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教え33 付いてこられるのですか?

「お、おい!なにこけてるんだよ!早くそいつらをぶっ飛ばせよ!」


3人を抑えていた方の男が叫ぶ。だが、返事は返ってこない。

それによって、彼の不安は激しくかき立てられた。何をされたかは分からないが、確実に何かされている。だから相方が起き上がらないのだ。


「お、お前ら!何しやがった!」


「何、ですか?これが見えないというのなら、あなたたちは厳しい教育が必要となりそうですね。……それでは、また」


女性がゆっくりと近づいていくと、混乱する男は前のめりに。それと共に、3人を押さえつける力も弱まる。3人はあっさりと解放されるのであった。

だが、喜びの前に頭を混乱が支配する。なぜ男達は何かされた風ではないのに倒れたのか。そして、ゆっくりと近づいてくる女性を含め、この人達は一体何なのか。


「……こんにちは。お嬢さん達。いや、こんばんはと言った方が正しいですね」


「「「こ、こんばんは」」」


混乱しながらも、3人は挨拶を返す。それからの行動が早かったのは、意外にも普段はおどおどしているティアであった。2人の前に出て両手を広げ、2人を後ろに隠す。そのまま両手で2人を誘導して、いつでも逃げやすいような位置に移動させる。

この動作には近づいてくる女性も笑みを深めた。思っていたよりも優秀そうな子が来た、と。


「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。私たちは本当に、治安維持のために活動をしているだけですから」


「し、信用できません。助けて貰ったのは感謝してますけど、この人達とグルじゃないとも言い切れないので。しかも、勝手にこの人達が倒れるのは明らかにおかしいです!」


「……あちゃ~。そこですか。出会いのインパクトは大事だと思ったんですけど、それが裏目に出ちゃいましたね。失敗です」


頭をコツンと叩き、女性は舌を出す。所謂てへぺろのポーズだ。見た目が大人っぽいこともあって、微妙な残念感が漂っている。それとともに、男性2人を一瞬で倒す底なしな印象も消え失せた。

だが、だからといってティアが警戒を解くことはない。例え相手が残念だとしても、訳の分からない力を持っているのは確かなのだ。


「ふふっ。良いですよ。行ってしまっても。ですが、帰り道は分かるのですか?それに、今回みたいなことにならないように出来るのですか?」


「っ!そ、それは………」


女性の指摘はもっともであり。ティアは何も言い返すことは出来ない。帰り道だって分からないし、閉じ裏の住民に何かされない保証はない。これから先、安全でいられる保証など何1つとして存在しないのだ。

目の前の女性達も怪しく信用できないが、危険なのは逃げたとしても同じ。そういうことなら、


「ど、どうしますか?」


「ど、どうしますかって、どうしますの?私にはどうすれば良いのかさっぱりですわ」


「私も同じくですの。どうやっても、安全に学園まで戻れる気がしませんわ」


3人には難しい判断だった。承諾しても拒否しても危険はある。選択ができる要素が、何1つとして存在しない。こんな状態で決めろというのがおかしいのだ。

だが、それでも決めなければならない。


「……と、とりあえず、お二人はいつでも逃げられるようにしていて下さい」


「ティアさん?何をするつもりですの?」


「私は、この人達が信用できるのかどうか、少し確認しようと思いまして」


ティアはそう言って歩いて行く。倒れている男性の下へ。

そして、男性の前に座り込むと、手を男性の顔へ伸ばした。伸ばした手は男性のまぶたに触れ、触れた細い指から弱い力が加えられる。すると、その力によってゆっくりと男性のまぶたは開いていき、


「し、白目を、向いてますね。………ということは、本当に気絶していると思って良いのでしょう。私、何かの本で気絶しているときは白目をむくと見たことがあります」


「そうなんですの?ということは、この汚らしいお二人とこの方達は、関係ないと言うことですの?」


現在の状況だと情報がまだ少なく、関係ないと言い切ることは出来ない。ただ男達が気絶していることは確かなため、関係が薄い可能性を引き上げることにはなる。

3人は更に悩むような顔へ。だが、すぐにエリーナが覚悟を決めた顔つきになり、


「私は、あなたたちについていくことにしますわ。もうこれ以上悩んでも良い考えは浮かびそうにもありませんし」


「……ん。着いてこられるんですか?着いてきて欲しいなんて、一言も言ってないんですけど」


「「「え?」」」


3人は困惑した声を出す。だが、思い出してみると確かにそうだ。警戒しなくていいとか、治安維持の活動をしているんですよ、とか言っていたが、着いてこいなどとは一言も言われていない。3人は勘違いをしていたようである。

ただ、その勘違いが女性にとっては都合の良いものだった。何か思いついたような顔をして、女性は、


「まあ、着いてくると言うのなら着いてきても構いませんよ。ただ、目的地に帰り着くの1時間ほど後になると思われますが、よろしいですか?」

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