教え6 昔の後悔ですか?
「はい。カガラお母様。問題なく購入できました。幾つかの野菜を店員の方に値引きして頂いたりしたので、お金が少し余っています。あと、他にもおまけなどを幾つか頂きましたよ」
そう伝えて、私は余ったお金と商品を渡しておきます。カガラお母様は、少し苦笑いのようなモノを浮かべていますね。この表情の意味はよく分かりません。
「どうかされましたか?」
「いえ。フェルルのこのおまけ具合には、驚かされるなと思っただけです。シアネやタウにお使いに行かせても、ここまでのおまけや値引きはされませんから」
「……………」
私は、無言で2人の方へ視線を向けます。すると、その私の動きに合わせて綺麗に目を背けられました。
これは、確実にやってますね。
きっと、値引きして貰ったりした分で、おやつを買って食べたりしているのでしょう。……まあ、そこまで責めても仕方ないですね。値引きは2人が自力で勝ち取った分だと考えれば、その報酬としては十分でしょう。
「あぁ。フェルル帰ってきたか」
「フェルル~。おかえりなさぁ~い」
私が姉妹に視線を向けていると、更に実母の方のお母様と、お父様の2人までやってきました。もう家族勢揃いですね。因みに、実母なお母様がマーハさんで、お父様がファチーザさんです。
……ん。お父様が、少し寂しそうにしてますね。これは、私がお使いに行くたびに言う台詞が聞けるでしょうか。
「すまないな。フェルル。貴族の子供なのに、お使いなどに行かせてしまって」
「いえ。構いませんよ。また教会銀貨を購入してしまったことを後悔されているのですか?」
「はははっ。また、か。………まあ、そうだ。フェルルの言うとおり、私はなぜあのときに、あんな決断をしてしまったのかと思ってね」
落ち込んでいるお父様の方に、マーハお母様がそっと手を置きます。さらに、カガラお母様必死に色々と言って、励ましだしました。夫婦愛ですね。
私たち子供が蚊帳の外に置かれている間に、お父様が後悔している理由をお伝えしましょう。
「旦那様なら、すぐにでもまた元の地位に戻れます!」
「そうよぉ~。それに、戻れなくたって、私たちは今で十分幸せよぉ~」
お父様は昔そこそこの大きさの領地を持っており、そこそこの地位にいました。侯爵という地位だった層ですよ。そこそこなイメージの名前ですよね。
まあ、それは良いとして、そんなお父様の下にとある方がいらっしゃいます。それが、この家が落ちぶれていく原因である、教会の教皇さんです。
「教皇様だって、旦那様のことをお忘れにはなっていないはずです!」
「そおそぉ~。教皇様が教皇になれたのは、あなたの影響だって大きかったのですもの~」
まだその頃は教皇ではなかったようですが、次期教皇としてとても注目されていたわけです。
そんな方が、突然この家へやってきました。その時のお父様は大喜び。勝ち馬に協力できるかもしれないと、考えていたようです。
そんな興奮状態のお父様へ、教皇さんはとある提案をされました。それが、お父様の口から少し出た、教会銀貨を買わないか、と言うこと。
「だが、俺が教会銀貨を買わなければ、フェルルたちに迷惑をかけることもなかったはずだ」
教会銀貨というのは、教会が聖なる通貨と言って発行している銀貨です。全てが純粋な銀で作られており、さびにくくなる魔法が掛かっているとのこと。
それを発行するので、お父様にはそれを買って会と共にあることを示して欲しい、と教皇さんは言ったそうです。期間限定のモノにする予定で、価値もかなり上がるとまで言ったそう。それを聞いて、お父様は促された通りに、家の財産の半分以上を使って教会銀貨を買ってしまいました
ですが、結果として沢山の人が買ったため、教会から勝った値段の1割以下の価値にしかならず、沢山の財産を失いました。そんな我が家は、土地を売ってどうにか財産は手に入れたものの、残ったのはたいした材も生み出さない、非常に狭い領地。他領に比べたら農業生産量が多いですが、言い換えると工業化が遅れているなどという言い方も出来ます。
「お父様。嘆いても仕方がありません。今は、この領地を安定させて、少しずつでも成長させねば」
「お、おお。そうだな。だが、そんなこと、俺が教会銀貨を買わなければ」
私もなだめますが、ダメですね。娘の声も届きませんか。少し寂しいです。まあ、普段からこうなので言うほど寂しくはありませんが。
………ただ、いい加減この台詞を聞いて時間を浪費してしまうのももったいないですね。今日は、いつもとは違う方法で落ち着かせましょう。
「………分かりました。では、私が利益に変えてみましょう。教会銀貨の価値を高めるので、私が良いと言うまで絶対に売らないで下さいね」
「え?あ、」「良いですか?」
「………はい」