教え39 宣戦布告なのですか?
『もし成功した場合なのですが、お二方の婚約者が正式に決まるまで後ろ盾の方々をリセス様の支援者にして頂きたいのです。そうしないと、戦力バランスが崩れてお二方の婚姻の前に継承権争いが終わってしまう可能性がありますので』
『……ふむ。それもそうですわね。では、その時まで全力で働くように言っておきますわ』
『ああ。その必要はありません。せいぜい他派閥の牽制や、経済協力をして頂く程度で結構です。リセス様の派閥でしばらく働いた後は、それぞれ好きな派閥に行きたいでしょう?その時に不和を起こすわけにはいきませんから』
『それもそうですわね。……でもそれを考えると、後ろ盾になって頂いている家のことが心配になってきましたわ。新たな派閥に入るとしても、前から派閥に居たものより待遇は悪くなってしまうのではなくて?』
『それは否定しません。しかし、圧倒的なメリットでカバーできますよ。他国に影響力があるお二方が願えば、負けた派閥にいた者も生き残らせることができるはずです。最初にそのメリットを話しておけば、その不遇くらいは受け入れられるでしょう?』
誰を選んでも処刑されることはない。そんな圧倒的なメリットを知った取り巻きの方々も提案に賛成して下さり、私たちの派閥は一時的に強化されたわけです。
とは言え、
「ここまで大きくなるなんて。……わ、私、これ以上大きくできる気がしないんですけど」
「大事なのはこれからです。リセス様、あと5人。まだまだ頑張って頂かなければ。それに、この方々だって機を逃せば離れて行ってしまうのですから、今のうちにしっかりと心をつかまえなければ」
私はそう言いつつ、目線を奥へ向けます。そちらからは、5人の方々がこちらへ歩いてきていました。皆さんそれぞれ違った王子さんの派閥の方々です。
その様子から友好的な感情は見られませんので、これから激しい争いが起きると予想できますね
「そ、そうですよね。………フェルル。これからもお願いできますか?」
「もちろんです。リセス様。必ずやあなた様を、王位に就けて見せましょう」
「お願いします………え?」
ふふふっ。リセス様、驚かれていますね。王位に就こうなどとは思っていなかったのでしょう。しかし、それでは困るのですよ。
私の現在の目的は、トップも教団に所属する教団のための国家を作ることなのですから。
「ちょっ、フェルルゥ~!!???」
「ふふふっ。まだまだ。これからですよ」
私は慌てるリセスさんから目線を外し、無視します。その代わりに、私が目線を向けるのは5派閥からの使者の方々。この間は下につくようにと勧誘をされてきましたし、今回は何が目的なんでしょうね?
リセスさんが派閥を大きくして、調子に乗っていると思われたのか。それとも、今度は対等な関係として関係を結びに来たのか。どちらにせよ、油断してくれるのも協力してくれるのもありがたい限りです。
そんな期待を抱きながら、私が5人の前に立ちますと、
「「「「「王子からの伝言です。下につく気がないなら、確実に潰す、とのことでございます」」」」」
5人揃って、同じ事をおっしゃられました。5人の王子が、じつは仲が良いのではないかと錯覚してしまいそうです。こんなにもそっくりなことをおっしゃられるのですから、血がつながっているのは確かでしょうね。
「「「「「伝言はお伝え致しましたので。それでは」」」」」
私が王子さん達の血のつながりを感じていたら、使者さん達は帰って行ってしまわれました。こちらから伝えたいことがあったわけではないので問題はありませんが、お話しできないのは残念です。それとなく他派閥の方にも、教団への勧誘を行っておきたかったのですけど。
また今度挑戦することにしましょう。
「フェ、フェルル。こ、これって、宣戦布告ですよね?だ、だだだだ、大丈夫でしょうか」
フェルルさんは震えた声で問いかけられます。演技も3割ほど入っていますが、7割ほどは本心からの恐怖でしょう。流石に、5派閥全てを敵に回すのは怖いようですね。
私の言葉で落ち着いて頂けると良いのですけど。
「安心して下さいリセス様。今までどこの派閥も潰れてこなかったのです。5派閥と同程度の力を有したこの派閥が、すぐに崩れるということはないでしょう。今はできるだけ長く生きながらえるよう、守りを固めておくことが大切です」
「そ、そうですよね。そんな簡単には潰れませんよね。……フェ、フェルルがそう言うなら信じます」
おお。どうやら、私の言葉である程度落ち着いて頂けたようです。まだ不安は残っているでしょうが、ストレスで潰れるほどではなさそうですね。ここまで私のことを信じて下さっていたとは、驚きです。
ただ、ストレス以外で潰れてしまう可能性はありますから、私が今日の夜くらいに対策をしておきましょうか。……いや、今でも良いかも知れませんね。リセスさん以外にも何かされたら困りますし、
「……リセス様。私は少しお花摘みに行かせて頂きます」
今日の夜に新作を出します。




