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賢者の恋文  作者: 青木りよこ
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拝啓 旦那様


お返事有難うございます。

しっかり眠っていますし、お野菜もお肉もお魚もしっかり食べています。

体調もずっといいです。

私元々健康にだけは自信があるんです。

姉達が風邪をひいても私だけはピンピンしていましたから。

それだけは心配なさらないでくださいね。

暑いのに毎日大変ですね。

貴方は自分のことだけ考えて下さいね。

でもそんなに大変な貴方が私のことを少しでも思い出してくださっているのがとても嬉しいです。

気持ちが繋がっているんだっていうのがわかるんです。

貴方は傍にいないけど私はとても幸せです。


最近は煮込み料理ばかり作っています。

暑いのにこの話題は駄目ですよね。

でもフィッシュチャウダーがすごく美味しくできたんです。

早く貴方に食べさせたいです。

私お魚を捌けるようになったんですよ。

凄くないですか?

帰ってきたら美味しいカルパッチョを作りますね。

婆やさんと釣りに行ったんです。

大きな鯛を釣ったんですよ。

貴方に見せたかったです。

私の記憶を貴方に移すことが出来たらいいのに。

それか記憶だけ取り出してリボンをしてプレゼントにできたらいいのに。

そうしたら貴方の記憶も取り出して、全て見てみたい。

貴方のこれまでを。

これからはずっと一緒にいられるから、今までの楽しかったこと悲しかったこと全部知りたいです。

私は今までこれといった悲しい記憶はありません。

両親も祖父母も健在ですし、私って本当に幸せだったんですね。

今もとても楽しく暮していますし、貴方に申し訳ないです。

もっと早くにこの縁談があれば良かったですね。

もっと早く貴方の傍に行きたかった。

そうしたら今もっと寂しくなかったかなと思います。


起きている間貴方のことばかり考えています。

貴方は今何をしているんだろうとか、ゆっくり眠れているのかなとか、お腹一杯食べられているのかなとか、苦しくないかな、痛いところはないかなとか、会いたいなとか。

貴方に会いたいです。

会えたら嬉しくて泣いちゃうと思います。

寝てばかりで貴方を退屈させるかもとおっしゃいましたが、寝顔を見て楽しむから気にしないでください。

お家にいて下さるだけで私には十分です。

でもお祭りは連れて行って欲しいです。

お祭りなんて生まれて初めてです。


今日はドラゴンのような雲を見ました。

この雲が貴方が戦っている島国まで行って悪魔を覆いつくしてくれたらいいのに。

最近お家にいると小さい頃の貴方がいるような気がするんです。

振り返れば小さな貴方が食堂の椅子に腰かけて不満げにポトフの人参を食べている気がするの。

だって貴方はずっとこの家にいたんですものね。

悲しいけれど私が来るまでずっとこの家で普通に生活していたんですものね。

早く帰ってきて欲しいです。

そのうち幻の貴方に話しかけちゃいそう。

貴方魔法で魂だけ私の所に帰って来りできたりしませんか?

ごめんなさい、無理ですよね。

魔法はとても体力を使うって言ってましたもんね。

魂だけの貴方と初めましてするのはちょっと違いますよね。

早く貴方の顔が見たい。

声を聞いてみたい。

貴方は背がうんと高いのだからどれだけ手が大きいのだろう。

私と比べっこしましょうね。

歩幅もどれだけ違うんでしょうね。

一口だってきっと大きいはずですね。

早く会いたい。

まだ会ってもいないのに、貴方のことが大好きです。

毎日どんどん好きになるの。

貴方もそうだったらとても嬉しいけど、本物の私にがっかりしちゃったらどうしようって思ったりもします。

でもそれでも私達上手くいく気がします。

本当に早く帰ってきて下さい。

待っています。

でもどうか無茶だけはしないで。

貴方の無事が第一です。

頑張ってください。

どうか無事に帰ってきて。

愛しています。


貴方の妻アイリスより 愛をこめて



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