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5年後 その2


アンネは戸惑いました。

なんということでしょう。奇想天外な発想で魔法界を騒がせた魔法の異端児にして天才魔法使いであるユーシアお嬢様が、回復魔法を使うことを忘れるほどとは。

どうやら今回は確実に深刻に痛んでいるようです。


「ヒール。」

「...」


ユーシアお嬢様はアンネの言葉を聞いて回復魔法を使いました。

徐々に痛みは引いていきました。

しかし、ちょうど引く程度で終わりでした。

魔法が終わると、また痛みが戻ってきたのです。

つまり、この痛みは回復は可能ですが、常に発生する種類の痛みだということです。


「うぅぅ...!」


なぜかユーシアお嬢様は涙が止まりませんでした。

まあ、考えてみれば当然のことですね。

理由は分からないのに痛みはひどく、魔法を使って治療しても痛みを一時的に和らげる程度。

何も分からないユーシアお嬢様にとって、これは大きすぎる試練でした。


「まだ痛いんですか?」


ローズはユーシアお嬢様の表情がだいぶ楽になったのを見て尋ねました。

やはり心配なのでしょう。

いつもマイペースで天真爛漫なユーシアお嬢様がボロボロ泣くほど痛いなんて、誰が心配しないでしょうか?

幸いにも、ユーシアお嬢様は今や答えられるほど良くなりました。


「まだ少し痛いけど、この程度なら耐えられるわ。」

「一体どんな実験をしたんですか?」


相変わらずローズの考えは実験の副作用の方に傾いていました。

実際に自分も経験して通り過ぎた時期だったのですが、やはり人は人ですからね...

絶対にそっちには考えが及ばないのでしょう。


「ローズ、お嬢様は私が部屋にお連れします。あなたはライナ様にこのメモを渡してくださいね。」


アンネはメモ帳に何かをサッと書いて1枚破り、ローズの手に握らせました。

混乱している状態のローズに言葉をそのまま伝えさせるのは難しそうだったからです。

それほど博士と助手は混乱していたということです!


「え?はい!」


ローズはアンネが渡したメモを持って、すぐにライナ様のいる場所へ消えていきました。

ああ。ローズはもう見られないのでしょうか?

もちろん冗談です。

メモを渡せばすぐに戻ってくるでしょう。


「お嬢様。まずはお部屋に行きましょう。」


アンネは今やずいぶん重くなったユーシアお嬢様を抱き上げました。

抱かれる年齢はとっくに過ぎていますが、今は直接歩くのは無理そうでした。

ユーシアお嬢様は久しぶりにアンネの胸にすっぽりと抱かれました。

なぜかお母様のライナ様よりもアンネに抱かれることの方が多いようですね!


「アンネェェェ...」

「大丈夫ですから、心配しないでください。ユーシアお嬢様。」


すでにアンネはユーシアお嬢様が痛む理由をある程度察していました。

実はユーシアお嬢様の年齢を考えれば遅すぎるわけではありませんが、少し遅めの感じはあります。

あまり遅くない時期に訪れたということは、ついにユーシアお嬢様が大人になっていくという意味でもあります。

アンネの立場からすれば、むしろ少し喜んでもいいのではないでしょうか。


「これって一体何なの...ひっく、魔法を使っても痛みが消えないよぉ...」


ユーシアお嬢様が分からないのは当然のことです。

もちろん、この程度で深刻に痛むのは少し変ですが、個人差がありますからね。

かなり理想的な体型をしたライナ様を見ると、症状も似ているのではないでしょうか。

もちろん、それはライナ様に直接聞かなければならないことですが!


「ローズがライナ様をお連れしてくれば、すべて分かりますよ。」


トントンと背中をたたいてユーシアお嬢様をなだめるのは、アンネも初めてです。

やはり落ち込んだ姿を見せることのないお嬢様ですからね。

普通、ユーシアお嬢様は大変なことを自分で全部解決してしまうので、仕方ありません!


「ずっと魔法を使っているのに痛いの。」

「大丈夫です。だからもう泣かないでください。」


アンネは笑ってはいけないと思いながらも、口角が少しずつ上がっていくのを止められませんでした。

こんなに混乱して泣いて甘えるユーシアお嬢様を本当に初めて見たし、こんな弱い姿を見せることも初めてだからです。


「さあ、もう着きました。」


ユーシアお嬢様の部屋に到着したアンネは、ドアを開けてくれる他のメイドたちに着替える服を準備するよう指示を出しました。

ローズがライナ様を連れてくるにはまだ時間がかかるでしょうし、その間に痛む部分を確認する必要もありました。


「まずはボタンだけでも外しましょう。」


体中から冷や汗が出るほど痛みが激しかったのか、ユーシアお嬢様の服は少し湿った感じがしました。

突然感じた激痛で体中が緊張したようですね。

アンネは慎重にユーシアお嬢様を椅子に座らせ、痛いところに触れないよう注意しながらボタンを外しました。


「触れるものがないからちょっと楽になったみたい。」


やはりそうでしょう。

少なくとも激しく動くときのように何かが触れるわけではないのですから。

ユーシアお嬢様は今やちょっと楽になった顔になりました。

本当に良かったです。


「ユーシア!大丈夫なの!?」


本当に久しぶりに見る顔と言えるでしょう。

強烈な手首のスナップを持つこの方は、ユーシアお嬢様の母上であるライナ・ミラージュ公爵夫人です!


「おかあちゃあああん...」


普段なら大人しく「お母様」と呼んでいたお嬢様は、ライナ様の顔を見るなり再び涙が溢れ出しました。

今日に限って涙腺が一生懸命働いて忙しいですね!


「まあ、うちの娘じゃないみたい。」


いつもと違う行動にライナ様も非常に戸惑いました。


皆さん不思議に思うかもしれません。

確かにそうでしょう。

ユーシアお嬢様が一度でもライナ様を「おかあちゃん」と呼んだことがあったでしょうか?

おそらくないでしょう。

当然です。

ユーシアお嬢様は言葉を覚え始めた頃から、ライナ様だけは「お母様」とかしこまって敬称で呼んでいたのですから!


「アンネ...!うちのユーシアが初めて私をおかあちゃんって呼んでるわ!」


ライナ様は本当に驚きました。

ユーシアお嬢様が生まれてから一度も聞いたことのない「おかあちゃん」という呼び方は初めてです。

もちろん、呼び方がそうなだけで、お嬢様が距離を置いていたわけではありません。

ただ、心の片隅に物足りなさがあっただけです!


「は、私も初めて見ます。」


戸惑ったのはライナ様だけではありませんでした。

もう10年近くユーシアお嬢様の世話をしてきたアンネにとっても、こんなことは初めてでした。

本当に今日は何か凄いと思えるほど変なユーシアお嬢様を見る日です!


「うえぇぇん...」


何がそんなに悲しいのか、ユーシアお嬢様は一生懸命泣きました。

実はユーシアお嬢様も戸惑っているのは同じでした。

普段と違って感情というものが言うことを聞かなかったのです。

ネガティブな考えが浮かぶような種類ではありませんが、なぜか少し悲しくなるようです。


「あ、ええと。そうね!とりあえずお母さんが抱っこしてあげようか?」

「ひぃっ...」


繰り返しますが、ここにいる全員が戸惑っています。

とりあえずでも悲しそうに涙をポロポロこぼす娘を見ると、ライナ様もまず慰めるのが先だと思ったようです。

ライナ様が慎重に抱きしめると、ユーシアお嬢様は母の胸から感じる温かさに少しずつ落ち着き始めました。

やはり母の胸は違います!


「あの...アンネお姉さん?お嬢様があんなに泣くのは、エリヤ子爵家の坊ちゃまが大病を患われた時以外見たことがないんですけど...」


いつ入ってきたのか分からないほど存在感が薄かったローズは、アンネに話しかけました。

もちろん、アンネは頷きながら答えてくれました。


「私も10年以上お仕えしてきて初めてよ。」

「...え?」


二人でこんな会話をしているのとは関係なく、ライナ様は自分の胸にぎゅっと抱きついてヒックヒック泣き止もうとするユーシアお嬢様の背中をさすりました。

普段こんな風に慰める機会がないお嬢様なので、ライナ様の手つきは少しぎこちなかったです。


「そう、大丈夫よ。お母さんだからね。」


何か4歳の幼い子供をなだめているような感じですね。

今のユーシアお嬢様は12歳になったというのに!

何か悔しい気持ちになっても不思議ではありませんが、今のユーシアお嬢様にはそんなことを考える余裕もありませんでした。


「おかあちゃん...すごく痛いの...」


今やようやく泣き止み始め、ユーシアお嬢様はちゃんと言葉が出始めました。

まだ完全に落ち着いたわけではありませんが、この程度なら十分話せるくらいです。


「どこがそんなに痛かったの、うちの子?」


せっかくなので、ライナ様はユーシアお嬢様を完全に幼い子供として扱うことにしたようですね。

身長もだいぶ伸びましたが、相変わらずライナ様にとってユーシアお嬢様はただの赤ちゃんに見えるのです。

特に今日のような日ならなおさらでしょう!


「...むね...」


ユーシアお嬢様はいざ話そうとすると、急に恥ずかしさが押し寄せてきたようです。

普段の堂々とした態度とは違って、蟻が這うよりも小さな声でもごもごと言葉をつぶやきました。


「え??」


よく聞こえはしませんでしたが、ライナ様はローズから受け取ったメモの内容を見ていたので、すでに知っていました。

だからこそ自ら直接ユーシアお嬢様のもとに駆けつけたのです。

読んでいただき、本当にありがとうございます!

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