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プロローグ

冷たい風が吹く10月の金森赤レンガ倉庫を一人の20代女性が歩いていた。スーツ姿にイヤホンマイクで誰かと話している。どうやら観光目的でもなそうな感じでこの光景を懐かしそうに見ながらデッキのベンチに座る。その女性が座ってから少しして50代の男が座る。この男もスーツ姿だ。しかしどうも会社の商談でも無ければ接待でもない。


「別に話しの用があるのならいつも通り君のホテルかうちに来ればよかったのになんでわざわざ函館なんだ?」


と男は不機嫌そうに言う。


「まぁそこは気にしないで頂戴。それにかなりいい感じであなたをもてなしたつもりよ?」


と女性は言う。


「まぁ一度場所を移しましょ」


二人はそういってその場を後にする。


「まぁしかし驚いたなそっちもこのことに気づいているなんてなぁ~。お宅の諜報能力も並じゃないな」


男は感心げに言う。


「いうまでもないわよ。この仕事やってると必然的に重要視せざる負えないわ」


石畳の敷かれた坂を上りながら後ろを振り返る


「この景色はいつの時代も本質が変わらないわね」


「100年前とそう変わらないもんなのか?」


と男は聞く


「ええ。私が英国領事館で勤務していた100年前の時と本質は変わらなかったわ。変わったものは人工的な鮮やかな光とその数ね。それに比べて人間の本質は何も変わらない。道につけている知識や情報は違えど結局その下は同じ。強大な権力を持った者はそれを己のために使う。また己を支持する者の為に使う。まさ最近じゃあ権力無くてもネットの中ででかい声で話せるないしはそのときの流れに乗るだけども己の懐を潤すことが出来る」


「ここで人間批判なんぞ聞きたくないがな。ところで何故かつけられている気がするのだが勘違いかい?」


と後半小声で話しかける。


「勘違いよ。ここには観光客しかいないわ。ちょうどさっき函館山の山頂から降りてきたのよ。時間が時間だから」


二人は坂をのぼり、道なりに歩いて行く。少しすると大きな建物が見えてくるその建物からは山に向けてケーブルが垂れ下がっている。ロープウェイ乗り場だ。


「おいおいまさかとは思っていたが函館山で話すつもりなのか?」


男は驚きながら話す。


「どうせ文章交換するだけでその後少し話すだけでしょ?ならいいじゃない。誰も気にもとめないわ」


そう言ってロープウェイ乗り場で乗車券を買い、乗り場に向かう。ちょうど山から一台のゴンドラが下りてきた。平日の夜、しかも登りロープウェイの最終便という訳あって乗っている人は少なく、今から乗る人も彼らだけだった。出発時刻になり係員によりドアが閉められゆっくりと動き出す。少しずつロープウェイが上がり出す眼下には“100万ドルの夜景”と呼ばれている函館の建物によって作りだされた景色が段々と見えてくる。


「それでなんで情報調査院国内部門の統括部長である貴方でさえ例のネズミを内部監査で締め上げれないのよ?」


女性はいぶかしげに聞く


「理由は2つだ。一つ目、監査の口実がない。それをでっち上げれば、今度は連中じゃなくて俺が査問会送りだ。二つ目…これは勘だが、深入りすると命が危ない。」


そう男は話す。


「そういえばさっきあなた尾行されているんじゃないかって?疑っていたけど実際のところ尾行されてるわ」


という。男は驚きゆっくりゴンドラの窓から外を見る。


「そんなバカな。連中か?」


女性はアタッシュケースから書類を出しながら話す。


「教団が差し向けた奴だわ。心配しないで一人はもうじき拘束する。あとは展望台にいるからそいつも。時間がないからここで書類あなたに見せるわ。」


そういってアタッシュケースから取り出した書類を取り出し男に渡す。書類を見て男は驚きドンドンめくっていく。そしてこう口を開く


「我々から提供すべき情報は何も無いとはな。驚いたよ。質問だが4号室の要員リストにあるこのUHPと書かれてい項目は一体?」


それを話した瞬間女性は答える。


「その答え合わせをしに今から展望台に向かうわよ。」


そういって葉巻を口に咥え、火をつける。そうこうするとゴンドラが山頂に着く。女性がドアを開ける


「心配しないでこの時間からはワールドツアラーズ社がこの山頂を貸し切ったから好き勝手にできるわよ。」


そういってゴンドラを降り展望台に向かう。周りを見渡すと誰もいない。係員すらいない


「相変わらずその強引なやり方には感心するよ。しかしなんで尾行した奴はどうやって展望台に?だってここは貸し切っていたんだろ?」


「山道を車で走ってきたの。わざと開けておいて正解だったわ。恐ろしいぐらい作戦が進んでいてむしろ怖いぐらいよ」


間髪入れず男の質問に答えながらコートから拳銃を取り出しスライドを引き薬室に銃弾が装弾されているかを確認している。消音器が付いたものだが見た目は古そうに見える。男は多少銃火器についての知識があったからそれがなにか分かった。PBまたの名を6P9。旧ソ連製のマカロフ拳銃をベースに開発された暗殺等を主目的にした拳銃だ。展望台への階段を上がりながら彼女はこう話す。


「さてこの先は少しエライことが起きる領域に足踏み込むことになるけど付いて来るの?」


男は少し考え答える。


「この事案の始まりと終わりだけはこの目で見ておこう」


すると女性は振り返りこう話す。


「精神がおかしくなっても責任はとれないことだけは忘れないでちょうだい。」


と淡々と話す。


「わかってる。お前さんのことは知ってるからまあある程度なら大丈夫だろ」


と少し楽観しつつ不安げに話す。


「まああなたがその気なら構わないわ。coltan01, Hotelna's back supporter's status」


そういって再度スライドを引き薬室に弾丸が装填されているのを確認しながらイヤホンマイクで連絡を取る


「All unit excute excute。さてそれじゃあ罠にまんまと引っかかった奴の顔を拝みに行きますか」


と言い階段を駆け上がっていく。


展望台には誰もいなかった彼ら2人と先にいた先客を除いて。


「バカな真似するんじゃないの。もう気が付いているだろけどこの区域一帯には強力な魔力制限をかけているわ。あんたじゃわたしに反撃できる魔法とか持ち合わせてないでしょ?」


先客としていた人間、いやもはや人間では無い。首は不自然に真横を向き、皮膚は割れた日々が入った陶器のように亀裂が短冊のように入っている。


「久しぶりですなぁ。妹様」


その一言聞くや否や彼女はすぐにコートから拳銃を取り出し怪物にその銃口を向ける。


「あら?その一言が私にとってどんな意味を持つかわかっていないのかしら?それで今度は何をしにわざわざこっちに来たの?」


と冷静そうに振る舞うが内心どうもそうじゃないらしい。トリガーには指を掛け、鋭い目で相手をにらみつける。


「言うまでもあるますまい。我が主は貴方様の力を欲していらっしゃる。故に申し訳ないと思っているのですが中道神の瓦解が最終目的です。」


そう淡々と語った瞬間


「あらそ。それに対する私の答えはこうよ」


そう言うと有無を言わせること無くトリガーを引く。複数回無機質な金属音が鳴り響き同時に人が倒れるような鈍い音が響く。弾切れになった拳銃にマガジンを取り替える。カチッという金属音がした後、女性はその化け物へと歩みをすすめ心臓あたりに狙いを定めトリガーを引く。また複数回無機質な金属音が鳴り響き薬莢が地面に落ちた音が周りに響く。


「Hotelnaへ事後処理は頼んだわよ」


とイヤホンマイクに手を当てながらロープウェイへと向かう。


「これからえらいことに貴方も巻き込まれるから足元には気をつけなさい。ああそれとUHPの項目だけあれは正しくはUn Human Percentage。とどのつまり人外率よ。」


そう言ってその場を去る。辺りには冷たい風が強く吹き函館空港を飛び立ったと思われるジェット機のエンジン音が響く。

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