教え32 酔っ払いに絡まれるのですか?
王都の町となると道も多く、迷うのも当たり前。地図もなしに見知らぬ道を歩くというのは危険でしかない。そんな常識すらリセス達を探す彼女たちには分からないのだ。それはそこまで頭が回らなかったのか、それともそういった教育を受けなかったからなのか。どちらにしろフェルルという者の心の中で、彼女たちの評価が減点されていることは確かだ。
「………ウィ~。ヒック!また金がなくなっちまったぜぇ~」
「飲み過ぎなんだよバカ。……つっても、俺も金は全部使っちまったけどな!」
「「ギャハハハハッ!」」
汚い笑い声。貴族の令嬢である彼女たちには、あまりなじみのない声である。だがそのはずなのに、なぜか不快感がこみ上げてくる。
「ん~?ガキじゃねぇか。でも全員女。しかも、良い身なりしてんじゃねぇか。………コレは良い出会いかぁ?」
「おうおう。そうだなぁ!こんな所にいるって事は、運命の出会いって事だろうよ!」
彼らは3人を発見。直後、顔をいやらしく歪ませた。そして、その大きな腕でを伸ばし、小柄な彼女たちを押さえつける。
「な、何ですの!?汚らしい!」
「は、離して下さい!!」
悲鳴を上げ、抵抗するる3人。だが、この路地において彼女たちを助けるようなモノはいない。まったく反応が返ってこないことに3人は恐怖を抱いた。その顔はみるみるうちに青くなっていき、目には涙も浮かんでいる。
「キャハハハッ!何だこいつら!全然力がねぇぞ。もしかして、良いところの娘だったりすんのか?」
「かも知れねぇな!そんなお偉いガキにお相手して貰えるなんて、俺たち運良すぎだろぉ。教会は嫌いだけど、神に祈っちまうかぁ!」
彼らは3人の怖がる様子で、更にそそられてしまったらしい。彼女たちを抑える力が更に強まる。それとともに、彼らの顔が彼女たちの体に近づいていった。あまりにも強い押さえつけで、少しずつ服に裂け目が出来てくる。
「そんじゃあ、今日は寝かさないぜぇ!ギャハハハハッ!」
「やめて!やめてぇぇぇ!!!」
彼女たちの抵抗に意味はない。男達の手によって、服は少しずつ引き裂かれていく。肌が見えてくるとともに、彼らの笑みは深まっていく。非常に嫌らしい形で。
「や、やめて下さいましぃ」
「は、離してぇ」
「やめでぇぇぇ」
目にいっぱいの涙を溜めながら、3人はもう終わりなのだと悟った。ここで自分たちは終わるのだ、と。だが、
「はぁい。お兄さん達。少し待って下さいねぇ」
呼び止める声。3人と男達が声のした方に顔を向けると、そこには数人の男女が。全員バラバラな服装ではあるが、何かしらで繋がりがあるのはすぐに理解できる。
その中でもひときわ目立つのが、先頭にいる女性。話しかけてきたのは彼女だと全員察する。男達は不機嫌そうな顔をしながら、
「あぁ?何だお前ら。折角俺たちは楽しむところだって言うのによぉ。………ん。待てよ。姉ちゃん綺麗な顔してるじゃねぇか」
彼らの目の色が変わる。話しかけてき彼女は、彼らの好みだったようだ。だが、その視線を向けられた女性は苦笑するほかない。相手をする予定はさらさらないし、そんな気もさらさらないのだから。だが、そうでもしないと彼らは3人の令嬢からどいてくれそうにもない。
ならば、彼女たちを助けるために自分を犠牲にするだろうか。そんなことをしないのが、やってきた彼女たちである。
「お相手はしませんよ。私たちは治安維持を目的に活動しておりますので、そんなことをしても根本的な解決は出来ませんし」
「あぁ?治安維持ぃ?何言ってんだ姉ちゃん。この王都は広いんだぜ。姉ちゃんたちが何かしたところで、治安なんかよくなるかよ!ムダなことはやめて、俺たちと楽しいことしとけってぇ」
「お断りします。私は大して楽しめなさそうなので。今の会話も大して面白くないですし、何をしても面白くなさそうです。そう言う台詞は、本当に私を楽しませることが出来るようになってから言って下さい」
「ったく。冷たい姉ちゃんだなぁ。……でも、嫌いじゃないぜぇ!俺はこいつらを抑えるから、お前は3人抑えとけ!」
「おう!分かってら!」
1人の男がやってきたモノたちに向かい、もう一方が3人を拘束する。やってきたモノたちは後ろの数人が相手をしようと出てくるが、途中で足を止める。先頭にいた女性が、それを制するように手を上げたのだ。それを見た男の顔が歪む。
「あぁ?なんだ?姉ちゃん1人で相手しようってのか?」
「ええ。その通りですよ。あなた程度、私1人で十分です。……って、もう聞こえてないですよね」
そんな呆れた声を出す女性の前へ、倒れてくるモノが1つ。それは、先ほどまで汚い笑みを浮かべていた男だった。白目をむいており、口からは泡を出している。まるで気絶でもしているかのように。




