婚約者は〇〇〇!その3
ユーシアお嬢様が集中していて時間が過ぎるのも気づかない間に、二人で手を繋いで来た部分がすべてスキップされてしまいました!
何が正解なのか分かるはずもありません。
でも、ユーシアお嬢様は結局何を選んでも後悔せざるを得ないのです!
「もう準備してあったんですね!」
セイン坊ちゃまはドアが開くとすぐに集まるティータイムセットを見て驚いた表情を浮かべました。
そうしながらも「さすが公爵家...」とつぶやきました。
おとなしい外見と性格とは違って、意外と野心的な性格かもしれませんね!
「さあ、入りましょう。セイン坊ちゃま。」
ユーシアお嬢様は部屋の暖かい空気を感じ、セイン坊ちゃまにかけていた魔法を慎重に解きました。
急に解いて風が吹いたらどうしようと思い、とても細心の注意を払って進めたのです。
セイン坊ちゃまはユーシアお嬢様を見ながらそっと微笑んで言いました。
「本当にありがとうございます。ユーシアお嬢様。魔法まで使ってくださって。」
セイン坊ちゃまの口元に浮かんだ小さな微笑みを見ると、ユーシアお嬢様はなぜか気分が舞い上がりそうでした。
きっとそうでしょう!
こんな些細な幸せは運命のように感じるほど大きなことでもあるのですから。
「分かっていたんですか?」
「はい、もちろんです。そんなに集中していたので。」
ユーシアお嬢様はセイン坊ちゃまがすべて知っていたと答えると、とても恥ずかしい気持ちになりました。
なぜか顔が熱くなり、目をそらしたくなりました。
でも、セイン坊ちゃまのそっと浮かべる微笑みに、なぜか目が離せません。
セイン坊ちゃまとユーシアお嬢様は柔らかいソファに並んで座りました。
確かに向かい合って座っても良かったはずなのに、なぜかユーシアお嬢様はわざわざセイン坊ちゃまの隣に座ったのです。
もちろん、ユーシアお嬢様が頭で何か考えて計算しながらそんな行動をしたわけではありません。
ただ何も考えずに自然に隣に座っただけなのです!
「暖かいですね。」
「はい、本当にそうですね。」
「ふぁ〜。」
セイン坊ちゃまはメイドが注いでくれるミルクティーを慎重に一口飲みました。
熱くなく、ちょうど体を温めてくれる程度の温かさが気に入ったようです。
ユーシアお嬢様はセイン坊ちゃまの前に置かれたプリンを取り、スプーンで慎重に一さじすくいました。
「せ、セイン坊ちゃま...あ〜んしてください。」
普段アンネがユーシアお嬢様にお昼ご飯を食べさせるときによくする方法です。
と言えば言い訳になるでしょう。
はい。ユーシアお嬢様はすべて分かってやっているのです。
最も重要な事実は、これも計算したものではないという点です。
まるでそうすべきだという思いに、体が勝手に動いただけなのです。
「え、えっと?」
「早く!」
なぜか強要する姿になってしまいましたが、とても見栄えが良いです。
こういうのがまさに見たかった場面ではないでしょうか。
もちろん、そうでない方もいるかもしれ...ません?
「...もぐ。」
セイン坊ちゃまは目から火を灯したように勧めるユーシアお嬢様の勢いに押されてプリンを口に運びました。
さらりと溶ける柔らかな甘さが広がると、セイン坊ちゃまは宝石のような緑色の瞳をさらにキラキラと輝かせました。
「どうですか?美味しいでしょう?」
「本当に美味しいです!」
ユーシアお嬢様とセイン坊ちゃまは互いに目を輝かせながら楽しいティータイムを満喫しました!
もう物語を締めくくる時間が来てしまいましたね。
エリヤ子爵家とミラージュ公爵家は今や婚約で結ばれた間柄となりました。
「日取りは来月のユーシアの誕生日だな。」
「はい、準備は大丈夫でしょうか?」
「どうせその日はパーティーが予定されているからな。それに陛下も婚約を許可すると仰っていたではないか。」
幸せに酔いしれて過ごす間に、セイン坊ちゃまがエリヤ子爵領に帰る日が来てしまいました。
もちろん来月にあるユーシアお嬢様の誕生日祝いのパーティーのためにまた来るのでしょうが、少しの間離れるのも惜しいばかりです。
「あの、セイン坊ちゃま。本当にまた来られますか?」
「はい、必ず来られると思います。心配しないでください。」
セイン坊ちゃまも寂しいのは同じだったのか、ユーシアお嬢様の手を取りながら約束しました。
その短い数日の間にユーシアお嬢様がセイン坊ちゃまの心を掴むために努力したのか、想像するだけでほっこりしますね。
「セイン、もう行くぞ。」
「はい、お父...父上。」
エリヤ子爵はセイン坊ちゃまを呼び、公爵様に頭を下げて挨拶しました。
公爵様も黙って頷きました。
二人が馬車に乗り込んで出発する姿まで見送ったユーシアお嬢様は、小さな声で言いました。
「必ずまた...」
「...ユーシア。その言葉はなんだか不安な感じがするぞ。」
ユーシアお嬢様は時々他の人には理解できない言葉をよく言うという事実をご存知でしょう。
大体こんな感じなのです。
どんなにつまらなくてもダジャレを言わないと死んでしまう生き物、それがユーシアお嬢様なのです!
「あ、お父様!聞こえたんですか!?」
「そりゃあ、すぐ隣で言えば...」
「きゃあああ!」
人に聞こえないように一人で言ったつもりだったのに、なぜか公爵様が霊感でもあるかのようにユーシアお嬢様の独り言を聞いてしまったのです!
真っ赤に染まった顔で公爵様の背中をポンポンと叩く姿は、周りで見ている人の心を温かくする何かがありました。
「い、痛い!ユーシア!誰に似てこんなに手が痛いんだ!」
「お父様の筋肉に聞いてください!誰に似たのかを!」
「筋肉?筋肉に罪はない!ライナ!これはライナに似たからだ!間違いない!」
「お父様!」
頬をぷくっと膨らませながら一生懸命公爵様の背中に跡を付けるその姿は、確かにユーシアお嬢様がライナ様の娘だという証拠でした!
ライナ様の手さばきにミラージュ公爵家特有の力を加えると、相乗効果で何倍にも増幅します!
「くっ!本当に痛いな!」
「からかわないでください!」
もちろん立派な筋肉を持つ公爵様はその力に耐えられました。
痛いと言いながらも何でもないような表情でクスクス笑いを漏らしていたのですから。
ユーシアお嬢様の叩く速度がだんだん落ちてくると、公爵様はお嬢様をひょいと抱き上げました。
「さあ、私たちももう入ろう。ユーシア。」
「いっ...はい。」
ユーシアお嬢様は広々として頑丈なお父様の肩に顔を預けながらもごもごと答えました。
実はセイン坊ちゃまと離れる寂しさを隠したい、そんな気持ちがあったのでしょう。
公爵様も娘の気持ちを察したからこそ、冗談を受け入れたのでしょう。
「お父様。私の誕生日に婚約も発表するんですか?」
「すべて話したはずだが。」
「私が大人になったらセイン坊ちゃまの花嫁になるんですよね?」
「もちろんだ。」
「でも信じられません。」
公爵様は改めてもう一度驚きました。
明るく活発な娘ではありますが、誰かに惚れたり、そんな子ではないと思っていたユーシアお嬢様がセイン・エリヤという少年に一目惚れしてこんな姿を見せるとは思ってもみなかったからです。
「そうだな。でも一つだけは必ず覚えておくんだ、ユーシア。」
「はい?」
「お前が嫁に行くのではなく、向こうから婿に来るんだ。」
公爵様は真剣に言いました。
これは本当に重要な事実なのです。
ミラージュ公爵家を継ぐことができる後継者は今のところユーシアお嬢様だけだからです。
つまり、唯一の後継者!
「えっ」
ユーシアお嬢様の頭の中には、これから展開される未来が描かれ始めました。
想像して3秒で、もう子供を3人も産んでいます!
ああ、これは本当に速いですね!
「ふ、ふひひひひ...長女が女の子なら、セリアって名前を付けてあげるわ。ひひ。」
7秒目には後継者争いで家の中で決闘が起きています。
人生設計なのか、どろどろドラマなのか分からない想像です!
「あ、ああ...そうか。」
公爵様はなぜか肩が湿っているように感じましたが、一生懸命無視しました。
ローズ・スノウドロップ。
少女はミラージュ公爵家のメイドとして働き始めてから、もう3年目になりました。
真っ白な髪のローズは、どういうわけか魔法の才能があることが明らかになってしまいました。
「...えっ?私がですか?」
「うん。ローズ。君は魔法の才能があるそうだ。」
「メイドとして働くのに関係ないですよね?」
今年で9歳。近々ユーシアお嬢様の専属メイドになる予定だったローズは、思いもよらなかった発見に全く驚きませんでした。
「それはそうだけど...もしかしたらね?」
メイド長は適度に仕事をこなすローズを気に入っていました。
ただ、魔法の才能があるなら、主人になるユーシアお嬢様が何を命じるか分かりません!
メイド長はローズのためにそんな事実は隠すことにしました。
「大丈夫でしょう。どうせ魔法を習うほど生活費に余裕はないですから。」
「まったく、あれだけの金をまだ実家に送っていたのか?」
「...私の下に弟妹が5人いるんです。」
ローズは今や9人兄弟になってしまった家を思うと、ため息が出てしまいました。
まるで年中無休で愛を交わしているのではないかと疑われる両親を止めたかったのです。
メイド長はローズの家庭事情に涙を拭いました。
「それは、ちょっとひどいな。」
「きっと姉や兄たちもお金を稼いで補っているはずなのに。」
どこにお金が消えているのか、ローズはいつか家に帰って家計簿を調べてみるつもりでいっぱいでした。
メイド長はそんなローズのために、さらに良い環境を用意しました。
「そうだな。じゃあ明日からユーシアお嬢様の専属だから、これからはアンネから学ぶようにね。」
「えっ?近々って明日だったんですか?!」
ローズはユーシアお嬢様の専属メイドになった!
読んでいただき、本当にありがとうございます!