教え3 姉妹がいるのですか?
「お父様はね。きょーかい?っていうところの人と結婚するのが1番良いって言ってたよ。でも、お金を貰って子供を作ったら、できるだけ関わるな、とかも言ってたっけ?」
教会。
私はその、シアネの言葉に反応します。この世界、ほぼ全ての人が同じ宗教信仰しているのです。
宗教の名は、女神教。唯一神である女神を信仰し、その使徒とされる異世界人を100年に1度召喚しています。
「確か、きょうかいの中だと、ゆうしゃさま?が1番良いんだったかな?……ん~。でも、お父様は、王族じゃないとゆうしゃさまとは結婚できないって言ってたっけ?」
そして、そんな召喚される勇者などもいる異世界人の中の1人、聖女。その聖女という存在が、乙女ゲームの主人公です。
幾つかの国で召喚は行われるのですが、どこにどの役職の人が現れるかは完全にランダム。そして、そのランダムの中、この国で召喚されたのが聖女なのです。
「あぁ~。うぅ~」
「ん~。どうしたぉぇ~?フェルルゥ~。お姉ちゃんとお話ししたいのぉ?」
私としては、この状況は非常に面倒です。貴族としての立場が微妙なのもそうですし、乙女ゲーの主人公と敵対する立場というのも、布教する上で非常に邪魔です。
そして、それ以外に1番の問題があります。
それは、宗教名です。私が信仰しているのは魔王教と言う名前なのですが、こちらの世界だと魔王という存在は人間の敵だと認識されています。それに、実際に魔王という世界がこの世界に存在していますし。
「ん?……フェルルのほっぺ、プニプニィ~。柔らかぁい」
非常に難しい立場ですね。この世界でも布教を広めることは非常に困難です。………ですが、この試練を乗り越えてこそ、真の魔王教信者。
今のうちにシッカリと対策を考えて、素晴らしき教えをこの世界に広めるとしましょう。
……ということで、まずはちょっとシアネさんのほっぺをプニプニし返して、心を落ち着かせるとしましょう。
プニプニ。
「ん?フェルル~?お姉ちゃんのより、フェルルのほっぺが柔らかいよぉ~」
そんなことを言われても、私はやめるつもりはありません。
こうしてしばらく、私は考え事をするのでした。
……………。
…………。
そして、約4年の月日が経ちました。私、もう喋って歩くことだって出来ます。
いやぁ~。おかげで、かなり生活が充実してきましたよ。子供ならではの身軽さもありますし、そしてなんと言っても長い間天井を見上げ続ける必要が無くなったのですから。
シャバの空気は最高だぜぇ!って、信者さんの1人が言っていましたが、その気持ちが今なら分かります。
確か、あの人は豚箱から出てきたとか言っていましたが。……養豚場から出てくるなんて、よく分からない信者さんでした。ただ、考え方が独創的で興味深かったですね。
「あっ!フェルル!ちょっと待ってよ!!」
「ねぇね。待ってぇ~」
そして現在、私は微妙に広いお家の庭にいます。お花への水やりをしている最中なのです。
そんな私へと近寄ってくるのが、2人の姉妹。
1人は私が赤子の時にも話をしてくれた姉であるシアネさん。そして、もう1人が、私の1年後に生まれたタウさんです。シアネさんは4歳ほど年上なのでそこそこ身長差はありますが、タウさんとは1歳差なので、そこまでの差はありません。
「これは申し訳ありません、お2人とも。私としたことが、水やりに集中しすぎてしまいました」
「もう!ちゃんと私たちとおしゃべりするんだよ?」
「だよだよぉ!ねぇねとお話しするぅ!」
お二人は、私の年齢には似合わない完璧すぎる話し方を全く気にしません。小さいときからなので、慣れているのでしょう。
ただ、話によると私の今世のお父様とお母様は、かなり心配しているようです。私が心配させてしまうのは、心苦しいですね。何せこれから更に心配させてしましょうから、今くらいは穏やかにいて貰いたかったのですが。
「おお。3人とも、水やりはちゃんとやれてるかい?」
「お高いお花もあるから、枯れさせちゃダメよ~」
「ええ。枯れさせたら、3人のお小遣いから引かせて頂きますので、しばらくはお小遣いなしの月が続くでしょう」
「「ひぇぇぇぇぇ!!!????」」
私がお父様とお母様のことを考えていたら、実際に来て下さいました。お父様が1人に、お母様が2人。一緒に来るなんて、随分と仲が良いことです。
お父様と私の実母であり正妻であるお母様は貴族らしいドレスや紳士服を着ています。しかし、側室兼メイドであり、私の姉妹のお母様はメイド服を着ています。
「で、でも、大丈夫だよ!ちゃんとやってるから!」
「うん!フェルルお姉ちゃんがちゃんと全部やってくれてるもん!」
「「「………いや。あなたたちもやりなさい」」」
姉妹たちの可愛い言い訳に、お父様とお母様たちはあきれた声を出した。
それから、お三方の視線が私に向きます。なんとなく言いたいことは予想できますね。
「お姉様やタウにもやらせるように、という視線でしょうか?」