教え28 戦いは避けられないのですか?
「受け入れても受け入れなくてもあまり差はないと思われます。私がエリーナ様とクロリア様に勝利した時点で、ある程度煩わしい存在として認識されてしまったはずです。遅かれ早かれ処分に動かれる可能性が高いかと」
「そ、そうですか。じゃあ、お姉様達との戦いは避けられないんですね」
「はい。そう覚悟した方がよろしいかと思われます。……ただ、何をするにしても派閥がこれだけというのは少なすぎますね。すぐに潰されかねません。もう少し派閥の人員を増やすことが出来れば良いのですが」
「そ、それは難しいんじゃないですか?私の派閥に進んで入ろうとする人なんて少ないと思うんですけど」
それはその通りなんですよね。勝てる要素がないと言って良いような派閥に、誰も進んで入ろうとはしないでしょう。ただ、進んで入るという前提なら少ないと言うだけの話です。そうでなければ、
「今回2派閥の引き締めが行われましたから、他の派閥も次々引き締めを行っていくでしょう。その時に出てくる方々の中には、こちらの派閥に入るしかない方もいるはずです。そういった方を拾っていき、少しずつ派閥を大きくしていけば良いと思われます」
「な、なるはど。確かにそうですね」
リセスさんは納得して下さったようで、しきりに頷かれています。自分の派閥がある程度強化できるとお分かりになったようですね。生きながらえるとでも思っているのかも知れません。
しかしそう思っているのなら、その認識は甘いと言うほかありませんね。たとえこれから多少大きくなったところで、各派閥から圧力をかけられればあっという間に崩壊してしまいます。
「あっ、あの~」
そうして私とリセスさんがそれぞれの世界に入っていましたが、それを中断させされます。誰が話しかけてきたのかと言いますと、
「わ、私たち、結局派閥には入れるんですの?」
心配そうな表情をしているエリーナさん。一緒にいるお二人も同じような表情をされてますね。その視線が向けられるのは、当然ながらリセスさん。私は事情の説明を行いましたが、結局受け入れるかどうかを判断されるのはリセスさんですからね。
私も判断を促すように、視線を向けておきます。リセスさんは4人に注目されて緊張されたような顔持ちですが、しっかりとした眼差しをされます。
「受け入れます。3人とも、これからよろしくお願いしますね」
「「「はい。お願い致します(わ)」」」
受け入れられましたか。そうなると、派閥が強化されることになるわけですね。今のうちに派閥の家同士で何かをやっておきたいところです。
やるとしたら、まずはこれでしょうか。
「それでは、提案をさせて頂きます。お三方の家と我が家で、交易などを行いませんか?今のところあまり繋がりは強くありませんので」
「ああ。良いですわね。実家の方に伝えておきますわ!」
「派閥の強化には良いですよね。わ、私も家に伝えておきます」
「それならば、当然私も伝えておきますわ。できるだけ生存できるルートは残しておきたいですし」
皆さん了承して下さいました。それぞれの家で拒否される可能性はありますが、そこはこちらの働きかけ次第でどうにでもなるでしょう。こちらと盛んに貿易をすることに、メリットを感じて頂ければ良いのですから。
ただその前に、私も実家にお手紙を送っておいた方が良いでしょうね。何も連絡せずにいきなり交易をすることになったら、お父様たちが困惑されるでしょうから。
さて、交易の他にもやっておいた方が良いことはあるでしょうか?できるだけ派閥の結束は尽くしておきたいですから、やれることはやりたいです。
「……あぁ。そうでした。リセス様。少しお話ししたいことが」
思いつきましたよ。リセスさんと話しておかなければならない、大事なことを。私は新しく派閥に入ることとなったお三方を残して、リセスさんとともに教室の隅まで移動します。
これに関しては私の一存だけでは決められませんからね。しっかりと話し合っておかなければなりません。
「何ですか?話したい事って」
「お三方に、昨日の夜の場所をお知らせするかどうか、ということをお聞きしたいです。今日も出向かれるおつもりなのでしょう?」
「あっ!?そ、そうでした。フェルルさ、じゃなくてフェルルは言わないでくれていますけど、3人も言わないでくれるかどうかは別の話ですし。………ど、どうしましょう」
そこは考えられていなかったようで、リセスさんは非常に慌てています。夜に外出すると言えば、着いてくると言われかねませんからね。適当な言い訳をすれば、何か良ろしくないことをしていると気付かれてしまうでしょう。リセスさんが習った追っ手のまき方でも、相手の数が多いと通用しない可能性がありますから。
「通用する言い訳を考えるか、それとも大人しく連れて行くか。お三方には伝えずに、暫くあそこへ行かないと言うことも出来ますね。それ以外の方法があるなら、勿論それ以外でも構いません。……ただ、何も考えていないと問題が起きる可能性が高いかと」
「そ、そうですよね。あわわわわっ」




