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教え8 説得ですか?

「……あっ。フェルルゥ~。お帰りなさぁ~い」


「ええ。ただいま戻りました。………そちらの方々は、最近噂の回収業者さんたちですね」


「ええ。よくご存じですね。私たち、回収業者のハレカイというものです。お嬢様のお耳にまで届くようになるとは、光栄の至りでございます」


私が視線を向けると、そこには実母であるマーハお母様とねずみ色の作業着を着たお方々とが。最近噂で聞く、回収業者さんのようです。

回収業者と簡単にいますが、業務としては使えなくなった魔力で動く器具を回収なされています。もちろん、使えるモノも回収されているようですが。


「お噂はかねがね聞いておりますよ。何でも、相当な儲かりようだとか。我が家の領地から、そのような業者が出てくることを非常に嬉しく思います」


「はははっ。非常に頭の良いお嬢様ですね。確かに、私たちの収入が大きければ領地の得る税金も上がるでしょうし、お嬢様の家にも喜んで頂けるでしょう」


何が言いたいかと言えば、この方々が儲かれば、その分諸々の税金により我が家も儲かる。と言うことです。我が家が一方的にお金を貰っている感じですね。回収業者さんたちが、この領地で仕事をするメリットは特にないです。

………表面上は、ですけど。


「それでは、私たちはこの辺りで失礼致します」


「ええ。回収して貰えて助かったわぁ~」


回収業者さんは、私にも軽く会釈をして帰っていきます。あの方の自信がありそうな顔から考えても、相当儲けていらっしゃるようですね。回収業者さん、そして、その創業者である1号さんは。


はい。じつは、この回収業者さんを始められたのは、めでたい最初の信者さんでもある1号さんなんですよね。私が教えた要素から、元手の必要ないお仕事を思いつかれたようです。

具体的に説明しましょう。回収業者さんの活動は、以下の2つです。


・使わなくなった、もしくは使えなくなった魔法の道具を回収する。

・回収した魔法の道具を修理して、必要とされている方に定価で販売する。(こちらの事業は初期の元手がない段階だと、まだ使える中古品を安価な値段で売っていたようです)


ただ、これは簡単にまとめただけですから、簡単なモノだと侮って貰っては困ります。1号さんもかなりの努力をされたようですから、他にも色々とされているようですよ。……まあ、全てご本人から聞いた話なんですけどねぇ。

と、それは良いとして、マーハお母様とお話をしましょう。


「何か持って行って貰ったのですか?」


「えぇ。そうよぉ~。もう使わなくなった時計とかを持って行って貰ったわぁ」


「なるほど。それは良かったですね。……あっ。これ、頼まれていたモノです」


私はお使いをして買ってきた物をお渡ししました。それからは部屋へと戻り、最近ずっとやっている計画の考案を行います。1号さんにお願いしたことが成功すれば我が家は復興するので、それが失敗した場合の対応と、成功した場合のその後を考えるのが主ですね。

ただ、ここまで来ると、予想できない要素が多すぎるのであまりハッキリした計画は立てられません。


そして、すぐに計画が崩れる日がやってきました。


「……高値で協会銀貨が売れるらしい!今すぐに売ってくる!」


「……はぁ?」


ファチーザお父様は、私との約束を忘れしまったようなのです。私が許可するまで、教会銀貨は売らないという約束を。

娘との約束を忘れるとは何事でしょう。私も怒ることはあるんですけどねぇ。


「お父様。まだ売らないで下さい。高く売れると言っても、元通りにはならないのでしょう?」


「なっ。フェルル!元通りにするのは高望みだよ!できるだけ傷を浅く出来る方法を考えないといけないんだ!将来のためにもね!!……さぁ。こうしちゃいられない!今すぐ行ってくるよ!」


本当に困ったお父様です。そんな成り行きに任せていて、領主としてやっていけると思っているのでしょうか。人の上に立つ資質がなさ過ぎますね。

おっと、そんなことを考えている場合ではありません。ファチーザお父様が、外に出ようとしています。


「お待ちください。この間言ったとおり、ここで売られてしまっては困ります。計画の一部をお話ししますので、少しお待ちください」


そんな言葉と共に、真剣な瞳を向けておきます。お父様は怒ったような顔で私の顔をご覧になりました。それから怒りのこもったお言葉を発せられようとしましたが、私の真剣な表情を見て口を閉ざされます。


「……はぁ。分かったよフェルル。可愛い娘の頼みだ。話くらいは聞いてあげるよ。でも、あんまり時間をかけないでね。こんな良いチャンスを、みすみす逃すわけにはいかないんだから」


「ええ。では、簡潔にお話ししましょう。これから我が家がするべきなのは、……………」


私は考えていた計画をお話しします。最初は困った顔をして聞いていたお父様ですが、聞いていく間に表情が変わっていきます。途中からは激しく困惑しだし、私が言えるところまで言った頃には、


「…………ハハハッ。あまりにも、あまりにも完璧な計画だね。聞いた限り、何も悪いことはなさそうだよ。少し悩むけど、フェルルの話に乗ろう。教会銀貨を売るのはやめだ」


「納得頂けたようで何よりです。この計画はタイミングが重要ですので、そこを間違わないでくださいね」


「ああ。もちろんだよ」


良い笑顔を浮かべて、ファチーザお父様は頷きます。その顔には、自信があふれていました。自分が大きくなれると感じて、興奮されているようです。お父様は。こんなにやる気あふれる表情もできるのですね。少し印象が変わりました。

決して悪い意味ではなく、……見直した、とでも言いましょうか。

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