私が月だった頃 『ロールケーキの食べ方』
物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには、1つずつ名前と物語があります
手にとって下さった方が、楽しく笑顔で物語の続きを作っていってもらえるような、わくわくするリボンを作っています
関西を中心に、百貨店や各地マルシェイベントへ出店しております
小説は毎朝6時に投稿いたします
ぜひ、ご覧下さい♡
Instagramで、リボンの紹介や出店情報を載せておりますので、ご覧下さい
hhtps://www.instagram.com/iroit0
一通り買い物は済んだ
後は、家に帰るだけ
注文していた炊飯器を取りに、今日は少し遠くのショッピングモールへと出掛けている
ここへ来ると、必ず足を踏み入れたくなる場所がある
百貨店のスイーツコーナーだ
今日は、ここに来ると分かってから、無性にケーキが食べたい
来るまでの道のりも、炊飯器を取りに行っている間も、頭の中を駆け巡るのは、私の好きなあのロールケーキ
ふわふわの生地に包みこまれた、優しい甘さのもったりとしたクリーム
一口、口の中へと入れれば、中に入っている黒豆の存在が口いっぱいに広がり、ふわっと鼻から抜け出ていく上品な薫り
想像しただけで、口の中が幸せになる
『絶対食べよ。買おう!』
何の意気込みかは分からないが、私は勢いよくスイーツコーナーへと向かう
賑やかな食品コーナーは、各店舗ごとにオススメの食品を並べられ、季節限定のものには、目立つようにポップが置かれていた
今は桜の季節なので、桜に関連したものが多い
豚まん、スープ、おこわ、お惣菜、パン
うっかり目移りしそうになるが、今日の目当てはロールケーキ
私は、人を軽やかに避けながら颯爽とお目当てのケーキ屋さんの前へ行く
途中、他のケーキ屋さんに惹かれつつも、無事到着する
お目当てのロールケーキの隣には、季節限定のロールケーキ
これは迷う
だがしかし、今日の口の中は、いつものロールケーキなのだ
葛藤する間もなく、私は勢い良く店員さんにお願いする
『ロールケーキ一本下さい』
家までの道のりがいつもより長く感じる程、私は心を浮つかせる
早く食べたい。早く口の中を、この甘いクリームと黒豆でいっぱいにしたい。
信号待ちがどれほど長く感じるかは、言うまでもない
家に着くなり、足早に玄関を目指す
ここからは、時間と気持ちとの勝負だ
まず、お手洗いへ行き気持ちを整える
紙袋から箱を取り出しテーブルに置く
『私が月だった頃』で髪の毛をとめる
そしてお皿を出すかを考えた末、このまま食べることを決めた私は、フォークを一本手にする
はやる気持ちが〈お皿に移し包丁で切る〉という工程をなくしたのだ
さっそく箱を開け、ロールケーキと感動のご対面
フィルムに包まれ可愛くこちらを向いている
そろりとフィルムを剥がし、ゆっくりフォークを差し、一口すくい取る
ふわふわの生地は一瞬下まで沈み柔らかな弾力と共に、少し形を崩しながら元へと戻る
口へと運ぶ手が急く
大きな口を開け、私は念願の君を口にする
目を瞑り、口いっぱいに広がる黒豆の風味と、生クリームの軽くもったりした感覚、そして生地のふっわふわの食感を堪能する
『うますぎ!!』
思わず、声に出す私は、そのまま味わう事も忘れ次から次へと手が伸びる
あっという間に、半分食べ終わった私は、ハッと気が付く
子どもに残しておいた方がいいかもしれない。
そう、私には2人子どもがいるのだ
こっそりこのまま全部食べる予定だったのだが、やはりここは母
美味しいものは可愛い我が子にも食べさせたい
まだ食べたい気持を抑え、あたかも半分しかなかったかのように、お皿へと移す
『うん。ばっちり』
夕飯後のデザートはロールケーキで決まり
これでよし!と思う私は、まだ気が付いていなかった
上の子が、私のアカウントをフォローしている事に
『ママ?今日ロールケーキ半分食べたの?』
そう聞かれたのは、夕飯前の事だった
終
最後まで読んで下さり、ありがとうございます
色々なお話を書いておりますので、どうぞごゆっくりとしていってもらえると嬉しいです
また明日、6時にお会いしましょう♪