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婚約者は〇〇〇!その2


一目惚れという言葉がありますね。

誰かと交際する時によく出てくる定番のフレーズです。

ユーシアお嬢様は前世の記憶では一度も経験したことのない感覚でしたが、今日その感情をはっきりと理解することができました。


「あ、わぁぁぁ!」


思い浮かぶべき言葉が何も浮かばず、言葉で表現できないような胸がいっぱいになる感情は初めてだったのです。

少し赤くなった顔を隠すために、ユーシアお嬢様は顔を下げました。


「ミラージュ公爵の令嬢?」

「は、はい!」


少年とは思えないほど清らかな高音が耳をくすぐると、ユーシアお嬢様はびっくりしてしまいました。

確かに堂々と「超可能」を叫ぶほど自信に満ちていたお嬢様でしたが、なぜかそんな堂々とした姿は消えてしまいました。

目の前の人を花嫁にしようという決意までしたのに、心が勝手に暴れて制御できませんでした。


「大丈夫ですか?もしかしてまだ体が...」


この少年...どうやらユーシアお嬢様にはちょっと分不相応な子かもしれませんね。

汚れを知らない純粋な瞳で心配そうにする姿を見ると、少し汚れているような、そうでもないような、曖昧なユーシアお嬢様の良心がちくちくと刺されるような感じがしました。


「だ、大丈夫です。心配してくださってありがとうございます...」


大人たちはそれなりに複雑な話をしているので、ユーシアお嬢様とセイン坊ちゃまは別に話すことになりました。

今や完全に恥ずかしがり屋の少女そのものになってしまったユーシアお嬢様は、セイン坊ちゃまと気まずい時間を過ごしました。

もちろんセイン坊ちゃまも初めて経験する感覚が気まずかったのか、話をしながら隣の席でうるさく喋っている父親の腕を引っ張りました。


「パパ...公爵令嬢と少し庭園に行ってもいいですか?」

「ああ、そうだな。大人同士で話ばかりしていたね。よろしいでしょうか、公爵様?」


エリヤ子爵はいつも静かな息子が直接話しかける姿に考える必要もないというように、公爵様に許可を求めました。

あんなに恥ずかしがる娘を初めて見た公爵様も快く許可しました。


「もちろんだとも。どうぞ楽しい時間を過ごしなさい。」

「ありがとうございます!」


セイン坊ちゃまは許可が出るや否や席から立ち上がり、ユーシアお嬢様の手を取りました。


「一緒に行きましょう!ユーシアお嬢様!」


この坊ちゃま、意外と積極的な子でした。


庭園に出たユーシアお嬢様はセイン坊ちゃまをじっと見つめました。


「あの...どうしてそんなに見つめるんですか?」


セイン坊ちゃまは全身を毛皮の服で包んでいました。

確かに肌寒いですが、まだ日差しが暖かいのでこんな格好をする天気ではありませんでした。

半袖ブラウスを着たユーシアお嬢様には理解しがたい姿でした。


「セイン坊ちゃま?もしかして寒がりですか?」

「そ、そうです。」


ユーシアお嬢様の質問にセイン坊ちゃまはぶるぶる震えながら頷きました。

実はそんなに厚着をしているにもかかわらず、セイン坊ちゃまの顔は少し蒼白でした。

まるで弱々しい動物のように見えるセイン坊ちゃまを見て、ユーシアお嬢様は重要な事実に気づきました。


「これは...さらに可能性のある部分!」


生まれて初めてユーシアお嬢様は、可能性の領域を広げる生き物を知ることになりました。

女の子と言っても信じられるほど可愛らしく、見た目通りに優しい性格なのに、時には積極的で、しかも病弱という設定まで!

まさにあらゆる魅力を一身に背負った可能性の倉庫そのものでした!

ユーシアお嬢様のような何でも可能な少女にとって、セイン・エリヤは女神様が下さった贈り物でした。


「庭園が寒すぎるなら中に入りましょうか?」


ユーシアお嬢様はぶるぶる震えるセイン坊ちゃまの手を取りました。

蒼白な顔と同じように、手も氷のように冷たかったです。

これはチャンスです!

セイン坊ちゃまの心を掴むのにこれ以上ない機会はありません!


「はい。入った方がいいと思います。」


セイン坊ちゃまはユーシアお嬢様が手を取ってくれたので、顔が真っ赤に染まりました。

生まれて初めて母親以外の女性の手を握ったような、可愛らしい反応ですね。

ユーシアお嬢様がもうすぐ7歳の誕生日を迎えるように、セイン坊ちゃまは次の誕生日で6歳になります。

私たちのお嬢様が1歳年上のお姉さんということですね!


「中に入って温かいミルクティーを飲みましょう!」


ユーシアお嬢様は実はミルクティーを冷たく飲む趣味があります。

そんなお嬢様があえて温かいミルクティーを飲もうと言うほど、セイン坊ちゃまに良く思われたいようですね!


「もしかして蜂蜜も入りますか?」

「蜂蜜ですか?」

「はい...まだ渋いお茶は飲むのが難しくて...」


セイン坊ちゃまはまだ甘みがないとミルクティーも飲むのが難しい子でした。

一体この坊ちゃまはどこまで属性を増やすつもりなのか、本当に無限の可能性の塊としか言いようがありませんね!


「ふぅ...セイン坊ちゃま。」

「はい?」


ユーシアお嬢様は口に何かを含んでいるように長い息を吐きながらセイン坊ちゃまに言いました。


「砂糖も用意できますよ。」


砂糖はエラ帝国ではちょっと貴重な品物です。

そんなに高価な贅沢品ではありませんが、かといって気軽に使うにはちょっと高く、節約しようとするとこれは何をしているのかと思うくらいの価格です。

言ってみれば子供のお小遣いでは高い物なのです。

実は蜂蜜は産地でなければもっと高いのですが。


「砂糖ですか!?」


セイン坊ちゃまは砂糖を味わったことがあまりないようです。

ある意味当然のことです。今まさに領地を受け取って開拓中のエリヤ子爵家は少し貧乏な方なのです。

私財まで投じて領地開拓に力を注ぐエリヤ子爵家は、病弱な息子に砂糖の入った食べ物も思う存分食べさせられないほどでした。


「お菓子も思う存分食べましょう!」

「お菓子!」


ユーシアお嬢様はこの隙を逃しませんでした。

砂糖とお菓子という言葉に目を輝かせるセイン坊ちゃまに、どうにかして心を掴み取ろうという一念で思いつくお菓子を言ってみました。


「クッキーもあるし、ケーキもたくさんありますよ!」

「そ、固いものや油っこいものは消化できないんです...」


ああ、ここで変化球が来ますね!

この病弱な坊ちゃまは実は食べる量も少なく、食べられる食べ物も限られていたのです。

食事を一度間違えると寝込むのが日常です。

言ってみれば、吹く風にも骨が折れそうな虚弱体質なのです!


「じゃあプリン!プリンくらいなら大丈夫でしょう!」


せめて思いつく間食で柔らかくて消化しやすいプリンくらいだったユーシアお嬢様は、一生懸命セイン坊ちゃまに勧めてみました。

この程度の虚弱体質なら千年の恋も冷めそうなものなのに。


「一度も食べたことがありません...」


セイン坊ちゃまは小さな声で答えました。

ユーシアお嬢様は恥ずかしがるセイン坊ちゃまをぎゅっと抱きしめたい気持ちを隠して言いました。


「じゃあ初体験ですね!」

「は、はい?初めて食べるものだから、そうですよね?」


いくら何でも可能なお嬢様とはいえ、セクハラはちょっとね!

セイン坊ちゃまがまだ理解しにくい年齢で本当に良かったです。

もし理解していたら、ユーシアお嬢様を蔑む目で見ていたでしょうから!


「じゃあ早く中に入って待ちましょう!アンネ!お願いします!」

「はい、ユーシアお嬢様。」


セイン坊ちゃまは熱いほどに熱気が伝わるユーシアお嬢様に付いて中に入りました。


ユーシアお嬢様とセイン坊ちゃまは仲良く手を取り合って廊下を歩きました。

誰にも気づかれないように、ユーシアお嬢様は魔法でセイン坊ちゃまが暖かくなるように魔法をかけてあげました。

もちろんぶるぶる震える姿も可愛らしかったですが、ユーシアお嬢様はセイン坊ちゃまが辛そうにしている姿を見たくなかったのです。


「中は暖かいですね。」

「そうですよね?」


セイン坊ちゃまはにっこりと笑いながらユーシアお嬢様に話しかけました。

魔法に集中しているユーシアお嬢様は答えはしましたが、残念ながら可愛い笑顔を見逃してしまいました。

でも大丈夫です!

ユーシアお嬢様とセイン坊ちゃまが婚約するのは確定した事実なのですから!


「あの、ユーシアお嬢様?」


ユーシアお嬢様は魔法において天才ですが、まだ7歳の誕生日を迎えようとする子供です。

いくつものことを同時にするには集中力が足りません。

歩きながら体を暖める魔法を使いつつ、会話までするのは難しいのです。


「あ、はい。」


少しそっけない感じの返事でしたが、セイン坊ちゃまは魔法に集中するユーシアお嬢様を見ながら満面の笑みを浮かべました。

知っていることは少ないですが、ユーシアお嬢様についての話は父親からたくさん聞いてきたのです。

きっと寒がりの自分のために密かに魔法を使っているのだろうと考えたセイン坊ちゃまは、乏しい体力ですが、それなりに速く歩き始めました。

少しでも早く到着して、ユーシアお嬢様が魔法を使わなくて済むようにと。


「ふぅ...寒くも暑くもない温度に合わせるのは思ったより大変なんだな!」


いつの間にかユーシアお嬢様とセイン坊ちゃまは暖かい部屋に到着しました。

この部屋はユーシアお嬢様が一人でティータイムを楽しむときに使う場所です。

月に一度くらいしか使わない場所ですが、いつも清潔に管理されている場所です。


「...早い!」

読んでいただき、本当にありがとうございます!

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