暖化の影響なのか何なのか体育館の中はまるでサウナのような暑さだった。一試合しただけでも汗だくになり、足と腕が棒のようになった。


 何試合かプレイした後の休憩時間、体育館の隅で座っていると隣のコートでプレイしていた女子のラリーが、ふと視界の端に入った。

次の瞬間、白いボールがこちらへ向かって飛んでくるのがやけにゆっくり見えた。


 ーーまずい。

  

 今の疲労で重くなった身体では避けられない、そんなことを直感で感じた。案の定ボールは僕の顔面にぶつかり、体に衝撃が広がった。視界が真っ白になったところで、僕の意識は途切れた。


「……い……おー…い……おーい」

身体を揺さぶられながら誰かに呼ばれる声が聞こえた気がしてゆっくりと瞼を開いた。

「だいじょうぶ?」

目の前の少女が尋ねた。

「あぁ、なんとか」

手を見ると血で赤く染まっていた。鼻血を出していたようだ。

(ん? 目の前の、少女?)

見上げるとその子は銀髪で緋色の目をしていた。

「えっ紅月さん!?」

思わず大声をあげてしまった。

目の前に立っていたのがクラス…いや学校でもい1、2を争う美女、紅月(くずき) 蓮だった。

「……変。すごく、気になる匂い」

紅月さんが何か呟いたようだがよく聞こえなかった。


 よく見ると彼女のハンカチにも血が付いてることに気がついた。

「あっ、そのハンカチ洗って返しま……」

「……気にしなくていいから」

 だいぶ食い気味で返事が帰って来た。


(少し変な人だったな……)

違和感を感じつつも小走りで離れる紅月さんを見送った。


 ーーーーー

〜次の日〜


 特になんの怪我もなかったため、いつものように登校して午前中の授業を受けた。昼休みの時間、いつものように1人飯スポットに向かった。

 そんないつも通りの一日の中で一つだけいつもと違うことがあった。1人飯スポットに人影があったのだ。「いつもは誰もいないはずなのに……」

僕は人影に見つかることのないようにその場を離れようとした。

「逃げないよね?」

 背後から凛とした声で問われた。

「……来て。話、あるから」

 妙な圧を感じて従うしかなかった。

 そこに座っていたのは紅月さんだった。

「血、もらうね?」

 近づくなりそんなことを呟いて女子高生とは思えない力で押し倒され、首筋に噛みつかれた。

「……少しだけ。すぐ終わるから」


 (血を吸われてる?なんで?)

 抜け出そうとしたが、想像以上に力が強く抜け出せなかった。

 紅月さんからは鼻腔の奥をくすぐるような柔らかくとても甘い香りがした。

「……ほんと、困るんだけど」

 まさに大好物でも口にしたかのようにとろんと表情を崩しながら血を吸っていた。

 しばらくして、紅月さんが首筋から顔を離して

「……私、人じゃないの」

 ますます意味がわからない。ただ、心臓の鼓動が早くなり、身体が火照っていくのを感じた。

「君、意外と可愛い顔してるんだね?」

 不意に心臓が大きく跳ねた。

「なん、で?」

 動揺して声が詰まる。

「明日はみんながよってくるかもね?」

「……っ!血は……あげるよ」

 ニヤリと笑って

「……他の人のところ、いかないでよね?」

 手を振りながら、そう言い残して紅月さんは去っていった。



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