教え37 勝利の道筋は見えていないのですか?
「ではまず、私たちリセス様の供回りの扱いについてお尋ねしたいです。私の場合は色々特殊ですのでなんとも言えませんが、他の方々がどうなるのか確認しておきたく思います」
「なるほど。支援者の代表という立場からは当然の質問ですわね。私の場合は、扱いはそのままリセスの配下。つまり、私たちの配下の更に下という扱いに致しますわ」
「私の場合は、私の配下として扱いますわ。当然、扱いも同じですの」
ユーアさんは、配下のさらに配下として。ハルフさんは、純粋な配下として扱うということです。どちらが良いというわけでもありませんが、どちらにも問題はあります。
まず、ユーアさんが言う用に私たちを下の方の格付けにした場合。必ずリセスさんの取り巻きだった方々の一部から反発が出るでしょう。リセスさんの配下だったとしても、配下であることには変わりはないわけですから。
そして通常であれば、取り巻きの1人である私が率先してそんな人に頭を下げたいとは思わないはずです。だからこそ、ハルフさんの方は現在の取り巻きの方々と同じ扱いにするとしたわけですね。
しかし、その選択にもデメリットがあります。それは、元々の支持層からの批判です。いわゆる、古参と新参者の争いですね。いきなり同列とされると、古参の方々は必ず反発します。どこかのアイドルみたいに、今から応援してくれた人も皆古参だからね!とはならないわけですね。そして、元々の支持層からの支持率低下はかなり痛いです。支持者に熱意がなければ、できるはずのこともできなくなるでしょう。
「分かりました。では次は、どのようにして上に立たれた場合、支持を継続して得るのかについておたずねしたいと思います。短期で決着がつくならまだしも、王位を得るにはかなりの時間が掛かるはずです。そうしていると、派閥内からは下についた方をもう1度王位に就けようという動きも出てくるはず。それを防ぐため、どのような対策を行うのか教えて下さい」
「ほ、ほぅ。かなり厳しいところをついてきますわね。ただ私の場合は、ハルフの支援者も同じように配下の下にしますわ。ですので、発言権は極めて弱いはずですの」
「いえ。私の方が同列として扱うわけですから、対応を早く行えます。下にしていつまでも話を聞かなければ、対応できる猶予がなくなってしまいますわ」
お二人とも痛いところを突かれても落ち着いて考えられていますね。返答が若干答えになっていないところもありますが、この短時間で考えた答えなので仕方がないとしましょう。
それよりも、次の質問ですね。
「では3つめの質問です。どのようにして継承権争いに勝利するつもりなのでしょうか?それぞれ具体的な方法である必要はないので、概要だけ教えて下さい。当然、どのように王子様型に勝利するのか考えておられるのですよね?」
「「う゛!」」
………あ、あれ?おかしいですね。お二人とも顔を歪ませ、視線をそらされてしまいましたよ。このくらいの質問、当然予想されていたと思うのですが。
私でなくたって尋ねると思いますよ。まさか、そんな質問の回答を考えていないなんて、ありえませ
「「勝利の道筋は見えておりませんわ」」
わ、わお。あっさり言われてしまいましたよ。まさか、本当にそれを考えていないなんて。そんな状態なのも驚きですし、そんな状態で私たちに下へつけと言ってきたのにも驚きです。
……ですが、これなら面白いことができるかもしれませんね。私は逆に良い道筋を思いつきました。
「お二方にお伺いしたいのですが、お二方は継承戦に勝利したいのですか?それとも、ただ生き残りたいだけなのですか?」
「………そ、それは」
「………そ、そのぉ」
お二方とも目線をまたそらされます。これは側に1人といえど取り巻きがいるので、本音を言えないといった様子ですね。しかし、その様子からでも分かってしまいます。
このお二方、ただ生き残りたいだけのようですね。王位など大して興味はないのかも知れません。それならば、更に私にとっては好都合。
「それでしたら、少しお二方へ提案があるのですが……」
さあ、始めましょうか。私たち教団が、国の上層部を支配するための活動を。
※※※
「……それだけで良いんですのね」
「提案してみるだけですわよ」
「ええ。それで構いません。提案が通るならそれでよし。通らないなら、それまでにどちらの下へつくか考えておきますので」
提案はあっさりと了承されました。王女のお二方だけでなく、取り巻きの方にも反対の色は見られません。完全に計画通り。一応想定していたルートではありましたし、取り巻きの方々への対応策も考えておいて正解でした。
「それでは、また。結果を楽しみにしております」
※※※
「こ、困りましたわ」
「お父様から、すぐに対応しろとのご連絡が」
「で、でも、この状況をどうにかするのって、かなり難しいんじゃ……」
王女さん達と会談を行った次の日。更に状況は悪化していました。状況と言いましたが、具体的に言いますと経済状況ですね。
なんと、王女さん達だけでなく、
「ま、まさか、全員から経済封鎖を受けるなんて。完全に予想外です」




