教え23 信者たちなのですか?
「あの。お話を聞きに来たんですけどぉ。い、今大丈夫でしょうか?」
「あっ。は、はい。構いませんよ。まず、あなたはこれをどうぞ」
女性はリセスさんに仮面を渡されます。一応顔を隠しておくようですね。こうしてしまうと違法なことをしているのが丸わかりな気がしますが、入った時点で何をやっているのかはすぐに分かるということなのでしょう。
仮面を渡すことで顔を覚えらないようにしてあるのでしょう。きっと、すぐに逃げられるようにしておくというのも徹底してあるのでしょうね。
「……そ、それで、あなた様はどうされますか?」
「どうするも何も、私はあの方の供回りですので」
「そ、そうですかぁ。………で、では、少しお待ちください。すぐに話を通してきますので」
「ええ。お願いします」
女性は中へ入っていきました。しばらく待つことになるかと思っていましたが、予想より早くテントの入り口が開かれます。
そこから現れるのは、先ほどの女性と、
「………よっ!久しぶりだな嬢ちゃん」
「ええ。お久しぶりですね、1号さん。まさか、このようなことをされているとは思ってもいませんでした」
出てこられたのは1号さん。記念すべき、この世界における最初の信者さんです。現在は私の実家が治めている領地で商会の運営を行っているはずですが、なぜ王都にいるのでしょうね?
その辺りのお理由なども後で伺っておきたいです。と、思ったのですが、すぐに自分から語ってくださいました。
「ハハハッ。まあな。嬢ちゃんがこっちに来るって言う噂を聞いたから、俺たちも来てみたんだ。何かあったときに助けになれれば良いと思ってな。丁度いろんな商会とか貴族から呼び出しを受けてたし、王都に来るのも不自然に見られることは無かったぜ」
「そうですか。1号さんが順調に上へと登られているようで何よりです」
「おう。これも嬢ちゃんと神のおかげだぜ。……まあ、取り敢えず誰かに見られる前に中に入っときな。これが、顔を見られないようにするための仮面だ」
「ありがとうございます」
私は仮面を付け、促されるままテントへと入っていきます。ここまでのことでなんとなく予想は付くかと思われますが、ここは王都における教団の集会場のようなもののようです。
中は外見から予想していた以上に広く、かなりの人数が集まっていました。これだけの数の方が全員信者さんだと考えると、かなり教団が大きくなった様な気がしますね。実に喜ばしいです。あと数年すれば、前世の時と同じ、いや、それ以上の信者さんを獲得することが出来るでしょう。
「で?入った印象的はどうだ?良い感じか?」
私が入ってキョロキョロしていると、同じく仮面を付けた1号さんが話しかけてきます。悪い印象を与えるところが無いかと尋ねられているのでしょう。一応私が見ておいた方が良さそうですね。
ただ、基本的に1号さんが大きなミスをすることは今までありませんでした。理由を挙げるとするなら、お仲間がいらっしゃるからですね。1号さんは商会の幹部のようなポストに、同じく人生を1度諦めような方々を入れています。その方々を働かせつつ、たまに良い人材を見つけては私の所に連れてくる。そんなことを私の実家の領地では行っていました。
商才は勿論ですが人を見る目もあるようで、連れてこられた方々は皆真剣に教団のために働いて下さる方ばかり。そのおかげで、スムーズに信仰度を低下させられ、スキルを手に入れることも出来ました。
先ほど入り口で対応して下さった女性(4号さんと呼ばれている)も、1号さんに勧誘された方のうちの1人であったりもします。先ほどの印象からは、全く才能があるようには感じ取れませんけどね。
と、4号さんのことは良いとして、質問に答えなければなりませんね。
「良い感じでは無いでしょうか?外から見た感じも、そこまで大規模なことをしていそうには見えませんでしたし。中の照明も羽軽すぎず暗すぎず、独特な雰囲気を出せています」
「おお!そうか!お嬢ちゃんが問題ないって言うなら信用できるぜ。……いやぁ~。頑張った甲斐があったってもんだ」
「お疲れ様です。こんなことまで考えられるようになるなんて、かなり知識の幅が広がりましたね。向上心があって素晴らしい限りです。きっと神も喜んでおられますよ」
「ああ。神はムダの少ない努力をするモノを優れているとしてるんだろ?俺も神に喜ばれるよう、精一杯努力してるんだぜ。……まあ、やったら何かしらリターンがあるからやってるんだけどな」
素晴らしいですね。常に己を磨き続け神に尽くそうとする姿は、まさに信者の鏡。リターンがあると言っても、自分を頑張らせるために報酬を用意しておくのは目標達成の手段の1つですからね。恥ずべき事ではありません。
そうして私が心の中で褒め称え、その一部を口にすると、1号さんは照れたような表情をされます。私がここまで褒めることはあまり無いですからね。驚き半分うれしさ半分といったところでしょう。
私が褒めつつそういう風に観察をしていると、途中で私たちに近づいてくる人が。
「あっ。も、もう入っていたんですね。ちゃんと入れたみたいで良かったです」




