12 最強の校長
俺は校長に向かって、風の斬撃を飛ばす。だけど、その斬撃を校長は簡単に無効化した。
「チートがよ……!」
「ふふふ、チートは嫌だったかい?」
そいつはそんな嫌そうな笑みを浮かべた後、俺に光の斬撃を飛ばしてきた。俺はその速度に追いつけず、直撃する。
俺は、吹き飛ばされて、血を吐く。
そして、校長は休む暇を与えないように俺の隣に瞬間移動してきて、俺のことを蹴り飛ばした。
この状況……イナズマと戦った時と似ているな……と思いながら俺は次に来た攻撃を避けた。
「あの時の俺とは違うぜ……」
「そうですか」
そんなことを言いながら、校長は拳を飛ばしてくる。俺はそんな拳を受け止める。校長でも、必ず弱点があるはずだ。弱点がない人間なんてこの世にいない。そうして俺は校長に拳を返す。
だけど、校長はそんな攻撃を避けて反撃の反撃をしてくる。
俺はその攻撃に反応できずに、当たってしまう。
一方的な戦いだ。だけど、絶対に諦めない。
俺は風魔法で速度を最大まで上げた右足の蹴りを校長の頭にぶち込む。校長はそんな俺の攻撃に反応はできなかった。
校長の体が勢いよく吹っ飛ぶ。それと同時に反動で俺の足が悲鳴を上げた。その右足は、おそらく骨が粉々になっていた。
俺はバランスを保てず左側に倒れ込む。
「これ以上は無理だぞ……」
俺がそんなことを言った瞬間だった。俺の目の前には頭から血を流した校長が立っていた。
「マジかよ……」
そうして、校長は手に光魔法を溜めて……俺に向かって撃とうとする。
その瞬間だった。俺のことを守る誰かがいた。
それは、イナズマだった。
「風馬――あとは任せろ」
そいつはそう言って、校長を蹴り飛ばした。
だけど、校長は立ち上がる。目の前には雷を纏ったイナズマと、光を纏った校長が対面していた。
「二度目は負けねぇぞ」
「できるもんなら、やってみてください」
イナズマの言葉に校長はそう返した。
そして、イナズマの雷が校長に向けて飛んで行った。校長はそんな雷を弾き、光の魔弾でイナズマを撃ち抜く。
イナズマはそれをギリギリで回避した。回避した瞬間、イナズマは雷のように校長の目の前まで移動する。
校長はそれを予測してたかのようにイナズマを蹴り飛ばした。
イナズマは蹴り飛ばされる。だけど、雷魔法を使って校長に向けて雷を落とす。
でも、校長は倒れなかった。
「本当にバケモノだな……」
イナズマは息を吐いて疲れながら言った。
やつを倒す方法はないのか……と思っていると……
すぐそこに偶然なのか、魔法を無効化する石が落ちていた。
俺はその石を、拾って校長に向かって投げつける!! 風魔法を使うことで、投げた石の速度は増す……!
その不意打ちに校長は気づかず、魔法が一瞬だけ切れる。
イナズマはその一瞬の隙を見逃さなかった。その瞬間、雷の刃が校長の心臓を貫いた。
これで……勝った。俺たちの勝利だ……
俺は前を見てみる。その光景は勝利のはずだった。だけど、その光景はあまりに悲惨なもので……
貫かれていたのはイナズマの方だった。俺は理解が追いつかなかった。さっき、イナズマが校長を貫いていたはずだった。でも、校長がイナズマを貫いていた。
俺は絶望する。絶望しすぎて意識が飛びそうになる。
「ふ、風馬……お前だけでも逃げてくれ」
そんな絶望している俺に貫かれたイナズマが掠れた声で言った。
だけど、俺は絶望しかできない。もう無理なんだ。
そして、イカズチの体は力無く落ちていった。
俺が、また弱くて……死なせてしまった。
「お前も、すぐに同じところに連れていってやる」
校長はそう言って、俺に向かって光の魔弾を飛ばそうとする。
その瞬間――
「諦めないで!」
美香の声がして、俺は美香に突き飛ばされる。
なぜ……美香がいるんだ? 保健室で休んでいたはずじゃ? 回復したのか? そんな疑問を思っていると――
「すみません。風馬さん、あなたに全てを頼みます」
美香の言葉の意味が理解できなかった。俺の地面には転移の時の光……その時、俺を転移させるんだと、それだけは理解できた。そして、俺の視界は光いっぱいに包まれる。
転移に成功した。周りを見渡すとそこは荒れ果てた街だった。
「なんで……俺なんかを助けて……」
俺は涙が出てきた。イナズマも、美香も優雅も死なせてしまった。俺のせいで……いや、俺のせいじゃない。全てはあいつらのせいだ。
俺はこの世と校長に対して殺意が湧く。
「あいつを……必ず殺す……全員殺してやる……」
俺はそう宣言した。