10 絶望、再び
俺はそのふかふかなベットで誰かに起こされる。
「誰だ……?」
目の前を見ると、そこには茶髪の男が立っていた。
「よぉ!」
俺はびっくりしてベットから転げ落ちる。
「ガハハハ! そんな驚いてどうした」
茶髪の男がそう言った。
「はは……」
「俺の名前は優雅だぜ、よろしくな」
優雅……金髪の男が言っていたやつか
「よろしく」
「そうえば、もうすぐ学園の人間が攻めてくるらしいぞ」
学園側が攻めてくる……? 俺を助けに来たのだろうか。
「ちなみに、そんな情報どこで手に入れたんだ?」
「学園にスパイを忍び込ませているんだ」
「そういうことか……」
でも、スパイみたいなやつなんていただろうか? もしかすると、俺の知らないやつなのか?
「ちなみに、誰なんだ?」
「それは秘密だぜ」
「そうか……」
秘密……か。少し気になったが、まあいいやと思う。
そんな話をしていると、部屋の中にイナズマが入ってくる。
「風馬、仕事だ」
部屋に入ってきたイナズマが言った。
「どんな仕事だ?」
俺は気になって聞いてみる。
「外の方で魔法を使って虐殺している人間がいる。そいつの殺害だ」
「殺害……か」
「嫌だったら捕らえてくるだけでもいい」
「いや、面倒だから大丈夫だ」
「転移魔法で現場まで飛ばすから、終わったらこのスマホで連絡をくれ」
そう言って、イナズマはスマホを投げ飛ばしてくる。
「わかった、じゃあ行くとするよ」
「転移できる部屋は、部屋から出て左に曲がるとある」
そう言われて、俺は部屋から出て左に曲がった。その先には転移部屋と書いてある部屋があった。
そうして、俺はその部屋に入る。その瞬間、荒れ果てた街のような場所に飛ばされた。
「さて……どこだ?」
少しだけ歩いてみると、右側から魔法が飛んできた。俺は風魔法でそんな魔法を弾く。
「お前か……」
俺の目の前には、いかにも犯罪者みたいな見た目の男がいた。
「俺は魔法を使えるぞ! 金品を全部置いてけ!」
そんな悪役みたいなセリフを吐く雑魚に、俺は風の斬撃を飛ばすと……
そいつは当たった瞬間、吹っ飛んで気絶した。
「弱くね……?」
そんなことを言いながら、俺はそいつにトドメを刺した。
そうして、俺はイナズマに終わったと連絡をした。連絡をしてしばらく時間が経つと、俺は転移魔法でアジトに戻された。
「転移魔法……便利なもんだな」
すると、誰かが話しかけてくる。
「お疲れ様です」
「え? 誰?」
それは銀髪で青い綺麗な目を持った女だった。
「私は転移魔法を使って、みなさんを様々な場所に転移させます。滝山 美香です!」
その美香という少女は元気に言った。
「そうなのか……ありがとな」
軍にはこんな人もいるのか……と思った。
「こちらこそ! 人を助けてくれてありがとうございます」
「じゃあ俺は部屋に戻るよ、バイバイ」
「さよならです!」
俺はその転移室から出て行って、部屋に戻る。
部屋には優雅とイナズマがいた。
「おかえり」
二人はそう言って――
「ただいま」
俺はそう返した。
「少し君に話があるんだ」
「なんだ?」
次はどんな話をされるのだろう……と期待していると――
「学園の人間が攻めてくる話だ、明日攻めてくる」
明日? そんなに早く消したいのか……と思った。
「わかった。それで、俺は何をすればいいんだ?」
「今回は面倒だから逃げる。明日の朝準備をして、すぐに転移室で出発だ」
「了解だ」
「今日はもう寝ていいぞ」
そんなことを言われて、俺はベットの上に寝転ぶ。
「じゃあ遠慮なく寝させてもらう、おやすみ」
「え〜もう寝るのか〜?」
優雅がそんなことを言っていたが俺は無視して眠りにつくのだった。
真夜中、警報が鳴っていた。俺は驚いてすぐに起きる。
「おい起きろ! 風馬!」
上で寝ていた優雅が叫ぶ。
「どうした?」
俺は何が起きたのか分からず、そんなことを聞いた。
「昨日攻めてくるはずが、今日の夜中攻めてきたんだ。お前は転移室を守れ!」
「わかった、すぐ行くよ」
俺は急いで転移室へ向かう。転移室の中に入ると……そこには美香が待っていた。
「美香、大丈夫か?」
「大丈夫です、私は転移魔法を準備するので守ってくれると嬉しいです」
「わかった」
そうして、少しした時だった。
赤髪の生徒会長、達也が転移室に入ってきた。
「あなた……裏切ったんですか?」
「こちら側にいるってことはそういうことだろ?」
「…………」
そして、そいつは無言で炎魔法を撃ってきた。俺はその攻撃を風魔法で打ち消す。
「厄介な魔法ですね……ですが、そこにいる方を倒せば、おそらく転移ができないのでしょう?」
「チッ……」
俺は舌打ちをした。
その瞬間、そいつは無数の炎を撃ってきた。俺は風で全ての炎を消す。
「どちらの魔力が持つか……勝負です」
おそらくだが、俺の魔力はとても高い。負けるはずがないと思っている。だけど、そいつが出す炎がどんどんと強まっていく。
俺はその炎を消すために風の力を強める。俺が炎だけに集中していたその時……いつの間にか、そいつは美香の後ろにいた……!
気づかなかった、本体が動いてるなんて……そうして、美香は燃やされる。俺は風で消そうとしたが遅かった。
また…………俺のせいで……
俺は絶望した、再び俺が弱いせいで人が死んでしまったからだ。
「なんで……なんで……」
俺は涙を溢しながら言った。俺の責任で、みんなが転移できずに死んでしまうんだ。
「あなたが弱いからですよ」
そんなこと……わかってる……俺が弱いからみんな死んでいくんだ……
「じゃあ死んでください、さよなら」
そして、そいつの炎が俺の方へと撃たれる。