教え29 あわわっなのですか?
「そ、そうですよね。あわわわわっ」
あわわわわっ!?初めて「あわわ」を実際に使う人を見ました!こういう風な使い方をするんですねぇ。興味深いです。新しい発見があったので、少しお手伝いして差し上げることにしましょう。
「1つ提案するとすれば、お三方に自分たちから行かせてみるのも良いかと」
「ふぇ?ど、どういうことですか?」
「私たちはリセスさんの習った技術で目的地に向かいます。昨日はリセスさんが私を気遣って下さいましたが、今日は普段のペースで行って貰うと言うことですね。そうすると……」
私は軽い説明をしておきます。これでどの程度理解して頂けるかと心配でしたが、予想以上にしっかりと策を理解して下さいました。かなり理解力が高いですよ。最初の頃に感じていた、おどおどしているだけという印象が見事なまでに崩れていっていますね。
「では、その流れも1つの選択肢に入れて考えて頂ければ。あくまでも、私は提案をしただけにすぎませんから」
「そ、そうでうしょね。決めるのは私なんですよね。………じゃ、じゃあ、今話をした方法で良いですか?これが1番、3人との繋がりを深く出来そうなので」
「ええ。構いませんよ。私はリセス様の決定に従うのみです」
私の提案した方法が採用されました。他にもいくつか方法は考えられますが、リセスさんの技術が足りないので無理でしょうね。この方法が1番安全です。
他の考えた方法は、もう少しリセスさんが成長したときに提案しましょう。そんな提案をする必要がある日が来たら、の話ですけど。
「さて、リセス様。他に決めておかなければならないことがなければ、お三方の所に戻りませんか?」
「はい。そうですね。3人から他の派閥のこととか聞いておきたいですし。……まあ、聞いてどうにかなるとも思えませんけどね」
リセスさんはそう言って、力のない笑みを浮かべられます。ご兄弟と実力差を感じているのは間違いないですね。
理解力が高いのに、最初に感じた印象がおどおどとしているというだけ、というのもこれが原因かも知れません。実力差がありすぎて、いくらリセスさん自身が力を付けたところで状況は変わらない。だから、どれほど頭が良くてもそれが自信につながらない、そんな可能性があります。
現状を把握する能力が高すぎるために、実力差を感じて無気力になっていく。その場合は非常にまずいですね。精神的な問題だけじゃ解決できません。根本的な解決をするには、実際に現状の変更も必要となるわけですから。
「あ、あのぉ~。3人に聞いておきたいことがあるんですけどぉ~」
そのためにも、まずは現状を把握しておくことが必要です。知らないモノを変えるのは難しいですから。それぞれの派閥の力を知って、どう対策をすれば良いか考えていきましょう。
ここで机上の空論ではありますが対策を立てることが出来れば、リセスさんのメンタルにも良いはずです。自分には対抗できる力があると感じられるわけですから。
お三方も情報はもともと話して下さる予定だったようで、すぐにその流れになります。まず最初は、エリーナさんとティアさんから。
「では、私たちのいたヴァラル殿下の派閥のことをお話し致しますわ。ヴァラル殿下は第1王子ですので、順当な王位継承を願う伝統的な家が基本的な後ろ盾となっております。もちろん第1王子が勝ち馬だと考えて派閥に入る、私たちの家のような所も多くありますの。発展産業が領内にある貴族はおりませんが、伝統工芸や観光業で安定した収入を得ておりますわ」
この世界の歴史的に見ても、実に一般的な第1王子の派閥の形です。第1王子の派閥は保守的な貴族が多くいらっしゃり、その後ろ盾を失わないためにも第1王子自体も保守的なことをすることが多い。
急激に勝率を上げることは難しいでしょうが、収入を含めて色々なモノが安定しているため急激に下がることもないです。私たちの派閥のように一発逆転を狙う派閥には、かなり大きな壁となります。
さて、そんな第1王子の派閥の次は、クロリアさんの所属されていた派閥の話です。
「次は私の所属していた派閥ですわね。私が所属していたのは、第2王女であるハルフ様の派閥ですの。第1王女様と第2王女様の派閥は王子様方の派閥と比べて力は劣りますわ。しかし、だからこそ必要なときにはお互いの連携が取れるんですのよ。一方を超えるつもりなら、もう片方も同時に超えなければならないんですの」
王女様方は王女様方で厄介です。王子達と比べて派閥の力は劣っていますので、非常に焦っておられるんですよね。焦りがある分影響のありそうな不穏分子には敏感で、私たちを最初に潰そうとしてくる派閥の候補でもあります。その状況があるために、ゲームでは悪役令嬢などというポジションで描かれるわけですが。
「それでは次は、私どもの知っている限り他派閥の情報をお伝え致しますわ」
さて、ここからは少し長くなったので、他の方々の情報を簡潔にまとめましょう。箇条書きのような形にさせて貰いますね。
まず、第2王子さん~第4王子さん。
・第1王子の転覆を狙い、そこから出てくる無派閥のモノたちを引き込む方針。
・支持者には保守的な方が多い。
・支持層が似たような思考の方々のため、方針はほとんど変わらない。
次に、第5王子さん。
・他の王子さんたちに比べて、改革的な支持者が多い。
第1王女さん。
・支持者は第2王女であるハルフさんと似ている。
・ハルフさんとの違いは今までの不安を抱いてきた年数が長いため、焦りが強いこと。つまり、要注意人物。




