表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/42

教え25 私の名前なのですか?

「そういえば、聞いておきたいことがあったのでした。あの方に尾行の避け方を教えたのはあなた方なんですか?」


「ああ。その通りだ。あの嬢ちゃんの場合、誰が追ってくるかも分からなかったからな。ここが見つかるのだけは避けたいから、出会って始めにそれだけは教えておいた。そこ以外は自由にしてもらってるぜ」


「良い判断だと思います」


リセスさんが捕まるだけならまだしも、1号さん達まで捕まる恐れがありますからね。自分の周りのリスクを排除できるのは素晴らしいことです。そういったことにも意識が配れていること、神もお喜びになっているでしょう。

この様子ですと、しばらくは問題なく布教も進みそうですね。裏切り者が出るということもないでしょうし。私は、皆さんの気持ちが緩みすぎたときにカバーできるよう準備しておきましょう。


「何か、他に教えておいた方が良いモノとかあるか?俺たちが教えた方が自然なものもあるだろ?」


私が教えると不自然な技術などもありますから、嬉しい申し出ですね。それこそ、尾行のまき方など私が知っていては不自然です。だからこそこういった提案を1号さんはして下さったのでしょう。

しかしお気持ちは非常にありがたいですが、あまり必要ないですね。


「教えなければならないことは特にないです。必要と判断した技術をご自身から進んで身につけて頂くのが、教団として目指すところですから」


「そうか。それならそれでいいんだ。……ああ。そうそう。他にも話したいことがあるんだった」


1号さんから向けられる視線。今まで話してきたときとは違って、何やら言いづらそうな雰囲気ですね。話したいこととは何でしょうか?

あまり言いたくないことなら、言わなくても良いのですけど。教義上、個人の自由は尊重されるモノですから、言うと決められたのなら私は何も言いませんが。


「……教団の名前、結局どうするんだ?」


……あぁ。ついに来てしまいましたか。いつかは来るとは思っていたのですが、まだ良い返答を思いつけていません。教団名は色々と候補を考えました。しかし、どれも前世で使用していた魔王教を超えることはできないのです。私のネーミングセンスがないのでしょうか?どうして神は私にその才能を下さらなかったのでしょう。

……と、今は自分の才能のことを考えていても仕方ないですね。今は1号さんの質問に答えるときです。ここは素直に言ってしまいましょう。


「まだ決まっていません。あまり、良いものが思いつかないもので」


「そうなのか?………それじゃあ、嬢ちゃんの名前を使うってのはどうよ」


私の名前を使うとなると、ファララ教会とか、ファララ教とかになるのでしょうか?語感は悪くないですね。魔王教ほどのインパクトは感じられませんが、無難な気もします。

しかし、良いところばかりではありません。まず、私の名前を使ってしまうと言うのがダメですね。これは、私が名前を使うのを恥ずかしがっているというわけではないです。しっかりとした理由がありまして。


「それ、教団の名前がばれたら確実に私が捕まりますよね。捕まるどころではなく、首が飛びかねません。できれば、いや、絶対にやめて頂きたいのですが」


「はははっ。そのくらいは分かってる。だが名前を今まで聞かれてきて、決まってないと返答してきたんだぜ。いきなり、最近名前が決まったから教えるぜ!って言うのも微妙だろ?」


「……そうですね。皆さんが熱望していたというわけでもなければ、かなり微妙かと」


あまり気にしてなかった方からすれば、「あっ。決まったんだ。へぇ~」くらいで終わるでしょう。それだけなら良いのですが、印象が薄すぎて最悪名前を覚えられない可能性まであります。名前がない状態で入った人たちにとっては、あまり名前は重要でないことになっているでしょうから。

それを避けるようにするとなると、


「それなら、この教団が大きくなって世間から認められたとき、この教団に教祖の名前を付けるってことにすれば良いじゃねぇか。そうすれば、名前への関心も高まるだろ?それに、今まで名前を言ってこなかった言い訳にもなる」


「大きくなったら名前を名乗れるようにする、ということですか。それなら確かに名前への関心も自然と高まるでしょうし、少しのモチベーションになる可能性もありますね」


「そうだろぉそうだろぉ」


1号さんは大きく何度も頷かれます。とても満足げですね。なぜかはめられた気がしてしまいます。1号さんに限ってそんなことをすることはないと思うのですが、なぜでしょうか?

ちょっと名前を使われる私が腑に落ちないまま、教団の名前が決まりました。これが、この日の1番大きな出来事だったかも知れませんね。名前が決まったことを伝えに行くということで、1号さんは私から離れていきます。集まっている色々な方に、名前が決まったことを伝えて行っていますね。商売のことを考えてるときと同じくらい生き生きされた表情をされてます。仮面を付けてる状態でも分かるなんて、相当ですよ。


「やあ。お嬢さん。ちょっとお話をしても?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ