※ちなみに前回も全裸で転移させられました
「――ん」
パチパチと、何かが弾けるような音。
背面には柔らかな感触のお陰で、俺は意識が浮上してくる。
微睡みの中、まだ寝ていたいという感覚を振りほどきながら、上体を起こした。
「ッ……ってて」
ズキッと、体を動かした箇所に痛みが走る。
ふと視線を落とすと、体には手当を施された後があり、ズキズキと痛む箇所には包帯が巻かれていた。
骨折とかの大きな怪我はしていないようだが、鈍い痛みと一緒に気怠い感覚が全身を包み込んでいた。
「あっ、気がつきましたか?」
「えーっと……?」
声のした方に視線を向けると、銀髪の女の子が佇んでいた。
黒を基調としたシャツとロングスカートは、肌の白さと相まって、なんとも儚げな雰囲気を醸し出している。
そんな見知らぬ女の子は、俺がベッドから体を起こそうとすると慌てたような表情を浮かべた。
「ま、まだ傷は塞がってないと思うので、あまり動かない方がいいと思います」
「あ、あぁ、そうするよ。それでここは……?」
俺は視線を巡らしながら、自分の中で一番気になっていた質問を投げかけた。
最後の記憶は、女神によって異世界に全裸で飛ばされ、飛ばされた先がなぜか上空だった。
寸前のところで魔法――前の世界で習得していた衝撃波を生み出すもの――を使い、衝撃を緩和することで、なんとか命の危機を脱しているよう。
それでもダメージは少なくなかったのだろう……そこからの先の記憶はなかった。
それで、この女の子に助けてもらった感じだろうか。
状況が全く掴めない。
しかしその中でも分かったことがある。
それは目の前の女の子と意思疎通が出来ているということだった。
ちゃんとこの世界の言語は理解できていうのは恐らく女神の力なのだろうか。
そうだとしたら、その辺は素直に感謝だ。
ありがとう、クソ女神。
「ここは私の家、ですね」
俺の言葉に少女は返答してくれる。
なるほど……この子の家か。
「っていうことは、君が空から降ってきた俺を、ここまで運んできてくれたってこと?」
女の子は、再び頷く。
「はい。貴方が落ちてきた場所から、私の家まではすぐそこ……というよりも、目の前なので。それに、全裸の人をこの寒空の中、放置も出来ませんし」
「あー……それは、なんか申し訳ないというか、お粗末なモノをお見せしてしまったというか……」
「い、いえ! あの、私は殿方の――えっと、見たことが無いのでわからないのですが、恐らくお粗末なものではないと……思います」
ボッという擬音語が聞こえてきそうなほどに、頬を真っ赤に染める。
……俺は女の子になんてことを言わせてしまったのだろうか。
後悔の気持ちと同時に、赤面をしながらそんなことを言う彼女に、なんとも言えない複雑な気持ちが芽生える。
いや、ほらね? 言葉に表さない感情があったって不思議じゃないじゃないですか。
でも、それはそれだ。俺はまだこの子に、言うべきことを言っていない。
「まぁ、その……経緯はなんであれ、助かったよ。ありがとう」
「い、いえ、私はただ当然なことをしただけですので、頭を上げてください」
深く頭を下げる俺に、女の子は焦ったように言う。
お言葉に甘えて頭を上げると、女の子は苦笑いを浮かべていた。
なんか似てるな。
記憶の中にいつ治癒術師の少女と重なって、なんとも言えない気持ちになった。
「とは言え、いつまでも寝てるわけにはいかないな」
「あっ、そのままの格好で布団を出ちゃダ――」
ベッドから出る俺、それを止めようとする女の子。
「――ァっ」
「……へ?」
女の子は俺の体を見るやいなや、一瞬で視線を逸らす。
逸らしながら、手で顔を覆う。
釣られるようにして俺も視線を下げると、何も履いていない、生まれたままの姿で佇む、俺のムスコがそこにいらっしゃる。
うん、すっぽんぽんだ!
「っ!」
俺は素早く自分の手で乳首とムスコを隠しながら、謝罪する。
「あの……、ごめんなさい」
「い、いえ……その、早く服を着ていただけると助かるんですが……っ」
さりげなく、指と指の間から目が見えている気がするが――それを指摘するのは野
暮ってもんだろう。
こうして俺は女の子――リリアと出会ったのだった。