教え27 派閥に入りたいのですか?
リセスさんが、我が教団の信者であったことが発覚し1日。
この日、昨日とは大きく違う状況になっていました。ここまで状況が激しく変わるのは楽しいですね。新しいものと出会えるわくわく感があります。勿論、その新しいものの8割以上は新しい信者さんですけど。
さて、そんな理想の新しい状況は1度置いておくことに致しまして、現在は直面している状況の話をさせて頂きます。現在、私が仕えるリセスさんの前には、3人のご令嬢が立っており、
「………わ、私の派閥に入りたい、ですか?」
「そうですわ。私フェルルさんに負けて、もしかしたらこの派閥が穴馬ではないかと思いましたの!」
「4歳でそれなのですから、今後が期待できるのですわ!是非ともお願いしたいんですの!」
「え、えぇと。私も同じような理由ですぅ~」
最初の2人は私が賭けをして勝った相手ですね。エリーナさんとクロリアさんです。そして、最後のもう1人はエリーナさんとの遊戯の際に、私の手札を覗かれていた方。名前はティアさんと言うそうです。
エリーナさんとクロリアさんが侯爵家。ティアさんが子爵家の方だそうです。3家集まれば、伯爵家にはギリギリ届くか届かないか、くらいの力が手に入ります。それこそ、私の実家よりも今は力が大きいかも知れませんね。飛躍的に力を得られるというわけではないですが、今までの派閥の大きさから感上げると飛躍的な発展です。ただ、それがこの派閥に将来性があると言うことかと言われると、少し違います。
「リセス様。先に申し上げておきますが、お三方がこちらの派閥に入りたいのは我が派閥に将来性を感じたからではなく、他の派閥に入ることが出来なくなったからだと考えられます」
「「「っ!」」」
露骨に目をそらされました。流石に分かりやすすぎますね。これはわざとなのか、それともそうではないのか。そうでないとしたら、普通の派閥に入れてもかなり残念なことになる気はしますね。普通の派閥であれば、ですけど。
私がみっちりと鍛えるなら話は別です。
「え?ど、どういうことですか?」
私の言葉とお三方の露骨な反応を見て、リセスさんは困惑されています。本当に派閥が期待されていると思っていたのでしょうか?もしそうだとしたら、かなり認識が甘いと思うのですが。
………いえ、流石にそこまで甘くはないでしょうね。昨日話をした限り、ご兄弟との実力差は認識されているようでしたし。それを考えると、純粋に話に追いつけてないと言うことでしょう。時間をかければ分かると思いますが、ここは私が分かりやすく説明しましょう。
「リセス様がご存じの通り、お三方、特にエリーナ様とクロリア様は私に敗北されました。この、4歳児の私に。家としては侯爵家ですが、侯爵家くらいならそれぞれの派閥にかなりの数がいます。4歳児に負ける侯爵家くらいなら、手放しても構わないと思われたのでしょうね。それと共に、派閥の引き締めを図ったとも考えられますが」
「引き締めって、負けたら3人みたいに派閥から追い出しますよ。って事ですか?」
「そうですね。概ねその認識で良いと思われます」
きっと勢力が拮抗して膠着状態が続いていたでしょうから、気持ちに緩みがある人も多かったのでしょう。そう言う意味では、丁度良いタイミングでエリーナさん達は負けてくれたのでしょうね。都合よく使われたという側面から見れば、可哀想な方々です。
「で、では、あまり受け入れてもメリットはないと言うことですか?」
「それは肯定しかねます」
リセスさんが罠にはまってしまいましたね。罠とは言いましても、人が仕掛けたモノでは無いですが。
この罠は、認識の罠。つまり、人の考え方の罠という所です。他人の持っているものに価値があるように思え、他人が捨てたものがいらないものに見えてしまう。そんな罠にリセスさんは嵌まってしまいました。
この方々は心が弱っていて、精神につけ込みやすくなっています。ということは、私から見れば、
「まず、他の派閥に必要ないからと言って、我が派閥にとって必要がないわけではありません。侯爵家と子爵家なんて、これまで派閥にはいなかったのですから。入ってくれば、派閥の力は今までよりも大きく上昇します」
「そ、そうですね。………で、でも、それだとお姉様とかに目を付けられてしまうんじゃないですか」
リセスさんはやはりそこに怯えているようですね。ただ、それを避けて通れはしないでしょう。今のままでも十分目立ってしまっていますから。
「受け入れても受け入れなくてもあまり差はないと思われます。私がエリーナ様とクロリア様に勝利した時点で、ある程度煩わしい存在として認識されてしまったはずです。遅かれ早かれ処分に動かれる可能性が高いかと」




