教え40 待てと言われて止まるのですか?
「そ、そうですよね。そんな簡単には潰れませんよね。……フェ、フェルルがそう言うなら信じます」
おお。どうやら、私の言葉である程度落ち着いて頂けたようです。まだ不安は残っているでしょうが、ストレスで潰れるほどではなさそうですね。ここまで私のことを信じて下さっていたとは、驚きです。
ただ、ストレス以外で潰れてしまう可能性はありますから、私が今日の夜くらいに対策をしておきましょうか。……いや、今でも良いかも知れませんね。リセスさん以外にも何かされたら困りますし、
「……リセス様。私は少しお花摘みに行かせて頂きます」
「え?あ。はい。行ってらっしゃい?」
私はこの場を離れることを伝え、教室から出ます。後ろから追ってくる気配は4つほど。足音から考えて、全員男性。しかも、十代後半くらいだと思われます。
きっと、誰にも見られないところで壁ドンをして告白されるのだと思いますね。小さくても、この私の魅力は伝わってしまうのでしょうか?私の魅力が怖いです。
などと言う半分冗談は置いておきまして。真剣に追ってこられている方々の対応を考えましょう。おそらく、人気のないところで襲撃するつもりですよね。聞こえてくる音から考えて、腰に剣を下げていそうです。普段はつけていないそんなモノを持っていて、使わないわけがないですよね。どう対処しましょうか?
私が手を出して逆に奇襲すれば対処できると思われますが、下手なことをして疑われたくありません。そうなると、おのずとして残った手は、私が準備しておいた、
「ひぃぃぃぃっ!!!????」
「お、お前達!剣など持って何をやっている!今すぐにそれを捨てろ!!」
悲鳴や、怯えた声が聞こえてきます。剣を持った生徒を、他の生徒に発見させることができたようですね。この学園では、当然ですが剣を持つことは禁止です。どうやって持ってきたのかは謎ですが、私を追ってきていた方々だって見られたらアウトなのですよ。
ということで、私は追ってこられていた方々を他派閥の方に押しつけました。私やリセスさんの派閥の方だと声を上げても潰されてしまう可能性が高いですが、他派閥の方に押しつければそんなことを気にせずに済みます。後の処理は、他派閥が勝手に行ってくれるでしょう。今日の朝から準備していた甲斐がありましたね。あの人達をどう発見させないか、かなり苦労して考えたんですよ。
「おい!お前フェルルだな!止まれ!!」
おっと。何でしょうか?10代後半くらいの男子に呼び止められてしまいましたよ。告白かも知れませんね。………当然冗談です。
おそらく私を追いかけられていた方々のお仲間で、私の足止めでもされるつもりなのでしょう。関わると面倒そうですね。
「あっ。先ほどむこうから争う声が聞こえてきたので、気をつけた方が良いですよ」
「え?………あっ!ちょっ!?待て!!」
待てと言われて待つバカはいない。なんて前世で信者さんが言ってました。私もバカではないと思っているので、待つことはありません。腕を広げて止めようとされますが、隙が多いのですぐにすり抜けられました。
慌てて追ってこられていますが、追いつかれる前に教室へ着くでしょう。
「待て!争う声とは何だ!?逃げるな!!…………ま、待てよ。まさか」
走って私のことを追いかけられていましたが、途中で足が止まりました。どうやら気がついたようですね。お兄さんのお仲間が、問題を起こしているということに。
気付いた後はお兄さんが私に背を向け、来た道を逆走されていきました。一瞬顔を見ましたが、真っ青になっていましたね。ここで犯行が露見されれば派閥の危機ですから、すぐにでも解決したいのでしょう。お兄さんは争いの解決に向かえるし、私は終われなくて済む。Win-Winの関係ですね(絶対違う)。
「……あれ?フェルル。早いですね」
教室に戻ると、予想以上に私が戻るのが早かったようでリセスさんに驚かれました。リセスさんの表情や教室の中の雰囲気から考えて、何が起こったのかはまだ知られていないようですね。
「リセス様。お気を付け下さい。行く途中で言い争うような声が聞こえましたので、大きく何かが動く可能性があるかと」
「ほ、本当ですか!?……わ、分かりました。できるだけ気をつけます」
争う声が聞こえたと言うことは、今後争いが激化する可能性があると言うこと。リセスさんも真剣な表情をされています。安全第一ですからね。
そう思った直後、更にその思いを加速させる出来事が起こりました。
「た、大変だぁ!!あっちに剣を抜いてる奴らがいるぞぉ!」
「「「っ!?」」」
次回、最終回です。




