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プロローグ

ここはエラ帝国。

争いや諍いのない、とても平和な世界です。

とにかくそうです。

エラ帝国には偉大な建国の功臣の家系があります。

その名はミラージュ公爵家。

魔王を倒した4人の勇者の一行の中で、「大賢者」という名で呼ばれた魔法使い。

ユースティス・ミラージュの末裔!

エラ帝国で誰も及ばない、伝説そのものの魔法使いの家系!

ミラージュ公爵家に本当に大変なことが起こってしまいました。

「ユーシア!」

緑色の髪をした少女がいます。

少女は邸宅...いいえ、巨大な城の真っ白な廊下に倒れていました...

いいえ、これも違います。

まるでカエルのように伏せています。

床に流れている血を見ると、本当にひどく怪我をしたようです。

少女に向かって巨大な筋肉を持つ男が走ってきました。

倒れた少女の姿と床に流れる血を見た彼の顔色は青ざめてしまいました。

「ユーシア!大丈夫か!」

男は少女を「ユーシア」と呼びました。

そうです。

少女の名前はユーシア・ミラージュ。

ミラージュ公爵家のたった一人の一人娘であり、次期ミラージュ公爵になる少女です!

「...」

「こ、こんなときではない!ヒール!」

男はユーシアお嬢様の父親であるミラージュ公爵様です。

まず怪我をしたユーシアお嬢様のために素早く治癒魔法を使いました。

これくらい簡単にできるのを見ると、さすがにこの方も大賢者の末裔という名にふさわしいかもしれませんね!

ユーシアお嬢様の額にあった傷は魔法であっという間に癒えました!

「あ、お嬢様!」

「何があったのですか!公爵様!」

廊下に響き渡る声のせいか、ユーシアお嬢様の周りには人々が集まってきました。

その短い時間にずいぶん集まりましたね!

これは本当に大変なことだという感じです!

「ユーシア!どうか目を覚ましてくれ!」

体格に似合わず嗚咽する公爵様の声は本当に響きました。そして...

数多くの視線が自分に集まっているという事実をユーシアお嬢様は知っていました。

なぜなら。

「いや!こんな状況でどうやって目を開けろっていうの!?」

ユーシアお嬢様は最初から気絶などしていなかったのです。

血が出るほど強く頭を打って額が裂け、血がどんどん流れていたのに。

度を越すほど丈夫な体が特徴のユーシアお嬢様は気絶などしたことがありません!

むしろ今の状況をどうやって脱出するか、賢い頭を回転させて考えていたのです!

「ユーシア!」

「もう呼ばないで!もう!!」

ユーシアお嬢様は体を揺すり続ける父親が少し恨めしかったです。

せめて静かに寝室に寝かせてくれていたら何でもないように目を覚ましたふりくらいできたのに...

残念ながら誰もユーシアお嬢様を移動させる考えはありませんでした。

「うっ...私が、お父さんが悪かった!」

公爵様は相変わらず目を開けないユーシアお嬢様を抱きしめて嗚咽しました。

まさか健康な娘が気絶して意識を取り戻せないなんて考えたこともなかったからです。

「分かったら...移動させてよ...」

もちろんユーシアお嬢様はどうか移動させてくれることを待っていました。

そうして心配と涙でいっぱいの時間がしばらく続きました。

ユーシアお嬢様はもう限界でした。

ただ気絶したふりをして、目を閉じているだけでしたが、心配するだけの態度に諦めたくなりました。

「もう起き上がって自分の足で歩いていこうかな」

そっとそっと様子を見ながら目を開けようとしたその時でした。

「何かあったのですか?」

どこからか聞こえてきた見知らぬ声がユーシアお嬢様の耳をくすぐりました。

澄んで清らかな声は、まるで幼い天使のような若々しい声でした。

ユーシアお嬢様はこの声の主がとても気になりました。

「セイン君!」

「...君?男の子?」

好奇心を解消してくれたのは他でもない公爵様でした。

公爵様が呼んだ名前はユーシアお嬢様も既に知っていました。

セイン・エリヤという名前はユーシアお嬢様の婚約者になる人の名前だったからです。

「あ、何でもありません。ただ...」

公爵様は言葉を濁しました。

そうですよね...

婚約する相手のユーシアお嬢様が婚約を拒否しようと脱出を試みて転んで頭を打って額が裂けて血がどんどん出て気絶したという事実をどうやって言うのでしょう!

「そうですか?」

少年、セイン・エリヤは静かに微笑みながらユーシアお嬢様の頭に手を置きました。

柔らかい手が額に触れると、ユーシアお嬢様はますます気になりました。

このような可愛らしい声を出す少年がどんな風に見えるのかと。

「...ただ気になっただけよ。とにかく!」

ユーシアお嬢様は誰にも聞こえない悩みにすぐに答えを出しました。

これで目を開けて婚約者になる少年、セイン・エリヤの姿を見るだけです。

「本当に申し訳ない...」

「今だわ!」

気絶した状況から目覚めなければならないという演技を考えもせずに、ユーシアお嬢様は目をパッと開けました。

目の前に見えるのは見慣れた父親の顔と初めて見る女の子の顔でした。

「...女の子?」

「そういう声をよく聞くんです...あはは」

服を着替えさせるだけで...いいえ、そのまま男性の服を着ても女の子にしか見えない少年でした。

セイン・エリヤは気まずそうに笑いました。

キラキラと光を放ち、視線を奪う柔らかな金髪。

吸い込まれそうなほど深い何かを秘めた柔らかな緑色の瞳。

なんとなくユーシアお嬢様と正反対の、温かい感じがする少年でした。

「可愛い...」

ユーシアお嬢様は少年を見て目を輝かせました。

「...」

ほんの少し、本当にほんの少しの間静寂が流れ、ユーシアお嬢様は少年に向かって親指を立てました。

「可能」

「え?」

「超可能!」

その場に集まった誰もユーシアお嬢様が言ったことを理解できませんでしたが、ユーシアお嬢様はそんな些細なことは気にせず満足そうな顔で気絶しました。

読んでいただき、本当にありがとうございます!

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