教え41 私たちの戦いはこれからなのですか?
「た、大変だぁ!!あっちに剣を抜いてる奴らがいるぞぉ!」
「「「っ!?」」」
その声で、私以外の方は驚かれたようです。数人の方は、更に私の顔を見て顔を真っ青にされてますね。きっと、私のことを追っていた方々の派閥の関係者なのでしょう。私の暗殺に失敗し、更に私以外の人間に剣を見られてしまったと気付いたようです。
すぐに状況を理解した何名かが現場へ走って行かれました。もみ消してしまいたいでしょうから、ひどいことが行われると予想されますね。それに気付いた他派閥の方々も、すぐに走って追いかけられます。それは、同派閥の方を心配してのことではないでしょう。同派閥の方が争いに巻き込まれていた場合、責任を押しつけて他派閥を蹴落とすチャンスですから。どちらかと言えば自派閥といえどライバルが消えることになるので、同派閥の方が殺されるのは嬉しいはずです。
「わ、私たちも見てきた方が良いでしょうか?」
「い、いえ。いいです。争いが激しくなったら巻き込まれちゃうかもしれませんし、ここでじっとしていましょう」
追いかけようとする方を、リセスさんは止められます。賢明な判断ですね。場合によっては目撃者を全員処分すれば問題ないとかいう、過激な発想を持つ方が出てくるかも知れませんから。前世の信者さんでも、目撃者を全員消せばステルス。なんて言っている人もいましたし。実際に実行されたときは、あきれて物が言えませんでした。どれだけあの後の処理が大変だったことか。
「ぎゃああぁあっぁぁぁ!!!!?????」
叫び声がこちらまで響いてきます。やはり、良くないことが起こったようですね。先ほど状況を見に行こうとしていた方も、今は顔を青くされています。気持ちはよく分かりますよ。リセスさんに止められていなかったら、今頃同じような目に遭っていた可能性が高いわけですから。
その後のことは、語るまでもないでしょう。武器があるといえど流石に人数差はどうしようもなかったようで、剣を持っていた方々は捕まりました。ただ、それで問題が解決というわけにはいきません。
「こいつらが先に剣を抜いてきたんだ!」
「嘘をつくな!お前達がやってきたんだろう!」
襲った方と襲われた方。どちらが先に手を出してきたのかでもめているのです。剣を持っているかどうかで判別できるのでは?と思うかも知れませんが、襲われた方が偶然(?)お強い方だったらしく、1人返り討ちにして剣を奪ってしまったようなのです。それによって、どちらが襲ったのかは分からなくなってしまいまして。
「どちらの言っていることが本当かは分からないし、関係した家を全て潰せば良いだろう」
「ああ。それがいいな」
そんなことを言い出す方まで現れました。今回の件に関わりのない派閥は、敵の家が潰れるだけで被害がないですからね。足を引っ張るには良いタイミングでしょう。
ただ、そんな意見を出すのは関わりのない貴族の方達。当然関係する派閥の方々は、
「ふざけるな!被害者の俺たちが罰を受ける必要はないだろう!」
「お前が言うな!だが、両家を潰すのは納得いかん!」
などと騒いでいらっしゃいます。派閥の方が罰せられれば、当然派閥は汚名を着せられてしまいます。受け入れられる話ではないでしょう。
今は騒がしいだけで済んでいますが、今後は私たちの派閥にも被害が出てくる可能性はあります。皆さんにはきちんとお話をしておいて、自衛にいそしんで頂きましょう。あわよくば、そこで少しずつ教団の方へ……ふふふっ。
「な、何でしょう?フェルルが怖いオーラを出してるんですけど」
「な、何か良くないことが起こりそうですわ」
「きょ、今日は早く家に帰りたいですわね」
「ん?皆さん、顔が青いですけど何かありましたか?」
「「「何でもないです(わ)!」」」
どうしたんでしょうね。リセスさんやエリーナさん達が顔を青くして震えられています。もしかして、自分たちも襲われてしまうかもしれないと怯えているのでしょうか?
「安心して下さい。もし他派閥が何かしてきても、私が対応いたしますので」
「「「アッ。ハイ」」」」
凄く機械的に返された気がします。………気のせいですよね?
その後数ヶ月ほどは大きな動きもなく。私たちは平穏に暮らしていました。貴族の数が半分ほど減ったらしいですが、誤差の範囲でしょう。減った原因は、学園内で殺人事件があったからですね。あれから皆さん過激になって、今では王宮内でも剣を持った方々が斬り合いをしているそうです。いくつになってもチャンバラ遊びは楽しいものなのですね。
さて、そんな何もなかった(私視点では)日々ですが。今日、やっと我が派閥にとって大きな出来事が起きます。なんと、ユーアさんとハルフさんの婚約者が決まったのです。一応説明しておきますと、ユーアさんが第1王女、ハルフさんが第2王女のことですね。そのお二人の婚約が何を意味するかと言えば、我が派閥の半分以上を占めている後ろ盾の心境の変化です。今までは従うようにユーアさんとハルフさんから言われていましたが、婚約が決まってからはそうする必要がなくなった。そのため、我が派閥が大きく弱体化する、と他派閥は見ているそうですよ。勧誘が本格的に行われているようです。
しかし、実態を見てみれば、
「離反者は5人ですか。それも、皆さん子爵」
派閥から離れたのはたった5人。しかも、大して地位の高くない方達です。派閥結成時ならともかく、今の私たちにとってはまったくもって問題ないことですね。どちらかと言えば、メリットの方が大きいかも知れません。
なぜかって?それは、勝った場合に貰える報酬が増えるからですよ。いなくなった方々の受け取る分を、私たちで山分けすれば良いのですから。それに命は取れませんが、敵となるなら領地を減らすくらいは出来ますし。
そして、それに加えて、
「リ、リセス様!是非とも私どもを派閥の末席に加えさせて頂きたくぅぅぅ!!!!」
「「「「お願い致しますぅぅぅ!!!!」」」」
出て行く人数より、入ってくる人数の方が多いんですよね。たまに侯爵家の方なども流れてくるので、着実に我が派閥は強化されていっています。後入りなので、勝った場合の報酬を対して差し上げる必要もありません。
全て私の計画通りです。このまま現状維持を続けても、勝手に5派閥は自滅して下さることでしょう。聖女でも召喚されたらまた状況は変わるかと思われますが、ゲーム通りなら後10年は時間が掛かるはずです。
ふふふっ。これで、いかなる者も神の前では赤子と同じであると証明できるでしょう。教団が中枢を支配する国家が、もうすぐ誕生するのです!楽しみで仕方がありません!!
神よ。待っていて下さい!必ずや私めが国をお渡し致しますから!!
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。短い作品でしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いでございます。
新作に
「私が幸せになる資格なんてない」と言ってる女子に俺ができること
よいう現代恋愛系のものを書いているので、こちらもお願いします!




